きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

大飯原発再稼働に関する政治的責任に関する質問主意書と答弁

 関西電力大飯原子力発電所3、4号炉(福井県おおい町)の運転再開について、野田佳彦首相は「最終的には総理大臣である私の責任で判断を行いたいと思います」と5月30日に述べている。この「責任の範囲と内容」について政府は6月29日、「政治的判断を必要とする国政上の重要な問題であり、内閣の首長である野田内閣総理大臣がこれに関与し責任を持って判断を行うという趣旨で述べた」との答弁を閣議決定した。

 一方、事故発生時の賠償については「原子力事業者がその損害を賠償する責めを負う」などと従来の枠組みの説明にとどまっており、過酷事故が起こった場合でも野田首相個人が再稼働の責任を取る気がないことがあらためて浮き彫りになった。福島みずほ参議院議員(社民)の質問主意書に答えた。

 また、野田首相は「あのような事故を防止できる対策と体制は整っております」と断言したが、同答弁では事故原因は「津波」であるとし、「地震動」による主要機器の破損については認めなかった。国会事故調では「地震動」による主要機器破損の可能性について重大な関心を持っているほか、大飯原発の防潮堤はまだ完成しておらず、不誠実きわまりない。

 さらに6月8日の記者会見で、野田首相は「豊かで人間らしい暮らしを送るために、安価で安定した電気の存在は欠かせません」としたが、同答弁では「コストの試算においては、電源ごとの発電単価ではなく、火力及び原子力の燃料費のみにより計算した単価を用いている」とした。燃料費のみの比較で原発が安価だというのでは、野田首相は大ウソつき、との批判を免れないだろう。

 大飯原発3号炉が7月1日夜にも起動すると報道されるなか、野田首相の無責任ぶりがあらためて浮かび上がった。質問と答弁を以下に全文紹介する。
(なお、テキストでは読みやすいように質問と答弁を交互に掲載する)

大飯原発再稼働に関する政治的責任に関する質問主意書

大飯原発再稼働に関する政治的責任に関する質問に対する答弁書

///////////////////////
     大飯原発再稼働に関する政治的責任に関する質問主意書

 関西電力大飯原発三、四号機の再稼働について、政府は最終判断を下した。この間、社民党は原発の再稼働に反対する申入れを繰り返し行ってきたところである。しかし、それに対する政府の回答は、「おおむね原発の安全性は様々な知見から科学的に原子力安全・保安院や原子力安全委員会が確認している。その上で、政治家が様々な意見を聞いて総合的に判断し、安心の部分を国民の皆さんに示す必要がある。」旨であった。

 今回の再稼働決定について、野田首相が「私の責任で判断して」と発言したことについて、重要性と責任の範囲と内容を確認するために、以下質問する。

一 二〇一二年五月三十日、野田首相は首相官邸で、第七回となる原子力発電所に関する四大臣会合を開催し、「大飯発電所三、四号機の再起動について、関西広域連合からは、原子力規制庁等の政府機関が発足していない中で、政府の安全判断が暫定的であることを踏まえた適切な判断を求めると声明をいただきました。関係自治体の一定のご理解が得られつつあると認識しております。政府は今回の事故を踏まえた、専門家の意見に基づき、安全性を慎重に確認してまいりました。(中略)立地自治体のご判断が得られれば、それをもって最終的にはこの四大臣会合でしっかりと議論をし、最終的には総理大臣である私の責任で判断を行いたいと思います。」(首相官邸ホームページ)と発言している。
この中で、野田首相は「責任」と発言しているが、その「責任」とはどのような意味として使っているのか。「責任」の内容を具体的に示されたい。

二 この「責任」に関する発言について、原発の再稼働の是非を最終的に判断するのは首相の責任なのかどうか、その法的根拠を含め、具体的に示されたい。

三 「私の責任で再稼働を判断した」原発が事故を起こした場合、「事故を起こした責任を野田首相が負う」と理解してよいか。その場合、東京電力福島原発事故で明らかなように、国家社会に与える被害は莫大になることも想定すべきだが、首相としてどのように責任を取るのかをその賠償方法を含め、具体的に説明されたい。また、「責任」の意味するところが、「事故を起こした責任を負う」とは違う場合は、どのような意味か具体的かつ詳細に説明されたい。

