地検特捜部、尖閣諸島、小沢氏強制起訴……わかったようでわからない事件ばかり
2010年10月7日11:11AM|カテゴリー:多角多面(発行人コラム)|北村 肇
<北村肇の「多角多面」(1)>
意味合いはかなり違うが、「正月と盆が一緒に来た」ようなこのごろだ。大阪地検特捜部の敏腕検事が証拠改ざん容疑で逮捕され、尖閣諸島をめぐって日中の緊張感が高まり、小沢一郎元民主党幹事長が強制起訴され――と。共通点は何かと考えてみて、一つ、思い浮かんだ。それは、「わかったようでわからない」。
事件の肝であるFDをいじくるなんて、およそばれるに決まっていることを、なぜエリート検事がしでかしたのか?
情報の扱いに関しては最高峰の検事がなぜメディアに内部告発したのか?
最高検はなぜこんなに急いで関係者を逮捕したのか?
わからないことだらけだ。
小沢一郎氏の処分決定が、なぜ当初予定より大幅に遅れたのか?
検察審査会ではどんな論議があったのか?
特捜部は審査会で捜査結果についてどのような説明をしたのか?
わからないことだらけだ。
尖閣諸島問題はさらに闇の中である。
漁船が故意に衝突したというのは事実なのか?
撮影されたビデオには何が写っていたのか?
前原外相はクリントン国務長官に何を言われたのか?
「尖閣諸島は日本の施政下にあるが日本の領有権は認めていない」。米国のこの見解が、なぜ正確に伝えられないのか?
米中間ではこの問題についてどう議論されているのか?
現時点では、何一つはっきりしない。
いずれの疑問点も、これから取材を進めていく中で解明しなければならない。だが、新聞・テレビは「わからないことをわかった」ように報じるばかりだ。だから、かなりの市民が、感覚的な判断に陥ったり、情緒的な反応をしてしまう。「特捜部はつぶしてしまえ」「小沢一郎は追放しろ」「中国は許せない」――。
事実を十分に把握できていないと、記事は扇情的になる。ついおもしろおかしく書くことにもつながる。それでいいと開き直れば、その時点でマスコミは終わりだ。正月と盆どころか、極寒の荒野に投げ出されて、はいサヨナラ。
(2010/10/7)