きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

【ざっくりメディアリテラシー講座】 なんだ、結局『新潮』も『文春』もトヨタ擁護記事か

トヨタ・レクサスの暴走問題、プリウスのノンストップ問題でトヨタが戦後最大と言ってもいいほどバッシングされる中、先々週来、電車に派手な中吊りが。

2月18日付『週刊新潮』の特集記事で<特集 普天間の仇をリコールで トヨタは生け贄というアメリカ謀略>。これを見た人は、アメリカの謀略でトヨタがはめられているのかもしれないと思うわけですね。

実際に中身は、米国で儲けすぎたトヨタは、GMがこけたため浮き上がってしまい叩かれているという記事。実際の不具合の真相にはなんら迫らない特集と言うよりは、トヨタのまるで心の叫びを代弁したような記事である。わざわざカナダ紙などを引用しなくてもいいのに。バンクーバー五輪とひっかけたのかな。ともかく、さすがにこの時期、トヨタ問題に触れないわけにもいかずつくった記事なのでしょうが、人権くそくらえのえげつない『週刊新潮』にしては取材もなにもなく甘すぎるのでは。

一方、2月18日付『週刊文春』は<「450万台リコール「安全神話」の崩壊 トヨタはどうなる」>と巻頭特集。記事は外部発注でジャーナリストの井上久男さんが巻頭記事を執筆。井上さんに私は面識はないがお名前は聞いたことがあり、webであらためて検索すると『朝日新聞』で自動車担当をしていたとのこと。現在はフリーランスで、自動車評論家というよりは企業評論家、経済ジャーナリストということなのだろう。

記事の内容は、内部情報をまじえつつ、豊田章男氏がダボス会議にでかけてしまったエピソードなどを紹介し、辛口テイスト。ただ文末最後には、「弁護するわけではないが」と「章男社長は、去年就任したばかり」と弁護している。そのほかの記事の柱は人とカネのある『文春』らしくトヨタ車の暴走告発を紹介している。

さて、翌週である。

『週刊新潮』はトヨタはパスですね。

一方、『週刊文春』は扱っていますね。おやおや。<トヨタのプリンス豊田章男の「真実」>という小特集記事です。

この記事は<平社員だった章男さんは「いじめで出社拒否になった」と私に打ち明けた」>とネガティブ風な極秘エピソード?を煽り文句に使っている。これはと期待してページをめくるが、内容を見てみればさすがトヨタ自動車取材の第一人者、リアルタイムで社内事情をご存じと思うものの、先の煽り文句が最大の告発的エピソードだったということに気づくかされる。

暴走やリコール問題はさておき、渦中の人物”こども社長”の素顔を佐藤正明氏が執筆するという。内容はどうなのか。佐藤氏は、弊紙とは違う意味でトヨタ本で喰ってきた人物(自虐的苦笑)。元『日本経済新聞』の自動車担当記者である。ベテラン記者を使うのが『文春』は好きだな。

『日経』は財界広報誌とも言われるが、そのトヨタ担当記者・佐藤氏は記事中で豊田章男にアドバイスしたと書き、「経験不足のまま社長になった」などと指摘。上から目線かつトヨタへの愛があふれる辛口の指摘だ。社長との親密な関係を強調しつつ苦言も呈すれば、社長派もしくは反社長派のトヨタ社員も納得するだろう。さすがベテランの仕事。

記事は後半は、神谷一族の話など30年以上前のスクープ合戦の話。なんでしょうか、これは。その昔、トヨタ自動車はトヨタ自販とトヨタ自工に分かれておりました。トヨタの源泉は「販売のトヨタ」と言われように、その販売力。で、その販売力を握っていたのが”販売の神様”とまで言われた神谷正太郎率いるトヨタ自販だったのである。自動車なんて中身に大差ないので、販売の力でしょうということですかね。その意味で『読売新聞』みたいですな。酒屋さん的ないろんな零細小売業が自動車販売店に転業したみたいですからね。その意味ではセブンイレブンオーナーにも似ているのか。

さて、これが壮大な伏線であることを期待しつつ次号を待とう。追及路線から脱輪しているようですが。

いずれによせ両誌とも1月、2月に表4(裏表紙)にトヨタの広告を入れていましたから。これ以上たたけば広告が入らなくなる、でもトヨタは扱うという中での誌面づくりなのでしょう。

『週刊金曜日』は、読者のみなさんの定期購読が中心ですので、その点の配慮をしなくてすみますが。ありがたいことです。

ちなみにトヨタ自販の神谷一族に関しては清水一行さんの小説『一億円の死角』(光文社文庫)お奨めします。