反戦歌
2001年11月9日9:00AM|カテゴリー:風に吹かれて|伊田浩之
このコラムの名前「風に吹かれて」はもちろん、ボブ・ディランの同名の曲『Blowin’ In The Wind』を意識しています。ボブ・ディランの2枚目のアルバム『フリーホイーリン・ボブ・ディラン』(1963年)の巻頭を飾る名曲で、今回の“ブッシュの戦争”への反戦デモでも多くの人によって歌われています。私自身も渋谷のデモで何度も耳にしました。
ただ、この『フリーホイーリン・ボブ・ディラン』には、『戦争の親玉/ Masters Of War』や『第3次世界大戦を語るブルース / Talking World War III Blues』など、もっと反戦色の強い歌が多く収録されています。『風に吹かれて』の歌詞は、さまざまな問いかけの後、「その答えは、友達よ、風に吹かれている」と繰り返すだけなのです。問いかけに対する答えや、強い反戦メッセージは出てきません。
筑紫哲也編集委員が本誌に何度か書いたピート・シーガーの反戦歌『花はどこへ行った』も、繰り返しは「人はいつになったら学ぶのか」と控えめな表現です。やはり、間接的な表現や考え込んでしまう内容の方が、訴える力が強いのでしょうか。
アフガニスタンへの空爆という形で“ブッシュの戦争”がはじまって1カ月。どういった記事を掲載するのが良いのか、その記事にはどのようなタイトルが最も効果的なのか、思い悩む日々が続いています。米国政府の“官製情報”を垂れ流しがちな大手メディアを批判する特集を間もなく掲載しますが、「テロに対する新しい戦争」という宣伝に対抗するイメージ戦略をどう築いていくのかも大切だと思っています。
それにしても、日本の反戦歌をあまり聞かなくなったなぁ。高田渡の『自衛隊に入ろう』、加川良の『教訓』、5つの赤い風船『血まみれの鳩』など、名曲はいっぱいあるんだけどね。