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警視庁の天下り問題2 警視庁管内の金地金賞品が風適法違反の疑い

 

 遊技場と買場と景品問屋

一般のパチンコ遊技者は都道府県レベルでホールを中心としたパチンコという世界をのぞいている。その世界は遊技場(パチンコ店)、買場、景品問屋の三者から成り立っている。

    
 一つは、つまりパチンコ遊技場である。

お客さんは、ここで1玉4円や1円で買い(といってもだいたい1000円単位であるが)、遊ぶ。出玉は持ち帰ることは許されず、金地金などに交換するか端玉はチョコレートなどの景品に交換されている。

   
 二つめは、パチンコの換金景品を交換する買場である。

お客さんは、遊んで増えた球をホールで金景品や特殊景品に交換するが、この目的は換金である。買場は、金景品などを現金で買い取る。東京では金景品は0・3グラムが1500円、1グラムが3500円、4000円、5000円と異なる値段で交換されている(写真参照)。

それぞれプラスティックケースに小さな金地金(小判のようなものというか金の固まりです)が入っているわけだが、このケースに目印となるシールを貼ることで同じ大きさの金なのに金額を変えて換金している。本来は景品は「等価性」が問われているので、同じ賞品なのに金の価値が違ってくることは等価性がないということになる。

     
さらに、その貼られているシールについてはシール自体に価値があるということになる。つまりシールが有価証券だということになる。有価証券となれば風適法違反である。

この金景品有価証券疑惑は実はかなり重大な問題であり、業界や警察はこの疑惑を指摘されることを警戒している。
この仕組みを導入したのが警察と業界であり、現在運営しているのが警察OBということになるとも業界では言われている。だが、お互い共犯関係になってしまっているので、よほどまともな経営者でなければ自浄作用は働かない。

買場は買い取った金景品や特殊景品をさらに売却するわけだが、パチンコ店がこの買場から直接買い取ることは禁止されている。事実上、パチンコ玉を換金していることになってしまうからだ。

    
風適法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)23条にパチンコ遊技場の禁止行為が列挙されている。

 

(遊技場営業者の禁止行為)
第23条 
第2条第1項第7号の営業(ぱちんこ屋その他政令で定めるものに限る。)を営む者は、前条の規定によるほか、その営業に関し、次に掲げる行為をしてはならない。
1.現金又は有価証券を賞品として提供すること。

2.客に提供した賞品を買い取ること。

3.遊技の用に供する玉、メダルその他これらに類する物(次号において「遊技球等」という。)を客に営業所外に持ち出させること。

4.遊技球等を客のために保管したことを表示する書面を客に発行すること。

 

とはいえパチンコも換金をしていることから実質的にギャンブルそのものであるが、ソープランドの管理売春同様、警察のお墨付きを得てどうにかこうにか娯楽の範囲として存在している。こういう状況でパチンコ業界も営業しているのはイヤなのでカジノ法案などを成立させて、パチンコ換金を合法化したい人たちもいる。だから、民主党にもちゃっかりとカジノ議連などがあって、立法化をちらつかせて業界に威光をひからせている。

     
そして三番目の問屋。

一般のお客さんが接することはないだろうが、問屋はホールにチョコやガムなど景品となる品物を卸したりしている。その一方で、問屋の組合は1グラムと3グラムの金地金の景品をホールに卸している。ホールではお客さんが稼いだ出玉を金地金に交換する。

      
この金地金はどうなるかと言えば、買場から買い取るための会社は問屋の協同組合が設立して運営している。東京でではTUCという会社だ。金地金はこのように結局、外部へ流出することは予定されておらず還流されるようになっている。

       

わかりにくい仕組みになっているが、このわかりにくさ、複雑さがグレーゾーンで営業を続けるパチンコ業界を象徴しているとも言えるだろう。

      
業界の常識

パチンコ店、買場、問屋を金賞品が循環する、この金景品の還流システムは「新東京流通システム」と言われている。

東京都のパチンコ業界が熱心にやっているが、その理由として警視庁が全面協力してきたからだと業界では言われている。

その証拠に、たとえば5月初旬に「問屋研修会のご案内」という紙が、問屋に送信された。

送信したのは東京商業流通共同組合(東商流、理事長は高橋雄豪)。

東商流とは、パチンコに景品を卸す問屋の協同組合である。このような協同組合は共通で購入したり、ルール整備をしたりして同業者を助け合う組織である。紙は6月17日と20日に研修会をするから問屋経営者に出席を要請するという内容だった。
それは以下のように記されていた。

「さて、新東京流通システムが始まって以来20年余が経過いたしましたことから、今回は講師に元警視庁生活安全部長の石田唱司先生をお迎えすることにいたしました。石田先生は、新東京流通システム開始時から行政の立場で関与されておりましたことから、導入時の歴史及び今後の展望等についてお話をしていただく予定であります」

これを読めば出席しようとしている景品卸問屋は誰しも、警視庁がともにこの金還流システムをつくりあげてきたと考える。

同じようなことをある警察OBも述べている。

元上野警察署長の道本佳治氏だ。

道本氏は都内パチンコ遊技場の協同組合である東京都遊技場組合(都遊協)の専務理事だった人物である。協同組合の専務理事は「実質的な経営者」だと業界の人から聞いた。つまり、東京都のパチンコ遊技場の業界団体は、この警察OBが仕切っていたという人までいる。

       
道本氏は今の東京システムがおかしいと主張している金地金商に約3億円の損害賠償訴訟を起こされている被告だ。

この元上野警察署長の道本被告は、パチンコ店の組合である東京都遊技業共同組合(都遊協)の専務理事だったが、本誌3月4日号が訴訟の件を報道した後に専務理事を任している。

         
上野警察署元署長と警視庁の見解

その元上野警察署長だった道本はその民事訴訟の準備書面では次のように述べていたのである。

<「都遊協等と警察が入念な協議を行い、買い取り対象となる景品を一般に市場価値があり貴金属店での売却が可能な金地金を用い、またいわゆるショップが買い取った景品を、問屋が仕入れ、パチンコ店に納品する前に、集荷場で互換することで、同じ景品が再び同じパチンコ店に還流しないようにするという景品システムを考案した(以下「現行景品システム」という。)>

だが、そうすると景品の買取りシステムづくりに警視庁が関与したことになる。パチンコ店が買場から直接、景品を買い取る行為は風適法23条で禁止されている。

        
上記の仕組みはこれには直接街頭しないとゆえに、この閉鎖的な金還流システムは違法性が高い。

警視庁が関わっていたとしたら、問題にもなりかねない。

しかし警視庁がまったくかかわっていないとしても都合が悪い。警視庁が関与したということで、この金還流システムをパチンコ業界で拡大させてきた面があるからだ。警視庁が暴力団排除のためにこの金還流システムをすすめてきたということは業界の常識になっている。まったく関わっていないとすれば、パチンコ業界へのにらみも弱まってしまうかもしれない。

 ところが、この点について5月20日に警視庁に質問したところ(実際のところ生活安全部を取材させろと言ったのだが、雑誌担当広報の対応となってしまった)、警視庁総務部広報課は5月24日に「当時の記録がないので分かりません」と、肯定も否定もしないというグレーな回答をしてきたのである。

 ずるいですな。 

     
 (さらにつづく)