住民基本台帳ネットワークと転出入届
2002年7月12日9:00AM|カテゴリー:マカロニほうれん総研|Hirai
地味なタイトルですが、個人的には結構おもしろい話です。
8月5日から住民基本台帳ネットワークが作動する。住基事務に関するトラブルが予想されるなか、これまでは、地味な職場と言われた住基事務が一躍、ネタの宝庫となっている。とはいえ、取材するマスコミもあまり見かけない。住基に関する取材でダントツなのは、本誌でもよく執筆している『毎日新聞』記者の臺宏士(だい ひろし)さんでしょう。
ところで、転入転出届ですがみなさんきちんと届けていますか?
これをチェックする法律である住民基本台帳法は結構厳しいです。
まず転出はあらかじめ届けないといけないそうです。
また転入ですが、14日以内に転出証明書と転入届けを市町村長に届けないといけません(住基法22条1項)。もし、届けそびれている人がいたら、罰金を覚悟してください。なんと5万円の罰金なのです。
つまり、自分の住所が住民票の記載と違っている状態が14日続くと罰金ものなのです(住基法51条)。
しかし、今後は住基カードの交付を受けている人は郵送で転出届を出せば、転出証明書がなくてもよいので便利と言われています。
ところで、この転出・転入届がいい加減だと虚偽の届出になり、現在は5万円の罰金だと言いましたが、1999年(平成11年)通常国会での改正前は罰金(過料)は5000円でした。
いきなり5万円と10倍にまで値上がりしたわけです。
これによって届出強制の度合いが強まったわけです。
一方で、DV(ドメスティック・バイオレンス)や借金の取り立てで逃げ回っている人のように現住所を隠したい人はいます。その場合、地方自治体の窓口の職員は気をきかせて、転入届けを大目にみてくれたりしたようです。
「もしばれても5000円ですから」と。
しかし、改正施行後の99年8月18日以降から5万円の罰金になってしまったので、窓口でそのようにアドバイスはさすがにできなくなったようです。
もう一つ、おかしい話がオウム真理教(現在は「宗教団体アレフ」)の信者の自治体の転入届不受理問題です。よく騒がれているアレです。
行政は転入届を強制しているのに、信者の生活の拠点がある場所での転入届を不受理にする。
それは行政が住民に法を犯させることになるわけです。
しかも、ある自治体が転入届を不受理にしたため、別の自治体に住民登録していた信者が、電磁的公正証書原本不実記録同供用の容疑で逮捕され、信者の住居など10数カ所が家宅捜索を受けるという刑事事件にまで発展するケースもある。
相変わらず、オウムに関しては警察は無茶苦茶なことやりますね。
ところで住所ですが、その定義については最高裁の判例があります。
「各人の生活の本拠地」(昭和29年10月20日)
「選挙権の要件としての住所は、その人の生活に最も関係の深い一般的生活、全生活の中心をもってその者の住所と解すべき」(昭和35年3月22日)
ということは、地方から選出されて千代田区や港区に住む永田町の議員で、金帰火来の議員ならともかく帰らない議員。特に首相動静を見るとほとんど赤坂の首相官邸にいる小泉純一郎首相なんかは、住民票ってどう考えても神奈川県横須賀市ではなくて東京都千代田区ですよね。でも、選挙は神奈川県11区なんてオカシイ話です。千代田区はきちんと税金をとりましょう。
また、自衛艦のクルーや潜水艦部隊のサブマリーナなど、特別な事情で海の中や上にいる隊員はさておき、全国各地で宿舎暮らしを続ける自衛隊員の生活の本拠地は、議員宿舎や隊員宿舎ではないらしいです。これもおかしな話です。
結論から言って、転入転出届けは国の気分次第なわけです。
住基ネットでもすべては把握できませんね。
(平井康嗣)