一から三までについて
御指摘の野田内閣総理大臣の発言は、定期検査で停止中の原子力発電所の運転再開については、電気事業法(昭和三十九年法律第百七十号)等に基づき経済産業大臣が所掌していることを前提として、関西電力株式会社大飯発電所第三号機及び第四号機(以下「大飯発電所三・四号機」という。)の運転の再開の可否については、政治的判断を必要とする国政上の重要な問題であり、内閣の首長である野田内閣総理大臣がこれに関与し責任を持って判断を行うという趣旨で述べたものである。
 なお、原子力損害の賠償については、原子力損害の賠償に関する法律(昭和三十六年法律第百四十七号)において、原子炉の運転等の際、当該原子炉の運転等により原子力損害を与えたときは、当該損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によって生じたものである場合を除き、当該原子炉の運転等に係る原子力事業者がその損害を賠償する責めを負うこととされている。また、原子力損害賠償支援機構法(平成二十三年法律第九十四号)においては、国は、これまで原子力政策を推進してきたことに伴う社会的な責任を負っていることに鑑み、原子力損害賠償支援機構を通じて、原子力損害の賠償が適切かつ迅速に実施されるよう、万全の措置を講ずるものとされている。

四 前記一のホームページの中で、野田首相は「あのような事故を防止できる対策と体制は整っております」と断言している。「あのような事故」の内容と事故原因を明確に説明されたい。

四について
お尋ねの「あのような事故」とは、東京電力株式会社福島第一原子力発電所の事故(以下「本件事故」という。)を指す。これまでの調査等によれば、本件事故においては、平成二十三年三月十一日の東北地方太平洋沖地震により、同発電所において、外部電源を喪失した後、非常用ディーゼル発電機が正常に起動し、安全上重要な設備・機器がその安全機能を保持できる状態にあったと考えられるが、その後の津波の到達により、非常用ディーゼル発電機の機能を喪失し、第一号機から第四号機までの各号機において、全交流電源を喪失した結果、第一号機から第三号機までの燃料が損傷し、大量の放射性物質が環境中に放出されたものと考えられている。また、原子炉で発生した水素が原因となって、第一号機、第三号機及び第四号機において爆発が生じ、それぞれの原子炉建屋が損傷したと考えられている。

五 二〇一二年六月八日の記者会見で、野田首相は「四月から私を含む四大臣で議論を続け、関係自治体の御理解を得るべく取り組んでまいりました。(中略)これにより、さきの事故で問題となった指揮命令系統を明確化し、万が一の際にも私自身の指揮の下、政府と関西電力双方が現場で的確な判断ができる責任者を配置いたします。」と発言しているが、この意味するところは、東京電力福島原発事故当時、指揮命令系統が明確でなかったと政府が認識していると理解して良いか。

六 前記五において、野田首相は「問題となった指揮命令系統」と発言しているが、その原因はどこにあったのか具体的に示されたい。さらに、現在、指揮命令系統を明確化するために行われている対策、今後予定されている対策などを具体的に説明されたい。

 また、「的確な判断ができる責任者」の配置は既に行われているか。行われている場合、その責任者の氏名と経歴を明らかにし、「的確な判断ができる」とする根拠を示されたい。配置が行われていない場合は、いつ配置される予定か、その時期と配置予定責任者の氏名と経歴を明らかにされたい。

