金曜俳句の投句一覧(6月末締切、兼題「ビール」)
2010年7月7日7:05PM|カテゴリー:櫂未知子の金曜俳句|admin
「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧
選句結果と選評は『週刊金曜日』7月23日号に掲載します。
【ビール】
割れ声の団地まつりのビール売り
谷川をごろんと潜る缶ビール
藪草の天ぷら旨し麦酒かな
休肝日知っていながら缶ビール
冷蔵庫「ノン・アルコール」溜まりけり
縁台へ遠き異国の黒ビール
注(つ)ぎ亘り干杯待たせ長話
産直の地ビールブロンズ色の泡
ビールまでたどりつきたる家路かな
一缶のビールが今日の全てだった
誕生も死も泡沫のビールを飲む
生ビール重ねしんみりしてしまふ
飲むのには作法のなくて生ビール
寝静まる今日の終わりのビールをポン
ビールまであと何十分子守唄
冷蔵庫父のはこれだけよビール
妻の留守禁忌のビール密の味
娘飲み残せしビール朝の陽に
日長の日のビール五臓にしみわたり
「特許許可局」を聞きながら飲む夜のビール
ブブセラに合わせてビール飲み放題
起業せし友とベルギービールかな
のどごしをごくんごくんとビールゆく
街騒を遠きものとしビヤホール
腹の立つこと飲み込んでビアガーデン
指切りでビヤガーデンをねだる夏
二十代と一緒に入る麦酒党
アコーディオンベルマンスポルカビアジョッキ
黒ラベルバッグに詰めてスタジアム
帰省する息子を待つや缶ビール
客船のあかり瞬くビヤホール
草薫る天地のあはひビール酌む
黒ビール泡に四つ葉のクローバー
そら豆に塩振りて待つビールかな
湯上りのビール幸せ身に沁みる
定年後朝昼晩の冷ビール
濃藍の夕べに沈みビール干す
ビール屋が歓ぶだけのビール掛け
におう汗ビールは喉でと言ったひと
気の置けぬ喧嘩で増えるビール杯
ビール缶500飲み切れぬこの齢(よわい)
缶ビール「地下室の手記」読みながら
老人のビール片手に長咄
七三に分けてビールの泡と恋
苦い顔大人の味を試し飲み
あすは血にあさって肉に麦酒のむ
アルコールフリーのビール休肝日
ゆふぐれのうみのにほひやビール飲む
夏の子はそわそわとビール贈りくる
ビール飲む女らの声草千里
琥珀なる麦酒ひと口夕げかな
原節子どこへ消えたかビール干す
今生はビールのごとし方丈記
乾杯のジョッキ重くて嬉しくて
タンメン来コップに残る麦酒の泡
薀蓄聞く瓶が麦酒で缶ビール
ビール飲めと旅人われにつぎくれし
トリビーの後はいろいろ呑み仲間
ビールでは半分だけよ自己逃避
泡沫のような体だビールを飲む
今年こそビール片手に丘に立つ
父眠りぬ母が飲み干すビールかな
ともすれば薬の如き麦酒かな
ビヤ樽を担ぎ上げたる腕かな
呑む前の干杯だけはビールかな
季(とき)移り筑後平野もビール麦
ビールでも注ぎたしさせぬ頑固者
麦酒のこはくの泡のほろ苦さ
黄昏をまちかねて飲むビールかな
大ジョッキ干してはやぶさ宙を翔
工場の祝儀初(そ)め締(し)めビールだけ