きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

イムジン河

 1月10日号で、きたやまおさむさんと筑紫哲也・本誌編集委員の対談を掲載しました。「ザ・フォーク・クルセダーズ(フォークル)」が昨年、34年ぶりに“新結成”されたことが対談実現のきっかけです。対談の詳細は、本誌を読んでいただくこととして、このコラムでは、あるフォークルの曲について書きます。

 新結成されたフォークルの1回限りのコンサートは昨年11月17日に開かれました。そしてコンサートでは、幻の名曲と言われてきた「イムジン河」も演奏されました。朝鮮半島の38度線を越え、北から南へと流れるイムジン河(臨津江)の流れに、南北分断の悲しみを歌った朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の歌です。

 なぜ幻と言われてきたのか。それは、1968年にレコードが発売される寸前までいったものの、作者名の明示がなく、日本語詞が原作に忠実でないなどの点について抗議を受け、発売が中止されたからです。民放も放送を自主規制していましたが、多くの人に歌い継がれてきました。2000年に平壌で行なわれた南北首脳会談を機に、「統一を願う歌」として再び脚光を浴び、昨年3月、34年の歳月を経て、フォークルのオリジナル盤が発売されたのです。

 コンサートで、きたやまおさむさんは次のように話しました。
「原詞にとらわれないオリジナルな歌詞を、今回ぜひ、コーリアの方にも理解していただこうと思い、(朝鮮語に)翻訳していただきました。翻訳はもちろん、在日コーリアンの方々にお願いしました。
 この歌は、今も現実を歌い上げています。そしてイムジン河とは朝鮮半島に流れる河ですが、日本と半島の間にも、また世界のどこにでも、そして、こんにち私たちの間にでも流れている河だと言えそうです。
 そういう状況をふまえて、新たな歌詞を作ってもいいかと思い、考えて、とても夢のある新しい歌詞をつけました。朝鮮語の歌詞を1番とし、松山猛作詞の2番を2番として、最後の3番を新しく作りました。新たな歌詞で歌わせていただきます。おそらくこれが、最後のフォーク・クルセダーズの最後のイムジン河になると思います」

 そして歌われた3番は、南北首脳会談など雪解けムードを反映し、未来への希望を込めた内容でした。日本と北朝鮮の国交正常化交渉が膠着状態にあるなか、さまざまなことを考えさせられる歌でした。

 蛇足を一言。「そこまで書いたんなら、その3番の歌詞も書いてよ」という声がおそらく出るでしょうが、無許可で書くと著作権上問題となりますのでご容赦ください。昨年12月31日に発売されたコンサートのCDで聞いてもらえれば幸いです。