きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

本当は怖い東京病

「有事法制が(野党も賛成して)圧倒的多数で衆議院を通過するとか、石原が300万票取(って再選され)るとか、こういったことは東京だけの病気だと思うね」――『花』などのヒット曲で知られる沖縄在住のミュージシャン、喜納昌吉さんは5月20日、東京・千代田区公会堂で開かれた有事法制に反対する「トーク&ライブ」(日弁連など主催)でこう訴えました。

東京がかかっている病気の背景を喜納さんはこう分析します。「いまの東京は、アンダーグランド(闇世界)の人を含めて、GHQ(連合国軍総司令部)の利権に群がった人たちがつくった。結局は利権をつかんだ人たちが権力を担うんだね」。確かにこの国には、首相を含め、いまでも米国にしっぽを振り続ける政治家が少なくありません。軍事面での米国の1人勝ちが目立つために、しっぽの振りぐあいも激しさを増したようです。

喜納さんは、「すべての武器を楽器に」をスローガンに、平和問題について行動を続けているだけに発言は辛辣ですが、皮肉だっぷりのユーモアも忘れません。米軍の基地に苦しめられ続ける沖縄について語った後、「日本が(戦争放棄をうたった)憲法9条を放棄するなら、沖縄が9条をもらって日本から独立しよう」と、会場の笑いを誘います。

この日、参院の特別委員会では有事法制の審議がはじまり、小泉純一郎首相が「専守防衛に徹する」「戦争の準備ではない」などと繰り返しました。なんという嘘つきでしょう。いま日本が他国から攻撃されるとすれば、米国が軍事介入した結果、巻き込まれるかたちで日本が攻撃を受ける可能性が高いのです。いわば、「防衛型」有事法制から、「介入型」有事法制に転換しているのです。

そのことは、国会に提出されている法案の内容や、政府の国会答弁をみれば明らかです。それなのに、短いキャッチフレーズでごまかす首相や、その首相の嘘を検証しないまま伝える一部マスコミはなにを考えているのでしょうか。いや、本当はなにも考えていないのかもしれませんね。思考を停止して、強いものにしっぽを振り、分け前をもらおうとする――それが「東京病」だとすれば、かなりの重症です。

しかし、最初に書いた日弁連をはじめ、参院段階での廃案を求める動きは強まっています。もちろん、市民運動もさまざまな工夫をしながら訴えを続けています。『週刊金曜日』も「東京病」への処方箋をさまざまな角度から掲載し続けます。

有事法制を取り上げた本誌の主なバックナンバーは下記の通りです。
・397号(2002年2月1日) 戦争を呼び込む有事法制
・406号(2002年4月5日) 増殖する有事法制
・409号(2002年4月26日)有事法制と憲法
・413号(2002年5月31日)ぶっつぶせ!有事法案
・456号(2003年4月18日)有事法制日本のネオコンの素顔
・459号(2003年5月16日)戦争をしたい国への道