五及び六について
御指摘の指揮命令系統に関しては、「原子力安全に関するIAEA閣僚会議に対する日本国政府の報告書―東京電力福島原子力発電所の事故について―」(平成二十三年六月原子力災害対策本部決定)において「政府と東京電力との関係、東京電力本店と現場の原子力発電所との関係、政府内部の役割分担などにおいて、責任と権限の体制が不明確な面があった。特に、事故当初においては、政府と東京電力との間の意思疎通が十分ではなかった。」としている。これを踏まえ、総理大臣官邸(以下「官邸」という。)、原子力災害対策本部事務局が置かれる経済産業省緊急時対応センター、原子力発電所、電力会社の本店等との間をつなぐテレビ会議システムを整備した上で、緊急時には電力会社の本店等に政府と電力会社との連絡調整拠点を確保し、同省の責任者を派遣することにより、官邸の指示や連絡調整が迅速に行われるよう、体制の整備等に取り組んでいるところである。今後は、第百八十回国会で成立した原子力規制委員会設置法(平成二十四年法律第四十七号)の規定を踏まえ、原子力災害対策本部を始めとする関係機関等における責任や役割分担等が制度上においても明確になるよう、同法の施行に合わせて、関係法令や「防災基本計画」(平成二十三年十二月二十七日中央防災会議決定)、「原子力災害対策マニュアル」(平成十二年八月二十九日原子力災害危機管理関係省庁会議)等を改定することとしている。
大飯発電所三・四号機については、本件事故の後、初の再起動となることを踏まえ、万が一事故が発生した場合の緊急対応に万全を期すため、常時監視・緊急対応体制を整備しているところであり、当該体制の責任者として、牧野経済産業副大臣を大飯発電所三・四号機の再起動前に派遣することとしている。同副大臣は、万が一事故が発生した場合には、現行の原子力災害対策特別措置法(平成十一年法律第百五十六号)に基づき、原子力災害現地対策本部長となる予定であり、その経歴については、同省のホームページで公表しているところである。

七 前記五における記者会見で野田首相は「国民生活を守ることの第二の意味、それは計画停電や電力料金の大幅な高騰といった日常生活への悪影響をできるだけ避けるということであります。豊かで人間らしい暮らしを送るために、安価で安定した電気の存在は欠かせません。」と発言しているが、原発が安価な電力である根拠について、他の発電方式と比較した具体的な単価を含めて示されたい。また、その価格は各発電所の稼働率をどの程度と想定した上で計算しているか。さらに、想定した稼働率は、実際の各発電所の稼働率と一致しているか。加えて、「安価」とする原発の発電価格には、使用済み核燃料の再処理やバックエンドのコストを含んでいるか。これらの条件を含めて「安価」とする根拠を示されたい。

七について
御指摘の野田内閣総理大臣の発言は、エネルギー・環境会議及び電力需給に関する検討会合の下に開催した需給検証委員会の報告書において、仮に、国内の全原子力発電所が稼働を停止し、火力発電で代替した場合には、燃料コストが大幅に増加すると試算されていること等を踏まえ、いずれ電気料金が上昇することは避けられないとの趣旨で述べたものである。なお、当該コストの試算においては、電源ごとの発電単価ではなく、火力及び原子力の燃料費のみにより計算した単価を用いている。

消費増税でほくそえんでいるのは誰だ

<北村肇の「多角多面」番外編>
 6月26日、消費税関連8法案が衆院本会議で可決された。見事な筋書きだ。民主、自民、公明の大連立、小沢・鳩山の放逐――。シナリオライターはだれなのか。いま、それだけの「力」のある議員は見あたらない。そして、一つ言えるのは、この事態に快哉を叫んだのは、霞ヶ関官僚、経済界、そして米国ということだ。
 
 流れを追ってみよう。
▼民主党が政権奪取▼鳩山首相、小沢一郎氏とも「政治主導」「米国からの自立」を掲げる▼霞ヶ関官僚、米国は苦々しく思う▼鳩山首相は金銭疑惑で失脚▼小沢氏も検察の狙い撃ちで蟄居を余儀なくされる▼菅直人氏が首相就任▼新首相は原発輸出、TPPに前向き。米国のうけはまずまず▼さらに、消費税増税に触れるなど、財務省の思惑にも乗る▼だが、東日本大震災発生後、菅氏は「脱原発」を表明▼財界、財務省、経産省は菅氏に反旗▼民主、自民の一部ばかりかマスメディアも「菅降ろし」に走る▼「ポスト菅」は予想に反し野田氏に▼財務省の一押しは野田氏▼自民、公明の中でも野田氏の評価は高かった▼野田首相はマニフェストを捨て去り、消費増税に「政治生命」をかける▼「大阪維新の会」躍進で、民主、自民とも警戒感▼「消費増税実現、大飯原発再稼働には大連立が一番の早道」と手打ち▼「大連立」は増税路線、原発温存、日米同盟強化につながるばかりか、「小沢・鳩山」という小骨を抜くこともできる▼一石四鳥を喜ぶ霞ヶ関官僚、財界、米国――。

