ビッグSとスモールS
2002年2月22日9:00AM|カテゴリー:マカロニほうれん総研|Hirai
先日、東京・新宿のバーで在日韓国人のママさんと話していたら、在日の人々の間で最近、うそつく人は「ムネオ」と言われているそうだ(苦笑)。まあ、ママさんの知り合いの間だけのローカルルールだろうけど。
北海道を選挙区とするのに、アイヌ民族に対して「単一民族発言」をしたり、「痴性」きわだつ渦中の人・ムネオ。ボスの中川一郎代議士の自殺以来、怪しげな噂も多い。
ケニアODA疑惑については、本誌399号(2月15日)で、公共事業の問題を追及し続けているジャーナリストの横田一さんがリポートしている。
ムネオがなぜ外務省にそんなに力を持っているのかはさておき、実際、外務省内でムネオを背景に力を持っていた人はいるらしい。
いくつかの新聞でしか登場していないが、外務省でムネオのパイプ役といわれていたのがS主任分析官だ。2月13日の衆議院予算委員会で河村たかし代議士(注)などがムネオの利権の怪しさについて追及していた(2月14日付『毎日新聞』が詳しい)。
ムネオ36回の海外渡航のうち19回同伴したとして指摘されている人物だ。
この人については、非常に謎が多い。
同志社大学大学院の神学研究科を卒業後、入省後ソ連大使館を経て、外務省で働いている(『毎日新聞』)。
正確に言えば、Sは外務省国際情報局分析第一課に在籍しているらしい。国際情報局は、第一課のロシアと第二課のアジアの二つにわかれる。
その第一課に主任分析官として働いている。
なぜ、ロシアや朝鮮半島などアジアやアフリカだけかというと、もちろん欧州や米国などの「友好国」を情報分析することはない。大使館などのルートを通じて情報を得ればいい。
つまり、かつての冷戦構造をひきずって、いまだに警戒していた国だけの情報を収集しているわけだ。
この構造は根深い。
少々、話はずれたが、S氏の「主任分析官」の肩書きは、正式には外務省には存在しない。本来は「課長補佐」だそうだ。強いて言えば衆議院議員を「代議士」と新聞が書くようなもので、この肩書きが省内やメディアでまかり通っていることが不思議だ。課長より力を持っているから「課長補佐」では具合が悪いのだろう。
外務省関係者によれば「省内では抜群に力を持っている。政治家をバックに持っているということを抜きにしても実際に有能ですよ。ロシア語やら英語やら語学も達者。課長もロシア関係の話になればおうかがいを立てるほどだったそうです。省内では鈴木議員はビッグS、SをスモールSなんて呼ばれていましたね」そうだ。
「今は(港区)芝に移動した外務省庁舎ですけど、かつては省内の会議室を自分の個室のように使っていましたよ。今は省にも姿を見せていないですけど、何やってるんですかねえ」と続ける。
優秀ゆえに政治家に重用される、Sのように清濁併せ飲む官僚。
ノーパンしゃぶしゃぶ接待事件での大蔵官僚を思い出した。
あれがきっかけで、金融と財政の分離が実現し、大蔵省は財務省と金融庁になったが、今回は何か変わるというのだろうか。
(注)河村たかし議員
民主党の衆院議員。名古屋弁こてこての“大衆”政治家。2月13日のこの人の衆院予算委員会はでら(どえらい)面白かった。塩川財務大臣が答弁でまたすっとぼけたことを言っていたのだが、河村議員もついつい「ほうほう」とうなずいていた。ところが、突然、ハッとして、「おお、危なくわしまでぼけてまうとこだった」と自分にツッコミを入れ、委員会内の笑いを誘っていた。編集部でそれを見ていた名古屋出身のT本誌記者は「1人でボケてツッコむ……名古屋人らしい自ギャグ(自虐)だぎゃ」とニヤっと笑っていた。
そんなことより、河村議員の味噌カツ的発言で重要だったのは、別案件の国税庁天下り問題で何億円とカネが支払われていることに激怒して「これは昔なら一揆ですよ! みなさん! 税金払うの辞めましょうよ」とよびかけていたことだ。3年くらい前、河村議員にかつて住民基本台帳法改正案の問題点について取材した時、「国民は税金の使い道にうとい。もっと自分らで税金がどういう風に使われているかかんがえなあかんで」(記憶が曖昧で正確な言葉使いは不明です!)と、国が分配する税金の使い道に疑問を投げかけていたのだ。その考えは一貫しておるのだなあ、と思い出した。税金の使い道を住民が参加して決めていく、このような考えを「参加民主主義」というそうで、外国にはブラジルのポルト・アレグレが実践していて最近、サン・パウロも取り入れ始めたそうだ。
<番外編>
好きな本や雑誌
『NI』(New Internationalist)
全ページ英文の雑誌でシンドイのだが、日本支社?の代表・ケイト・ストロネルさん曰く「強いて言えばイギリスでの『週刊金曜日』でしょうか」と言うような月刊誌。最近同誌がとりあげたテーマは「WTO」「国際貿易の労働者組合」「児童労働者」「フェアトレ-ド」など。本誌と違ってカラーグラビアを多用して重要な問題をセンス良く報道している。
『NI』や本誌のような雑誌は「オルタナティブメディア」と言われていたりする。「オルタナティブ」とは「代替的、代替案」という意味だから、ほかのメディアや社会を補完する役割のあるメディアということになろうか。本多勝一編集委員的には「代替的媒体」とでもなるのか(苦笑)。NIは編集長が毎月ローテーションで変わって、世界中に記者を飛ばして取材するそうだ。目から鱗が落ちる。全ページ英語なので、時間があったときに訳して半分くらい読むのがやっとですが、ご一読薦めます(WWW.newint.com)。
次回は別のオルタナティブメディアを紹介します。
*マカロニほうれん総研は自発的趣味的なシンクタンクです。
(平井康嗣)