オーディオ専門誌の功罪
2002年1月18日9:00AM|カテゴリー:風に吹かれて|伊田浩之
17年ぶりにオーディオ用のスピーカーを買うことにした。これまで愛用していたスピーカーは、エッジ部分のウレタンがボロボロに劣化して、音に歪みが出るようになったためだ。聞くところによると、1970~80年代に製造されたスピーカーの多くは、エッジにウレタンを使っているという。ウレタンは特性的には優れているものの、劣化するのが欠点らしい。しばらくは、ましな方のスピーカーだけを使って音楽を聴いていたが、モノラルの響きは少し寂い。
オーディオ専門誌を数冊読んだあと、この3連休(1月12~14日)、オーディオ専門店や電器店10軒近くを回った。購入希望について「予算はペアで10万円程度まで。アコースティックな音楽に向いたスピーカー」と店員に相談し、2~3種類お薦めの機種を教えてもらった。面白かったのは、ほとんどの店で推薦機種がほとんど同じだったこと。しかも、オーディオ誌推薦のスピーカーは含まれてなかった。
オーディオ誌で「ベストバイ」に推されていた機種について店員にたずねると、「あれはちょっとねー」とか「だめだめ」との返事がほとんどだった。なんでも、「雑誌は、売るために新しい機種を推薦するけど、最近流行している小さいサイズや、細長いタイプ(トールボーイ)は、音響学的に工夫しているものの自然な低音が出ないよ」「雑誌の場合は、メーカーが広告を出しているから新機種を推したがるけどね」「やはり大きいスピーカーの方が低音が出る。昔ながらの3ウエイがお薦め。だけど、小さい方が材料費が少なくて済むこともあり、メーカーは小さいサイズづくりに走っている」のだとか。「スタンダードなスピーカーをつくるメーカーが減ったのは困ったことだ」と怒る店員もいた。
雑誌(オーディオ評論家)の情報に影響されず、自分の考えを具体的な機種に即してていねいに説明できるプロの店員が多いことに、新鮮な驚きを覚え、すっかりうれしくなってしまった。結局、対応と説明がしっかりしている店で数機種を聞き比べ、自分の好みにあったスピーカーを買った。そして、連休の最後の日の午後は、新しいスピーカーで、久しぶりに好きな音楽をいっぱいかけて過ごした。