 こうしてみると、シナリオライターは官僚としか思えない。財務省が中心となり、外務、経産、法務も加わる。相当な知恵者の集団が、国会議員だけではなく、財界やマスメディアをも利用する。背後には米国の意志が存在する――戦後、一貫して続いてきた風景が既視感とともに見えてくる。結局、この国における統治権力の図式は何も変わっていないのだ。民主党政権誕生時から、「脱官僚」を許すまいとあの手この手で動き回った官僚の「勝利」を認めざるをえない。

 しかし、「3.11」後、明らかに社会は変化した。原子力ムラに象徴される「勝ち組グループ」への怒りが静かにたまりつつある。永田町や霞ヶ関がそのことに気づかない、あるいは過小評価しているのなら、必ずしっぺ返しをくうだろう。「6.26」は霞ヶ関官僚と彼らに踊らされる政治家らの「最後の勝利」になるかもしれない。

 フランスから独立したアルジェリアの戦いは、戦闘部隊が事実上、壊滅した後、無数の市民が澎湃として立ち上がったことによって勝利に導かれた。日本の主権者は市民だ。「紫陽花革命」の足音が聞こえる。(2012/6/27)

「良識」ある民主党議員は党を出るべきだ

<北村肇の「多角多面」(82)>

 どんよりとした空気に息苦しい。梅雨入りのせいではない。あまりにも厚顔で、あまりにも愚鈍で、あまりにも人権感覚のない人間が放つ言葉が、大気を汚しているのだ。小泉純一郎氏のときも、安倍晋三氏のときも「最悪の時に最悪の首相」という表現をした。だが、野田佳彦首相はその二人をも超えている。考えたくはないが、もはや日本は引き返すことのできない奈落に入り込んでしまったのかもしれない。

 消費税増税は本来、自公政権時代の「マニフェスト」であり、民主党は「増税の前に行政改革」を訴えて政権の座についた。それがいつの間にか逆転していたこと自体、ありうべからざることだったのに、野田首相は増税に「政治生命を賭けて」しまった。この段階でその厚顔ぶりにあんぐりしていたら、法案の先行きが不透明になると、今度はもともとのマニフェストをかなぐり捨てて自公に寄り添うという、空前絶後の有権者無視に踏み切った。

 以前から気になっていたのだが、野田首相の目は絶えず泳いでいる。国会での答弁も記者会見でもそうだ。「自分」のない証拠である。財務省に何をどう吹き込まれたのかわからないが、「何が何でも増税」というミッションに踊らされているようにしか見えない。自らの政治信条、理念、理想、そしてそれらを市民に訴える「言葉」を持たない首相は愚鈍と呼ぶしかない。

 自公との“談合”が成立した翌日、間髪を入れずに大飯原発再稼働を宣言した。「国民を守るため」という、これを喜劇として何を喜劇と呼ぼうかという言辞を弄す首相の目は、相変わらず泳いでいた。財務省と二人三脚の財界にどう受け止めてもらえるかのみを考えていたのか、言葉とは裏腹に市民への愛情はおよそ感じ取れなかった。

 ここまできたら断言するしかない。民主党に政権をとらせるべきではなかった。生産性のない皮肉で口にするのも忸怩たる思いだが、民主党が野党ならここまで官僚や財界の思い通りにはならなかったはずだ。「官僚支配打破」の旗を掲げる限り、消費税増税には反対し続けるしかなかっただろう。福島原発事故に関しても、連合の顔色をうかがうことはあっても、自民党、官僚、電力会社の三位一体の癒着ぶりを追及したはずだ。そこに世論の力が加われば、自民党もおいそれと再稼働には踏み切れなかっただろう。

