菅首相、いまこそ平和外交に立ち上がりなさい
2010年12月2日11:51AM|カテゴリー:多角多面(発行人コラム)|北村 肇
<「北村肇の多角多面」9>
なんで、こういつも絶妙なタイミングなのか。「風が吹けば桶屋がもうかる」ではないが、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)が世情を賑わすたびに、日本の保守派(特に日米同盟堅持派)に利益がころがりこむ。おそらく沖縄県知事選にも影響を与えたであろうし、近く出される防衛大綱の議論にも響くはずだ。武器輸出三原則の見直しが進んでしまうかもしれない。
さらにイライラするのは、「武力には武力を」という態度が真っ当なものとされかねないことだ。北朝鮮の行為を容認することはできない。しかし、それを引き起こした「原因」についても目を向ける必要がある。自国領土から肉眼で見える海上で軍事訓練を展開される気分はどうなのか。韓国政府もまた「力」を誇示していたという事実を見逃すべきではない。とどのつまり、朝鮮戦争を終結しない限り、緊張関係の解消はありえないのだ。そして、その解決の手段を「武力」に頼るべきではない。
米国は砲撃事件を受け、直ちに韓国との合同訓練を実施した。これは同国にとって渡りの船だ。中国の南シナ海への進出に対し、米国は苦虫をかんできた。黄海(西海)での米韓合同訓練を何度か試みたものの、そのつど中国の猛反撃にあい断念してきた。だが、今回ばかりは格好の大義名分が出来たのだ。全長333メートルの原子力空母「ジョージ・ワシントン」は北朝鮮を威嚇しただけではない。中国に対する強烈なメッセージである。
さらに見落としてはならないのが、同空母は横須賀から出航したという現実だ。日本は確実に、未だ休戦状態である朝鮮半島の緊張関係に当事者として関わっている。そのことが明々白々になったのである。
すでにマスコミは「ますます日米同盟が重要」という論調で報じている。日米同盟とはすなわち、日米軍事同盟のことだ。対中国戦略の一環として日本列島の米軍基地化は一層、進み、思いやり予算どころではない多額の税金が「米軍再編」に注がれるだろう。
さて、日本はどうするのか。今こそ、憲法9条を活かさない手はない。米国型武力外交とは真逆の日本型平和外交を確立するのである。民主党政権にとって、こんな絶好の機会はない。武器輸出三原則の見直しなどとバカなことを言わずに「自分たちは自民党政権とは違う。憲法に基づき仲裁外交を目指す」と宣言べきだ。菅直人首相に言いたい。もっと市民を信頼しなさい。あなたが平和外交に立ち上がれば、多くの人間がともに立ち上がり、支えますよ。(2010/12/2)