きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

阪急トラベルサポートの横暴(1)

シジフォスの希望(29)

 疑問や文句があるのなら、なぜ本誌に言ってこないのだ。『週刊金曜日』2009年2月20日号に掲載した旅行添乗員たちの労働組合結成をめぐる記事に対して、取材に応じた組合支部委員長が事実上の解雇処分を受けた(3月18日)。組合つぶしの不当労働行為の疑いがあるだけでなく、言論の自由への挑戦でもある。

 全国に1万2000人近くいる旅行添乗員の9割ほどが「派遣」だという。社団法人日本添乗サービス協会(東京都港区)作成の冊子によると、1日の労働時間が12時間を超える勤務が大半にもかかわらず、平均年収は約236万円(2005年労働実態調査)で、「厳しい勤務内容と低い給与水準が将来に対する大きな不安に繋がっています」(同冊子)。

 そうした旅行添乗員の労働環境と待遇を改善し、誇りの持てる職業にしたいとの思いで、塩田卓嗣さん(46歳)は労働組合の結成に関わった。阪急交通社の子会社、㈱阪急トラベルサポート東京支店(東京都港区、田中和男支店長)に組合が結成されたのは2007年1月のことである。

 組合は会社側と交渉を重ね、過去2年にさかのぼっての雇用保険の加入などを認めさせた。三田労働基準監督署への「残業代未払い」申告もおこない、これを受けて同労基署は会社に「是正勧告」つまりは「残業代を支払え」と勧告。会社はこれに従わず、東京地裁での労働審判でも同じく「残業代を支払え」との決定が出されたが、これも無視。残業代の支払いをめぐっては現在、裁判になっている(その経緯は前述の本誌2月20日号に掲載)。そしてその本誌が発売された2月20日、会社に対して三田労基署から2度目の「是正勧告」が出された。しかし、会社は現在に至るまで無視したままだ。

 こうして組合側の攻勢が続く中、今回の問題は起きた。阪急トラベルサポート東京支店が、本誌の取材に応じた塩田卓嗣さん(全国一般東京東部労働組合阪急トラベルサポート支部委員長)を、事実上の解雇処分(アサイン〈仕事割り当て〉停止)にしたのだ。本誌4月3日号、同10日号の「アンテナ」欄などで報じ、NPO法人労働相談センターのWebサイトにある「旅行添乗員」コーナーでも紹介しているので、詳しい経過についてはそれらをご覧いただきたい。

 つまり、組合側の主張は行政と司法から認められ、会社側はそれを無視し続けている。追い詰められた会社側は紛争を恣意的に拡大させ、組合側の攻勢に歯止めをかけようという意図があるように見える。組合側は近く、東京都労働委員会に不当労働行為救済申し立てをおこない、解雇の撤回などを求めていく。この闘いには私も直接関わっているが、それについては次に述べる。〈つづく〉                                                                                   

(2009年4月15日・片岡伸行)