ワインリストを持たない外務省
2006年9月15日9:00AM|カテゴリー:風に吹かれて|伊田浩之
外務省の職員は同省が持っているワインを全部覚えている、とでもいうつもりなのか。飯倉別館のワイン貯蔵庫だけでも約8000本のワインがあるのに!
今年7月12日、外務省に情報公開請求をしました。請求の内容は、今年7月1日現在で、外務省が保有するワインリストの最新版です。そして9月11日、外務省から「開示決定等通知書」が届きました。決定は「不開示(不存在)」。決定理由は「該当する文書を作成していないため、不開示(不存在)としました」。
鈴木宗男衆議院議員(新党大地)が連発している質問主意書のなかに「外務省が所有するワインに関する質問主意書」(第164回通常国会衆議院質問番号86)があります。この質問主意書に対し、今年2月28日付けの内閣答弁書は、
《外務省所管の動産であるワインについても、外務省として適切に管理しているところである》
と答弁しています。
現在持っているワインリストを作成せずに、どうやって《適切に管理》しているのでしょうか。同じ質問主意書では次のようなやりとりがあります。(わかりやすくするために一問一答の形式にしましたが、内容は変更していません)
質問:外務省は、同省が飯倉別館のワイン貯蔵庫に保有するワインのリストを作成しているか。
答弁:御指摘の「リスト」が何を指すのか必ずしも明らかではないが、御指摘のワインを購入する際に必要な文書を作成してきている。
質問:外務省が飯倉別館のワイン貯蔵庫に保管するワインの内、購入価格の高い順から五銘柄の名称、産地、購入年、購入価格を明らかにされたい。
答弁:御指摘のワインについて、お尋ねの点を確認するためには、改めて詳細な調査を要するため、お答えすることは、困難である。
どうやら、購入リストがあるから《適切に管理》しているといいたいようです。しかし、当然、ワインは賓客の接待などで使えば(飲めば)なくなります。どのワインが何本残っているかというリストは本当にないのでしょうか。ある政府関係者は「非常に高価なワインがあるので出せないんですよ」と話してくれました。購入価格の高いワインを答弁できないのも同様の理由でしょう。
私は、必要であれば数十万円、いやもっと高価なワインを購入してもいいと考えています。問題なのは、このような稚拙なごまかしで国民に事実を知らせない姿勢です。《(国家公務員は)国民全体の奉仕者であってその職務は国民から負託された公務である》(国家公務員倫理法第1条)ことをもう一度思い起こして欲しいものです。
今回の「不開示」に対しては、さっそく異議を申し立てるつもりです。外務省は、「存在しない文書への異議申し立てはできない」と言うかもね。それなら、「外務省所管の動産であるワインを適切に管理するための文書」を公開するよう請求しようかな。さてさて、どうなるか今から楽しみです。
外務省にかんしてはさまざまな情報公開請求をしています。その結果については、誌面やこのコラムなどで報告していきます。
なお、鈴木議員の質問主意書と答弁をまとめた本『鈴木宗男の国会質問主意書全255本』(にんげん出版、2500円)が9月末に発売されるそうです。巻末には「人名」「地名」「事件名」でひける詳細な索引がつくとか。質問主意書と答弁書の全文は衆議院公式ホームページで閲覧できますが、もちろん索引はありません。この本は、外務省の実態を知るための貴重な資料となりそうです。