ゲゲゲのラバウル戦記
2002年7月19日9:00AM|カテゴリー:風に吹かれて|伊田浩之
8月9日号の敗戦特集のため、編集部員で手分けしてさまざまな人にお会いしています。私は7月15日、漫画家の水木しげるさん(78歳)にラバウルでの体験を聞きに行きました。水木さんは、『ゲゲゲの鬼太郎』などの妖怪マンガで有名ですが、ご自身の体験をもとに『総員玉砕せよ!』『コミック昭和史』(いずれも講談社文庫)などの戦記物も手がけています。
『総員玉砕せよ!』の冒頭にはこんな場面が出てきます。占領した島の景色を眺めながら、兵隊たちは「天国みたいなところだ」と喜びます。しかし、「そうだ……ここは全員が天国にゆく場所だったのだ……」と、地の文で解説がつくのです。
鬼太郎などの人形が立ち並ぶ「水木プロ」の一室で、インタビューははじまりました。写真を撮影する位置の関係で、水木さんは低めの椅子に腰掛け、私は床に座っていたのですが、話が佳境にはいると、水木さんも同じように床に降りてきました。視線を同じ高さにしようという配慮でしょうか。57年以上前の記憶にもかかわらず、身振りをまじえて怒りと悔しさを熱心に語る水木さんの姿に、戦争の怖さをあらためて感じました。
英雄史観でなく、一兵卒(しかも軍隊で一番下の初年兵)がみた戦争の実像をお届けできるよう、編集作業を続けています。