 この際、反増税、脱原発の議員は民主党を脱党し新党をつくるべきだ。そうすれば自民党も割れるかもしれない。このままでは、この国は窒息してしまう。(2012/6/22)

原子力災害対策特別措置法及び原子力災害への対応に関する質問主意書と答弁

 政府は6月15日、東京電力福島原発事件をふまえ、「シビアアクシデントを想定した防災訓練を実施しなければならないとはされていなかった点等については、十分反省し、原子力防災の抜本的改善を図ることが必要である」との答弁を閣議決定した。その一方で、原子力災害対策特別措置法の改正案は今国会に提出しているものの成立しておらず、同施行令や同施行規則・防災基本計画・原子力災害対策マニュアルの改定については「現在検討中である」と、事故前となんら変わっていないことも認めた。福島みずほ参議院議員(社民)の質問主意書に答えた。

 関西電力大飯原子力発電所3、4号機(福井県おおい町)の運転再開について、野田佳彦首相が16日にも最終決定する方針を固めたと報道されているなか、法律面での事故対策がまったく進んでいない実態が明らかになった。危険な事態なので、質問と答弁を以下に全文紹介する。(なお、テキストでは読みやすいように質問と答弁を交互に掲載する)

原子力災害対策特別措置法及び原子力災害への対応に関する質問主意書

原子力災害対策特別措置法及び原子力災害への対応に関する質問に対する答弁書

///////////////////////
原子力災害対策特別措置法及び原子力災害への対応に関する質問主意書

 原子力災害対策特別措置法(以下「原災法」という。)は、その第一条(目的)において、「この法律は、原子力災害の特殊性にかんがみ、原子力災害の予防に関する原子力事業者の義務等、原子力緊急事態宣言の発出及び原子力災害対策本部の設置等並びに緊急事態応急対策の実施その他原子力災害に関する事項について特別の措置を定めることにより、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律 (昭和三十二年法律第百六十六号。以下「規制法」という。)、災害対策基本法(昭和三十六年法律第二百二十三号)その他原子力災害の防止に関する法律と相まって、原子力災害に対する対策の強化を図り、もって原子力災害から国民の生命、身体及び財産を保護することを目的とする。」と定めている。
 原災法が適用されている東京電力福島原子力発電所事故における原子力災害において、災害発生当時に原子力災害対策本部長を務めた菅前首相が本年五月二十八日、「東京電力福島原子力発電所事故調査委員会」(以下「国会事故調」という。)で重要な発言を行っている。日本政府が、原発の再稼働を検討しているところ、過酷事故への対応体制は極めて重要である。
 よって、以下質問する。

一 菅前首相は、国会事故調で東京電力福島原子力発電所事故の責任について「国策として続けられてきた原発によって引き起こされたもので、最大の責任は国にある。国の責任者としておわび申し上げたい」と証言している。この認識を野田内閣も引き継いでいるか明らかにされたい。

一について
菅前内閣総理大臣の辞職後の個別の発言に係るお尋ねについては、政府としてお答えすることは差し控えたいが、国は、これまで原子力政策を推進してきたことに伴う社会的な責任を負っており、東京電力株式会社(以下「東京電力」という。)の福島第一原子力発電所の事故(以下「本件事故」という。)への対応についても、その責任を踏まえて行われるべきものと考えている。

 

二 菅前首相は国会事故調で「原子力事故にあたってどのような権限が首相、本部長としてあるのか、詳しい説明を聞いたことは覚えている限りない」と述べている。野田首相は、原子力事故にあたってどのような権限が首相、本部長としてあるのか、詳しい説明を受けているか。説明を受けた日時と説明を受けた合計時間を具体的に示されたい。

三 野田首相は、原発事故を想定した訓練に首相として参加したことがあるか。ある場合は、その日時と場所を示されたい。ない場合は、参加する防災訓練が具体的に予定されているか。予定されている場合は計画の日時とその場所を示されたい。

