きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

[この国のゆくえ12……デタラメな人間しか扱えない代物、それが原発]

<北村肇の「多角多面」(31)>

 飛行機が苦手だ。無類の高所恐怖症ということもある。だが、それ以上に鉄の塊が空を飛ぶことに違和感がある。だから、なるべく飛行機は使わない。とはいえ、北海道はいたしかたない。過日、千歳空港を目指す機内から、こわごわと下をのぞいてみた。海岸線が見たかったのだ。

 普段は、陸地の果てに海が存在している(ような気になっている)。空から見たら、どうなのか。それを確認したかった。やはり、間違った感覚であることがはっきりした。陸地は、たまたま海が少し下がったことによって顔を出しているにすぎない。ほんの少し、海に遠慮を願っているというわけだ。ごくごく狭い陸地で、わがもの顔にふるまう人間。その一人であることに恥ずかしさを覚える。

 札幌行きの目的は、出前講演会「大震災・原発とメディア」で話をさせてもらうためだった。約100人の会場に190人近くが集まり、何人もの立ち見が出た。『週刊金曜日』読者会主催の出前講演会は、どこも盛況だ。それだけ原発事故への関心が高いのだろう。

 北海道には泊原発がある。1号機は定期検査中、2号機は営業運転中、3号機は試験運転中のはずなのにフル活動という。北海道電力はこの3号機でプルサーマル計画を立て、推し進めている。正気の沙汰ではない。原子力安全・保安院は5月17日、道庁で、道と地元4市町村を対象に説明会を開いた。その場で保安院職員はこう説明したという。

「30年以内に震度6強以上の地震が発生する確率は浜岡原発の84%に対し、泊原発は0.4%。大地震の発生する確率は非常に小さく、原子炉の運転継続は安全上支障がない」

 保安院がもとにしたデータは、地震調査研究推進本部が1月1日を算定基準日とした出したものだ。それによると、福島第1原発の確率は「0.0%」だった。「0.4%」のどこが安全というのか。
 
 ことここにいたって、まだ原発を推進するなど、愚かの極みだ。原子力安全委員会の斑目春樹委員長は、福島第1原発1号機への海水注入をめぐり「再臨界の可能性はゼロではない」と発言した件に関し、国会の場で「事実上、ゼロだという意味だ」と説明した。「ゼロ」の意味がまったくわかっていないらしい。前回も述べたように、原発はおよそ制御のできない技術である。そこは飛行機とは違う。結局、原発はデタラメな人間にしか扱えない代物なのだろう。(2011/5/27)

わからないこと」はたくさんある

<北村肇の「多角多面」(30)>
[この国のゆくえ⑪…原子力発電所は人知を超えている]

「わからないこと」はたくさんある。でも、二種類に分けることはできる。人知を超えて「わからないこと」、わかっている人はいるが、私には「わからないこと」。

 東京電力は最近になってようやく、福島原発の1号機から3号機のすべてでメルトダウンが起きていたことを明らかにした。あまりにばかばかしくて毒づく気さえ失せる。そんなこと、多くの市民はとうにわかっていた。「わからないこと」であるように振る舞う東電がウソをついていることもわかっていた。

 ただ、まだまだ「わからないこと」が多い。4号機も含め、原子炉や使用済み核燃料を保管するプールがどんな状況になっているのか、事故から2ヶ月以上たったのに、それすらはっきりしない。

 さて、そこで考える。東電や政府は4機がいまどうなっていて、どんな危険性をはらんでいるのかについて、果たしてわかっているのだろうか。自分たちは知っているのに隠しているだけなのか。それとも本当にわからないのか――。隠蔽だとしたら許せない。でも、後者だとしたら、それはそれで背筋が冷たくなる。「手のつけようがない」ことを示すわけで、事故の収束どころか、破滅への道をひた走っていることになるからだ。

 そもそも、原子力発電自体、人知を超えて「わからないこと」と言えないか。いまから40年以上前、学生時代に「原発はダメ」と結論づけたのは、それが制御できない技術・システムだったからだ。コントロールできないのだから、何十の「壁」を作ろうと100%の安全を確保することはできない。

 しかも、廃棄物の処理には何の見通しも立っていない。80年代後半、科学技術庁(当時)の官僚にそのことを聞いた。答えはこうだった。「そのうち、だれかが開発しますよ」。そのうちとはいつなのか。これもまた、だれにも「わからないこと」である。

 高濃度の汚染水が漏れだしたとき、最初に使われたのは新聞紙とおがくずだった。このマンガのような事態は、原子力発電が制御できないシステムであることを、ものの見事に描いている。人知を超えるとは、「神の領域」ということだ。人間はどこまでいっても「神」になることはない。「神」は現実世界に存在しないからだ。「原子力発電は人類にとって夢の技術」など、まさに空想の世界の話なのである。(2011/5/20)

[この国のゆくえ10…浜岡原発の稼働停止が示す潮目の変化]

