『1Q84』は量子力学で読み解けるのか
2010年4月3日10:51AM|カテゴリー:マカロニほうれん総研|Hirai
『1Q84』を始めとして、村上春樹作品は一貫して平行世界が扱われている。
その読み解きを広げた作品として、批評家・東浩紀が書いた小説『クオンタム・ファミリー』(新潮社)を週末に読んだ。平行世界をより複雑に深く描いている作品である。
『クオンタムファミリー』は「量子家族」という直訳になるように、同著では量子と家族がテーマになっている。量子計算機(量子コンピューター、クオンタムコンピューター)の話を軸に、先駆者たる村上春樹にも言及している(以前も『新潮』「キャラクターズ」に共著で書いていた”ロリコ”ンなどが東作品には独特の味付けとなっている)。
村上春樹の批評本がいろいろ出たが、私は『クオンタム・ファミリー』を読むことをお薦めする。同著のある種の”暴露”によって不可思議な村上ワールドが古典的な曖昧な代物という印象にすらなりうる。とはいえ、村上春樹には独特の文章の力があるから、春樹ワールドはまだまだ滅びないだろう。
『クオンタム~』を読んだ成果は量子力学、量子計算機という論理物理学の話にはまったことだ。関心のある人は『クオンタム~』や『1Q84』を読了後、量子物理学の入門書へと読み進めてほしい。
量子計算機と古典的計算機、多重世界解釈、RSA暗号と量子暗号、トンネル効果、スピントロニクスなどのキーワードが扱われていますが、情報工学への理解を深めてくれる面白い世界がある。
入門書を何冊か読みましたが、最近は便利なものでyoutubeで講義を視聴できる。入門書もさることながら、状況が許せば、こちらがお薦めかもしれないですね。
●慶應義塾大学チャンネルの「量子コンピューター授業#8」(2005年3月22日~24日)
http://www.youtube.com/watch?v=wBilQWKd1yU&feature=SeriesPlayList&p=B1324F2305C028F7
量子コンピューターの歴史について『日経サイエンス』の古田彩さんの解説。約1時間27分。
マンハッタン計画にも参加し、1967年にブラックホールを命名した物理学者のジョン・A・ホイーラーは”EVERYTHING IS INFORMATION”と言ったそうだ。
さらに、量子計算機の提唱者の一人、デイビッド・ドイチュは”物理は情報”とも言っている。
物理学は情報と出会い、相乗的に関係が深まっている。