きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

2012年の鍵となる言葉(5)「地域政党」

<北村肇の「多角多面」(64)>
 いたずら坊やにしか見えない。いくら背伸びしたって大人の政治家になれるわけがない――。橋下徹大阪市長に対する私の評価はまったく変わっていない。だが、現実には、あっという間に権力者になりつつある。なぜか。本人ではなく周りが変わったからだ。

 民主党、自民党は、「地域政党」の風に吹き飛ばされる強い危機感をもつ。たとえ有象無象の候補者であろうと、「大阪維新の会」や「減税日本」の看板を背負っただけで大量の票を獲得するのではないかと。大いにそれはありうる。「小泉郵政選挙」のときも「民主党圧勝選挙」のときも、何の実績もない候補者が続々、当選したのだから。そこで、支持率の低迷する両党は、橋下氏にすりよるしかないと方針を転換した。さらには、野田政権に批判的な小沢一郎氏や「石原新党」も、橋下氏との連携に色気をみせている。要するに、周りが勝手に“大物”にまつりあげてしまったのだ。

 ところで、地域政党の定義とは何だろう。公職選挙法による政党要件は「国会議員5人以上」ないし「直近の国政選挙で有効投票の2%以上の得票を獲得」。これにあてはまるのは、鈴木宗男氏が北海道で立ち上げた「新党大地」(現在は「新党大地・真民主」)のみだ。同党以外に国会で議席をもっているのも沖縄社会大衆党しかない。後は、地域の県議会や市町村議会で活動する議員の組織だ。55年体制以降、「自民・社会」「自民・民主」の二大政党制は盤石であり、地域政党が国会に足場を持つ余地はなかった。だから、明確な定義もされてこなかったのであろう。

 では、果たして橋下ブームや河村たかしブームにより、永田町の構造は大転換するのか。私は、それほど単純ではないと思う。既成政党の狙いは所詮、政権維持や政権奪取であり、「地方の自立」をまともに考えているわけではない。仮に「大阪維新の会」や「減税日本」と連立政権を組むことになれば、政権をとった後に、じわじわとその力を削いでいくはずだ。第二の社会党にしてしまおうとの魂胆である。

 もし、橋下氏の「力」が異様に肥大化した場合はどうか。民自は大連立に走る可能性がある。その場合、年内解散はない。1年もたてば「地域政党」ブームは去るだろうとの計算が働くからだ。いずれにしても、民自両党にとって橋下氏は使い捨てカイロでしかない。ただ、忘れてならないのは、既得権者への怒りには、「東京一極集中」への不満があるということだ。その怒りをバネに、全国で「第二の橋下、河村」が誕生する余地はある。これは、民主主義の成熟なのか退廃なのか。いまのところ正答はないが、地域政党の伸張を橋下氏のキャラクターに収斂してしまっては、本質を見失う。(2012/2/10)