二及び三について
野田内閣総理大臣は、平成二十三年九月二日に内閣総理大臣に就任して以降、本件事故に係る原子力災害対策本部長としての職務を遂行しており、必要に応じて、原子力災害対策特別措置法(平成十一年法律第百五十六号。以下「原災法」という。)等に関する説明を受けている。現在、本件事故の教訓を踏まえ、原子力防災対策の見直しを行っているところであり、国が地方自治体及び原子力事業者等と共同して行うこととしている原子力防災訓練については、本件事故の発生以降行われていないが、今後、当該見直しを踏まえ、実施時期や内容等に係る検討を行うこととしている。

 

四 菅前首相は国会事故調で「原子力災害対策特別措置法はシビアアクシデント(過酷事故)に対応できていなかった。事故想定が不十分だった」と述べている。現行の原災法は過酷事故に対応できているのかどうか野田内閣の認識を示されたい。対応できていると認識する場合、その理由を示されたい。また、対応できていないと認識する場合、どのように今後対策を立てていくのか、その具体的な方針と計画を示されたい。

四について
原災法第二十八条第一項の規定により読み替えて適用される災害対策基本法(昭和三十六年法律第二百二十三号。以下「災対法」という。)第四十八条第一項の規定に基づき、原子力事業者を含む災害予防責任者は防災訓練を実施しなければならないとされているが、必ずしも本件事故のようなシビアアクシデントを想定した防災訓練を実施しなければならないとはされていなかった点等については、十分反省し、原子力防災の抜本的改善を図ることが必要であると認識している。このため、原子力事業者に対しては、本件事故のようなシビアアクシデントを想定した原子力防災対策の強化を求めることとし、法令上で明確にするための検討を進めているところである。また、国においては、万一、原子力施設において本件事故のようなシビアアクシデントが発生した場合等に備え、周辺住民の防護措置についての新たな基準や手順の整備等を進めているところである。

 

五 原災法を運用するにあたって、関係法令、マニュアルなど政府が定めているものの名称をすべて挙げられたい。

六 前記五の関係法令・マニュアルなどのうち、今回の東京電力福島原子力発電所事故を受けて、改定されたものはあるか。ある場合は、具体的に改定した関係法令・マニュアルなどの名称と改定内容を示されたい。改定していない場合は、改定の予定の有無、進捗状況等について具体的に示されたい。

五及び六について
政府としては、原災法の円滑な運用を図るため、原子力災害対策特別措置法施行令(平成十二年政令第百九十五号)及び原子力災害対策特別措置法施行規則(平成十二年総理府・通商産業省・運輸省令第二号)を定め、また、原災法第二十八条第一項の規定により読み替えて適用される災対法第三十四条第一項の規定に基づき、防災基本計画を定め、更に当該計画に基づき指定行政機関ごとに防災業務計画を定めている。加えて、お尋ねの「マニュアル」が何を指すのか必ずしも明らかではないが、これらの計画を運用し、原子力発電所の事故に対応することを目的として先の答弁書(平成二十三年十一月二十二日内閣参質一七九第二一号)一についてでお示ししたとおり、各府省等において規程等を作成している。
 これらのうち、原子力災害対策特別措置法施行令、原子力災害対策特別措置法施行規則、防災基本計画、原子力災害対策マニュアル(平成十二年八月二十九日原子力災害危機管理関係省庁会議)については、今国会に提出している原災法の改正案、東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会が平成二十三年十二月二十六日に取りまとめた「中間報告」等を踏まえ改めることとしており、その内容については現在検討中である。また、その他の規程等については、政府全体としての原子力防災対策に係る検討状況を踏まえつつ、個別に検討を進めていくこととしている。なお、原子力防災対策については、常により高い水準を目指して取り組むべきものであり、政府としては、その充実に向け不断に努めているところである。

 

七 東京電力福島第一原子力発電所の事故に政府と東京電力が一体的に対応するため、「福島原子力発電所事故対策統合本部」(以下「統合対策本部」という。)が設置された日時はいつか。統合対策本部の設置は、原災法で想定されているか。この統合対策本部は、どのような法的根拠に基づいて設置されたのか明らかにされたい。

七について
福島原子力発電所事故対策統合本部(当時)については、政府において、東京電力と同じ場所で本件事故の現場の情報を共有しつつ機動的な判断及び指示を行うため、平成二十三年三月十五日に設置した事実上の組織である。

