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金曜俳句の投句一覧(5月末締切、兼題「蛍」)

「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧

選句結果と選評は『週刊金曜日』6月25日号に掲載します。

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【蛍】

人の世にそむきてしのぶ螢影
今宵舞ふ源氏も平家も泡沫(うたかた)に
歓声のうしろへ蛍遠ざかる
感傷を蛍火が燃やす荒れ野
ホタル照らすきれいな川はもう少し
ほうたるをのせてやさしきたなごころ
夏蛍ほの明るさに君を見る
源平を子らに話して蛍狩
解き放つ想ひの丈に蛍とぶ
蝦夷の地の蛍の命短くて
蛍火やあの世この世を往来(ゆきき)して
失語して少年佇てり蛍籠
若き男に螢火ほどの抒情かな
エコロジー活動といふ蛍狩
北上のどこへも行けぬ蛍かな
夏近し蛍たわむる人世(まま)の夢
掌の中の蛍の穿つ生命線
蛍のぼるガザの子何を見ているか
見下ろせる庭はホテルの蛍籠
淋しさの後ろより来る蛍かな
刈り立ての麦藁(むぎわら)編んで蛍籠
なき人の浮かんでは消え蛍狩り
夜の角をすいと曲がり蛍消ゆ
恋蛍闇のしゞまに燃へにけり
哀しみと云ふ聖域に蛍飛ぶ
孫をつれ追うに忙し蛍狩
何でもにほひ嗅ぎたがる子や螢の夜
ひかり追い時を忘れて蛍狩
てのひらに飛び交ふ螢六・一五
たわむれる光の中に命知る
蚊帳吊りて蛍と共に眠りけり
衛星の懈き飛行や蛍の夜
基地撤去署名終わりて初蛍
螢火の人に濁りてゐるやうな
君知るや螢ぶつかるほどの国
蛍籠かざし喜ぶ孫の顔
草むらに寝転び仰ぐ蛍かな
はなやぎて寄りそうきわみ螢火なれど
10階に浮かぶ蛍の名を聞こう
ほうたるを放つ北国水源地
蛍ひとつ己が火に会ふ池の面
麦稈(むぎわら)の蛍籠入れ一夜だけ
蛍狩り飼育小屋まで案内され
霧吹きで命を延ばす蛍かな
わが恋の影のやうなる螢かな
蛍火におのが業火を確かむる
蛍火を呼吸合はせて見てをりぬ
特攻機蛍となりて帰還せり
蛍火に御魂の在り処いざなはれ
座禅会せし廃屋の蛍かな
青黒の闇やはらかく蛍狩
掬いたる水薫り立つ蛍かな
蛍の夜眼と眼が逢ひてより黙す
日が暮れて蛍の明りに誰思う
蛍かり昔の乱舞今いづこ
螢など未だ語らず越の春
螢火や今一生のどのあたり
軟派して館に連れ込む蛍の夜
君に会えぬ螢火ほどのいのちなりとも
蛍の夜鈴慕(れいぼ)の音色と鹿の遠音
発光体LED(エルイーディー)より美しい
雨上がり濡れた大地にかすかな灯(ひ)
蛍火がふわりふわりと舞い踊る
ひとときを幽玄の世に蛍狩
まろびたる物のかたちや夕蛍
ふるさとの過去も忘れぬ旅ホタル
ひとつ昇りひとつ潜みし蛍かな
蛍火や父の背遠く追ふて行く
蛍火のさながら戀のさまよへる
蛍消え「好きになってもいい」と問ふ