大阪からの手紙(2)
2010年8月26日5:30PM|カテゴリー:シジフォスの希望|Kataoka
シジフォスの希望(42)
赤堀政夫さんからの「ご挨拶」の一文は、自らの裁判と確定死刑囚となった無念についての記述に進む。以下、抜粋。
〈……それ以降、私とは何の関係もないところで裁判は、第一審・第二審と進み、1960年12月15日最高裁で死刑確定囚にされました。
いまも、悔しくて悔しくて、仕方ありません。
この日以降、死刑確定囚として、苦難の日々を送ることになりました。
平成元年1月31日(1989年1月31日)無罪が確定しました。
ようやく解放されました。実に34年8カ月間人生を奪われたのです。〉
それから記述は、「毒カレー事件で不当拘禁されている林眞須美さん」という呼びかけとともに、続く。
〈眞須美さんには「自白調書」がないと聞いています。
また、裁判所が「事実認定」した「証拠」にも、大きな疑問があると聞いています。実に疑わしい「事件」だと思っています。
法原則が、「疑わしきは被告人の利益に……」であれば、即座に釈放されるべきでしょう。
現在、大阪拘置所の眞須美さんは10年目の不当な拘禁生活を強いられています。私は一日も早い解放を願わずにはおれません。〉
〈冤罪死刑囚の悲劇。
第一に……本人の生命が危機的状況を強いられます。「憤り」「悔しさ」「うらみ」噴出します。日々の感情は烈しくゆれ動きます。人は堪えられるものではありません。
第二に……それにつながる家族も、また、その渦に巻き込まれ悲惨な生活に強いられます。
第三に……真犯人を取り逃がします。
第四に……殺された被害者の「霊」は決して慰められません。
こうした悲惨さは誰もが受け手はなりません。
また、させてはならないのです。〉
そして最後に、「全国民への訴えかけ」としてこう結ばれる。
〈私は無力ですが、眞須美さんのため、経験を生かして何らかの力になりたいと思っています。
皆様も、眞須美さん支援の輪を広げて、全国民へ訴えかけてくださることをお願い申し上げます。
有り難うございました。
2007年12月9日 赤堀 政夫〉
以上が、大阪から送られてきた封書の中にあったコピーの内容である。この一文を送ることで林眞須美さんが何を伝えたかったのかはお分かりであろう。蛇足のような説明をこれ以上書くことはやめる。
最高裁判決後、09年7月には和歌山地裁に再審請求書が出され、今年3月には眞須美さんの毛髪再鑑定の請求もされている。1998年7月25日に起きたカレー事件はまだ終わっていない。
(2010年8月26日・片岡伸行)