金曜俳句の投句一覧(5月末締切、兼題「父の日」)
2010年6月14日8:04PM|カテゴリー:櫂未知子の金曜俳句|admin
「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧
選句結果と選評は『週刊金曜日』6月25日号に掲載します。
【父の日】
雨上り届く父の日プレゼント
ほこり付く父の日の無事傘・ベルト
好々爺とは父の日の父のこと
父の日やピカソの恋の新しく
印して尚父の日を忘れをり
能面を打つ父の日の父の顔
颯爽と父の日暮れてゆく港
父の日やいつか無頼を遠くせり
父の日や髪染めし母は名のみて
父の日や空き家のままの父の家
父の日や遠近両用眼鏡の線
父の日の父と子猫を挿みをり
父の日の机上砂丘の夢を見て
父の日にシベリア抑留語る父
父の日や父亡き孫に読み聴かせ
父の日や考にはひとつ貸しがある
父の日や怠惰なる我が血の流れ
父の日の日輪を曳く水際かな
父の日やどうだこの頃元気かい
父に日は斯くてまぼろしひとりざけ
父の日やポプラの絮の舞ひ初むる
父の日や夫婦で合唱千の風
父の日や居酒屋いっしょに行きたかった
父の日に亡母の姿がよみがえり
父の日やそんなにしゃべられてもなあ
父の日や独り留守居の午睡かな
父の日の父一人だけ埒もなし
父の日の天気ばかりを云ふ電話
父の日や見初めたとこから話してる
父の日の在家信者となりにけり
父の日の四頭身のクレヨン画
「父の日」の母より劣る贈物
父の日や自転車の荷台母積んで
父の日や葉巻の香りほのかなり
父の日に父亡き孫とボール蹴り
背中には数えきれない人生訓
父の日の父のソファの匂いかな
母に継ぐ平等の日でもその軽さ
父の日の正午を告げる古時計
生姜山盛りに牛丼父の日暮る
就活の子がいて父の日忘れられ
父の日や子に言ひ負てうなずけり
父の日にパパをしているをとこかな
父の日やどうだ元気かお前もな
父の日のコロッケパーティ茶の間かな
父の日の婿に馬油(まあゆ)を進呈す
父の日や声は届かぬ向ふ岸
父の日の話題鬼籍の母のこと
父の日や粋でモダンな明治の子
父の日の無き子が走る背を丸め
亡き父にまた近づきぬ三十歳
父の日やベンチに座して親子亀
幼父親父にまた近づきぬ
父の日や息子集いて父五人
父の日に父立つそこが中心ぞ
鉄槌に凹凸のあり父の日や
父の日や流れ作業に父がある
父の日も禁を破らぬ戦中派
父の日や偉ぶることの無きお人
父の日に楽爪(らくづめ)させぬ娘居て
父の日やどこへ行くにもショルダーバッグ
父の日も辺野古の浜に座り込む
父の日もゴルフしてゐるパパであり
父の日に母へは大き贈りもの
父の日や父は毎日父の日だ
父の日に綽名で声のかけられし
大器(おおうつわ)一生懸けても超えられない
動物園馬の瞳に父思ふ
父の日は自転車修理頼もうか
父の日を一言で言ふありがとう
ぬくもりの子犬と土手と父の日と
父の日や父から離れ言ふてみる
※当季雑詠は募集していませんので、兼題句以外は基本的に選句の対象となりませんが、
応募句を下に掲載します。
【その他】
老いを受け幸おとずれる春花のように
バラ活けて老いも楽しきひと日かな
荒梅雨の中なる無人駅に佇つ
水底の魚しづかなり五月闇
一輪の野バラにわが身を照らされて
家庭より独居楽しき老後かな