1センチメートル四方の誇り(2)
2010年2月15日3:38PM|カテゴリー:シジフォスの希望|Kataoka
シジフォスの希望(38)
国労組合員のバッジ着用をめぐるJR東日本との闘いは国鉄が分割・民営化された1987年から連綿と続けられてきたが、2006年11月に中央労働委員会での「包括和解」に至る。しかし、その「和解」の中には国労バッジ着用を理由とする数々の処分についての記述がなかったことから、辻井さんらは国労中央本部と同東日本本部に抗議文を提出する。
「国労がバッジ処分の撤回を求めて労働委員会闘争を闘ってきたのは、会社の不当労働行為を追及し、その根絶を図ることが目的だったはずです。しかし、今回の和解には、『会社に二度と不当労働行為をさせない』『バッジ処分を出させない』という保証が何ひとつありません。それどころかこの『包括和解』は、分割民営化以来20年にわたる会社の不当労働行為責任をうやむやにし、国労の側が不当労働行為を全面的に容認するものとなっています。……私たちは国労組合員としての誇りにかけて、この『和解』を拒否します」
方針転換後の国労と一線を画し、ただ一人で国労バッジ着用を続ける辻井さんに対して、JR東日本はより重い懲戒処分である出勤停止を重ね、さらには定年後に再雇用しない旨の予告をする。『週刊金曜日』09年6月26日号に掲載された「辻井さん対JR東日本のバッジ闘争」の記事(筆者・古川琢也さん、バックナンバー注文ページ)にこうある。
「02年以来、JR東日本による辻井さんへの処分は総計55回。失った生涯賃金は1000万円にも上るという」
たった一人だから簡単にひねりつぶせるはずだ。資本金2000億円、6万人以上の社員を抱える巨大企業・JR東日本はそう思ったに違いない。しかし辻井さんは屈しなかった。
そして、勝利命令。神奈川県労働委員会は先月26日、JR東日本に対して、辻井さんへの不利益処分の回復を命じるとともに、下記の文書を渡すよう命じた。
「当社が申立人に対し、国鉄労働組合のバッジを(略)着用したことを理由として出勤停止処分を行ったこと及びこれらの処分を理由に期末手当の減額の措置を行ったこと並びに定年後に再雇用しないと予告したことは、神奈川県労働委員会において労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為であると認定されました。今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。 平成 月 日 辻井 義春殿」
前出の記事の中で辻井さんはこう述べている。
「私も来年2月末に定年を迎えます。恐らくその日、このバッジを外すことになるでしょう。でもバッジをつけようとつけなかろうと、国労の誇りを胸に闘う人が増えてくれればそれでいい」
2月26日(金)午後6時30分から東京・飯田橋のSKプラザ地下ホールで「国労バッジ事件」勝利報告集会(『週刊金曜日』協賛)が開かれる(本誌2月19日号「市民運動案内板」に詳細)。その2日後、辻井さんは「誇り」を胸に定年退職する予定だ。
(2010年2月15日・片岡伸行)