 

八 菅前首相は、東京電力福島第一原子力発電所の吉田昌郎所長(当時)に対して、昨年三月十一日以降、電話で二度話したと証言している。原子力災害対策本部長である首相が原子力発電所の所長と直接話をすることを原災法は想定しているか。原災法が想定していないとすれば、なぜ「想定外」のことが二度も起きたのか、政府の見解を具体的に示されたい。

八について
原子力災害対策本部は、原災法に基づき、原子力防災組織を含む関係機関が実施する緊急事態応急対策の総合調整を行うことをその所掌事務としていることから、原子力災害対策本部長たる内閣総理大臣と福島第一原子力発電所の原子力防災組織を統括する同発電所長とが直接話すことについては、必ずしも、原災法に反するものではないと考えている。

北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)報道の立ち位置

<北村肇の「多角多面」(81)>
 いわゆる「右翼」の人と話す機会は意外に多い。公開での討論もある。そのこと自体を批判されるときもある。でも、誰とでも言葉でやりとりするのがジャーナリストの仕事なので気にはしない。それはそれとして、あるとき右翼の人に真顔で言われた。「『週刊金曜日』は中国から財政的支援を受けているのでしょう」。のけぞった。戦争責任の問題と中国共産党政権への評価は違うと、本誌の具体的な記事をもとに説明した。とりあえず「誤解」は解けた。「左翼雑誌」=「無条件に中国支持」と頭から信じていたようだ。もちろん、こんな「話しのわかる」人ばかりではない。

 北朝鮮に関して、「左翼は無条件に支持している」と故意に喧伝する人たちがいる。「あんなひどい国を支援する左翼はひどい」との構図だ。もちろん、本誌の場合、全面支持の立場をとるはずもない。ただ、意図的で政治的な北朝鮮バッシングを容認するわけにはいかない。何しろ、日本政府は「衛星打ち上げ」の際、まるでミサイル攻撃を受けるかの如くに大騒ぎした。衛星打ち上げ技術がミサイルに転用可能なのは事実だ。だが、弾頭に「衛星」(仮に玩具のようなものであれ)を積んであれば、それをミサイルとは言わない。

 もっと異様なのが高校授業料無料化や補助金の問題。朝鮮学校に対する政治的嫌がらせそのものだ。子どもたちを外交問題に巻き込むのは許し難い。こうした主張に対して「拉致も認めるのか」という言葉が返ってくる。まるで次元が違う。拉致はとんでもない国家犯罪だ。許せるはずがない。しかし、横田滋さん、早紀江さんも指摘しているように「教育は教育の問題。拉致とは別問題」なのだ。(本誌6月15日号参照)。

 核開発に関していえば、北朝鮮でもイランでも許容できることではない。これについては逆に左派の人から、米国を始めとした核大国との「二重基準」はどうなるのかと詰められることがある。論理展開がおかしい。あくまでも、目的は地球上からすべての核をなくすことだ。現保有国に廃棄させることと、これ以上の核保有国をつくらせないことは矛盾するものではない。かつて、一部で唱えられたような「米国の核は汚い、ソ連、中国の核はきれい」のような間違いを犯してはならない。
 
 強者と弱者がいれば、ジャーナリストは常に弱者に寄り添うべきだ。だから、米国と北朝鮮なら北朝鮮の側に立ってものをみる。しかし、それは黒を白と言いくるめる姿勢ではない。あくまでも事実に基づき客観的に判断するのが当然だ。また、例外なく為政者は強者、市民は弱者である。その意味で、「金王朝」や「中国共産党」は批判・監視の対象である。どんな報道においても、この立ち位置は変わりようがない。(2012/6/15)

「櫂未知子の金曜俳句」6月末締切の投句募集について

『週刊金曜日』2012年7月27日号掲載の俳句を募集しています。
【兼題】「水貝(みずがい)」「キャンプ」(雑詠は募集しません)
【締切】 2012年6月30日(土)必着
【投句数】1人計10句まで何句でも可
※特選に選ばれた句の作者には櫂未知子さんの著書(共著を含む)をお贈りします
【投句方法】官製はがきか電子メール
(氏名、俳号、電話番号を明記)