<北村肇の「多角多面」(29)>

 浜岡原発全基の稼働が、とりあえず止まる。薫風とともに、微妙に潮目が変わったのかなと思う。

 菅直人首相が「浜岡原発全炉停止」表明をした翌日の7日、『読売新聞』社説にこんな一節があった。

「東日本大震災での教訓を生かそうということだろう。東京電力福島第一原発が、想定外の大津波に襲われ、大事故を起こしたことを踏まえれば、やむを得ない」

「運転中に事故を起こし放射性物質が放出される事態になれば、日本全体がマヒしかねない。静岡県や周辺自治体も、早急な安全性の向上を求めていた。中部電力は首相の要請を受け入れるべきだ」

 たまたまこの日は、名古屋で「震災・原発報道」について講演することになっていた。当然、浜岡原発についても触れるので、各新聞の朝刊を買い込んで新幹線に乗り、そこで上述の記事を読んだ。驚いた。おそらく『読売』は、「地元の了解も得ず、首相には停止命令の法的権限もない。政治的パフォーマンスだ」という論調になると踏んでいたからだ。

 原発を日本に持ち込んだ中心人物が正力松太郎氏であることは有名だ。正力氏は『読売新聞』の社主であり、初代の原子力委員会委員長でもある。『読売』が一貫して、原発容認の立場をとってきたのも肯ける。それだけに、かなり異例の社説と言ってもいいだろう。

 もちろん、額面通りに受け取るわけにはいかない。社説の最後は「政府と、電力会社の作業が遅れれば、浜岡原発に限らず各地で原発停止が広がるかもしれない。そうならないよう、政府と電力会社は、対応を急がねばならない」と締めくくられている。つまり、「浜岡は当面、人身御供にするが、原発推進路線を変えてはだめ」ということだ。実際、菅首相はその後、「他の原発は安全」と強調し始めている。

 だが、それでも潮目は変わりつつある。一旦、止めてしまえば、そうそう簡単に再開はできない。全国各地での「原発廃炉運動」に勢いもつく。『読売』が浜岡を見捨てざるをえなかったのも、それなりに追い込まれたからだ。もはや、正力氏や中曽根康弘氏が米国と二人三脚で進めてきた原発路線は、過去の遺物なのだ。多くの市民が覚醒し立ち上がりつつあるこの国に、新しい芽が出つつある。(2011/5/13)

金曜俳句への投句一覧(5月27日号掲載=4月末締切、兼題「葉桜」)

「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です

選句結果と選評は『週刊金曜日』5月27日号に掲載します。
どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。

『週刊金曜日』の購入方法はこちらです

amazonhttp://www.amazon.co.jp/)でも購入できるようになりました。予約もできます。
「週刊金曜日」で検索してください。配送料は無料です。

(さらに…)

金曜俳句への投句一覧(5月27日号掲載=4月末締切、兼題「メーデー」)

「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です

選句結果と選評は『週刊金曜日』5月27日号に掲載します。
どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。

『週刊金曜日』の購入方法はこちらです

amazonhttp://www.amazon.co.jp/)でも購入できるようになりました。予約もできます。
「週刊金曜日」で検索してください。配送料は無料です。

(さらに…)

「櫂未知子の金曜俳句」5月末締切の投句募集について

『週刊金曜日』2011年6月24日号掲載の俳句を募集しています。
【兼題】 「サングラス」もしくは「夏料理」(雑詠は募集しません)
【締切】 2011年5月31日(火)必着
【投句数】1人計10句まで何句でも可
※特選に選ばれた句の作者には、櫂未知子さんの著書をお贈りします。 

【投句方法】官製はがきか電子メール
(氏名、俳号、電話番号を明記)

【投句先】
郵送は〒101-0061 東京都千代田区三崎町3-1-5
神田三崎町ビル6階 『週刊金曜日』金曜俳句係宛。

電子メールはhenshubu@kinyobi.co.jp
(タイトルに「金曜俳句投句」を明記してください)

【その他】新仮名づかいでも旧仮名づかいでも結構ですが、一句のなかで混在させないでください。
なお、添削して掲載する場合があります。

金曜俳句への投句一覧(4月22日号掲載=3月末締切、兼題「雁風呂」)

「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です

選句結果と選評は『週刊金曜日』4月22日号に掲載しました。
どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。

『週刊金曜日』の購入方法はこちらです

amazonhttp://www.amazon.co.jp/)でも購入できるようになりました。予約もできます。
「週刊金曜日」で検索してください。配送料は無料です。

(さらに…)

金曜俳句への投句一覧(4月22日号掲載=3月末締切、兼題「チューリップ」)

「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です

選句結果と選評は『週刊金曜日』4月22日号に掲載しました。
どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。

『週刊金曜日』の購入方法はこちらです

amazonhttp://www.amazon.co.jp/)でも購入できるようになりました。予約もできます。
「週刊金曜日」で検索してください。配送料は無料です。

(さらに…)