きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

「マクドナルドのフィレオフィッシュは深海魚が使われているって噂は真実か」その2

(前回の続き)

 本題とはやや外れるが、若干解説すると、その男性・半田寛一さん(仮名)は正確には船乗りではない。国際的な漁業現場監督というところだろうか。ある水産会社とフリーの契約を結んでいて、突然「半年ロシア行ってくれ」「ノルウェー行ってくれ」と言われて、スポットで現地の監督に行くということだった。裏を返せば、日本の漁業は消費者に対する安定供給のために、漁場を取り尽くしては移動していくということを繰り返しているということでもある。なんともグローバルな話である。海底を根こそぎさらってズタズタにする底引き網のひどさなど、「エビと日本人」かはたまた「バナナと日本人」を彷彿させ興味深かった。

 そんな話をしつつ本題であるフィレオフィッシュの話を半田さんにぶつけてみると、

「メルルーサはヨーロッパではタラよりも好まれて食べられる場合もあるよ。そんな変な魚じゃないよ。それにフィレオフィッシュのパテってタラじゃないの」

 と首を傾げていた。「メルルーサは深海魚でグロテスクな魚で安い魚だからフィレオフィッシュに使われている」という前提は早くもかなり怪しくなってきた。

 それに、かりに深海魚だからと言ってもそれだけで問題があるわけでもないだろう。アンコウなどは日本人に好んで食べられている。深海魚より近海モノの汚染のほうがヒドイのかもしれない。

 確かに、築地市場の水産物価格月報を見ても、メルルーサとタラ(いずれも冷凍もの)はほとんど同じ価格。むしろ、メルルーサのほうがキロ当たり20円~100円ほど高いのである。昔は比較的安かったらしいが、人気が上がってきたので値段も上がったらしい(ちなみに白身フライとしてかなり流通している「ホキ」はタラなどの半値以下で取引されている)。

 この前提に立てば、フィレオフィッシュはメルルーサではない。メルルーサだとしても、それはそれで問題はない。欧州的な嗜好に立てばむしろラッキーとさえ言える。

 そこで、日本マクドナルド(株)にフィレオフィッシュについて尋ねてみた。

――日本人はフィレオフィッシュをどれくらい食べているのでしょうか

広報「フィレオフィッシュは今年に入ってから今日まで(2001年10月23日現在)、約1億個食べられています。計算すると、1日当たり約37万個になります」

――すごい数ですね。ところでフィッシュパテの魚の種類は。

広報「日本のフィレオフィッシュパテは100%スケトウダラです」

――なぜスケトウダラなのでしょう。日本人の口に合うということなのでしょうか。

「かつてはマダラを使っていました。他国のマクドナルドでは、ホキやマダラやメルルーサも使っているようです。現在、スケトウダラを使用している最大の理由は、もっとも安定供給できる魚であるということです。お客様に対して安定供給できることはとても重要なことなのです」

――どのようにしてフィッシュパテになるのでしょうか。

広報「スケトウダラは別名アラスカン・ポラックと言われるようにベーリング海で獲れます。ベーリング海が一番獲れますし、質も良いです。これを船上で凍結してタイに持っていって3枚におろして皮や骨をとります。それを圧縮冷凍してブロックにします。そのブロックをタイと千葉県船橋市の工場で加工します。つまり、一つ一つの大きさに切ってコロモをつけるわけです」

――狂牛病騒ぎでハンバーガーよりフィレオフィッシュのほうが売上げが伸びているということはありますか。

「全体として売上げが減少したということはありますが、ハンバーガーが減ってフィレオフィッシュが伸びているということはありません。商品の移行はありません。結局、お店に来てくださるお客様ならば、ハンバーガーもお食べになります」

 ……なるほど。もう1回繰り返す。

結論:“日本の”フィレオフィッシュはスケトウダラ100%。

 

 とにかく日本人は魚をものすごい量食べているわけだ。それも、日本近海だけでなく世界中から魚を集めて胃袋に入れている。その一端を再確認しました。
(平井康嗣)