【投句先】

郵送は〒101-0051 東京都千代田区神田神保町2-23
アセンド神保町3階  『週刊金曜日』金曜俳句係宛。

電子メールはhenshubu@kinyobi.co.jp
(タイトルに「金曜俳句投句」を明記してください)

【その他】新仮名づかいでも旧仮名づかいでも結構ですが、一句のなかで混在させないでください。
なお、添削して掲載する場合があります。

兼題「黴(かび)」 金曜俳句への投句一覧(6月22日号掲載=5月末締切)

「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です

選句結果と選評は『週刊金曜日』6月22日号に掲載します。

どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。

『週刊金曜日』の購入方法はこちらです

amazonhttp://www.amazon.co.jp/)でも購入できるようになりました。

予約もできます。「週刊金曜日」で検索してください。配送料は無料です。

(さらに…)

兼題「蜜豆」 金曜俳句への投句一覧(6月22日号掲載=5月末締切)

「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です

選句結果と選評は『週刊金曜日』6月22日号に掲載します。

どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。

『週刊金曜日』の購入方法はこちらです

amazonhttp://www.amazon.co.jp/)でも購入できるようになりました。

予約もできます。「週刊金曜日」で検索してください。配送料は無料です。

(さらに…)

社会が根底から変わったのに「ドジョウの視覚」ではたまったものではない

<北村肇の「多角多面」(80)>
 東日本大震災と福島原発事故は社会を根底から変えた。これほど明白でしかも本質的なことに野田首相は思いをいたしていないようだ。安全確保の見通しが立たなくても、圧倒的多数の市民が反対しようと、経済優先主義を恥じることなく大飯原発再稼働に踏み切る。一方で、消費税増税には「政治生命を賭ける」と繰り返す。要するに、首相の頭の中には「本当に大事なこと」がすっぽりと抜け落ちているのだ。

 大震災が私たちに突きつけた一つは、自然の中で自然に手を加えながら生きていく以上、しっぺ返しは避けられないという冷厳な事実だ。そして、そのことが明らかにしたのは、人間の無力さではなく、ある種の運命である。運命はあきらめには直結しない。運命として受け入れるには長い時間がかかる。たとえば、身近な人の死は残された者に悔悟をもたらす。だから「お別れの儀式」という時間が欠かせない。しかし、今回の災害ではまだ多くの方の行方がわからず、「儀式」すらできない人々がたくさんいる。あえて説明するまでもなく、福島原発事故が救助や捜索の足を引っ張ったのだ。

 自然現象である地震と違い、福島原発事故は人間の構築したシステムの問題である。避けようと思えば避けられた。だが、政府も東京電力も意図的にそこを誤魔化している。一貫して、「避けようのなかった」想定外の地震により、「本来なら安全だった」システムが崩壊したという図式にはめこもうとしている。とんでもない。自然現象は基本的に「避けようのない」ことであり、だからこそ「避けられない」は「想定内」なのだ。裏を返せば、「真に安全な」という形容詞は、「避けようのない」ことが起きても崩壊しないシステムにしか用いるべきではない。
 
 そもそも、原発というシステムは人間のコントロールを超えた存在である。放射性廃棄物の処理ができないだけでも明らかだろう。「避けようのない」ことが起きなくても崩壊する、極めて危険性の高いシステムなのだ。しかし、「3.11」が私たちに伝えたものは、原発の危険性といったレベルにとどまらない。重要な点の一つは、自然との関係だ。つまり、「自然に生かされている」ことを前提にした「自然との共生」に目を向けること。一刻も早く、「人間社会の一部に自然がある」との誤解から脱却し、「自然の一部に人間社会がある」という原点に戻ること。そこで初めて、私たちは「運命」をどうとらえ、どう対処すべきか考えることができる。
 
 野田首相だけではなく、多くの国会議員には哲学や思考力が欠けるように見える。人類が岐路に立っているとき、ドジョウの視覚では困るのだ。(2012/6/8)