秋の夜長に考えた、冬虫夏草、ドクダミ、そしてCOP10、TTP
2010年11月5日9:00AM|カテゴリー:多角多面(発行人コラム)|北村 肇
<北村肇の多角多面5>
中国の知人から冬虫夏草をもらったので、梅酒よろしく、安いブランデーにつけて、毎日、チビチビと飲んでいる。夏の終わりに、ひどい湿疹が耳の周りにできたときは、ドクダミの汁を塗ってみた。ノドが弱く、以前は市販のうがい薬に頼っていたが、いまはマヌカハニーをなめている。ニュージーランドでしかとれない薬効性のある蜂蜜だ。こう書いてくると、西洋医学を全否定しているようだが、そんなことはない。実際、湿疹については結局、皮膚科の医師に薬剤を処方してもらった。小学生のころ結核にかかり、かなり強い抗生物質を服用することにより、命拾いした経験もある。ただ、出来る限り、自然の中で自然とともに健やかな体を維持したいと願っているのだ。
その根底にあるのは、「宇宙は完結している」という私なりの発想である。同様に地球も一つの完結した世界。ならば、そこで生まれた「負」は、もともとそこに存在している「正」により解消できるはず。病を治癒する「何か」も自然の中にあり、化学的な生成物に頼らざるをえないのは、残念ながら、まだそのすべてを発見できていないからではないのか、と思ったりする。
「科学の進歩」というと、何か新しい化学的物質の発見やら、その機序の解明といったことが頭に浮かぶ。それはそれで重要である。だが、どこかに微妙な違和感が残る。生命と宇宙、生命と地球の一体感が後景に追いやられている気がするからだ。最も重要なことが、「迷信」「非科学的」の一言で排除されてしまうのはよろしくない。もっとも、百害あって一利なしのインチキオカルトがブームだったりするので、その悪影響もあるのだろう。
話題は少し飛ぶが、「生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)」が名古屋市で開かれた。国連会議ではお決まりの「先進国対途上国バトル」が繰り広げられたあげく、玉虫色の決着でシャンシャンとなった。政府内では「環太平洋戦略的経済パートナーシップ協定(TTP)」を巡って喧しい議論が戦わされている。農水省を中心に「日本の農業が崩壊し、自給率はさらに下がる」という反対論が出ている。いずれも根底には「自然を守る」という前提があるはずだが、実際には、政治家、官僚、経済界が自分たちの利益追求を目指して拳を振り上げているようにしか見えない。
冬虫夏草はもちろんのこと、ドクダミだって、都心ではなかなか見つけられない。環境が破壊されていく現状で、「自然の中で自然とともに健やかな体を維持する」のは夢見事になりつつあるのかと慨嘆してしまう。秋の夜長、人間にとって本当に大切なものとは何か。単純だが、いまいちど、そのことに思いをめぐらせてみたい。(2010/11/5)