金曜俳句への投句一覧(8月26日号掲載=7月末締切、兼題「海の家」)
2011年8月4日6:04PM|カテゴリー:櫂未知子の金曜俳句|admin
「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です
選句結果と選評は『週刊金曜日』8月26日号に掲載します。
どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。
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【海の家】
ギブスの子荷物番なり海の家
あれほどに砂嘴の延びたり海の家
きよちやんとおやじ呼ばれて海の家
お転婆が茶を注ぎにくる海の家
電車降り海の家まで歩き出す
海の家開けっ広げの火傷跡
潮の香やホームから見る海の家
いつまでも海の家にも砂嵐
潮騒に泣く赤子と海の家
バイトせし海の家けふ客として
曇天へ旗高々と海の家
昼顔の咲き乱るるや海の家
海の家じしんを忘れおよぐこら
雨だから砂に埋められ海の家
海の家松の林の浜近く
海の家夜は潮騒聞くばかり
砂の色無数に変わる海の家
横書きのメニューおほくて海の家
潮風が一番客の海の家
場違いに愛しき子も来し海の家
婿候補じんべで来たる海の家
書割の海中青き海の家
海の家今でも大事なものがある
海の家磯の匂いにおでんかな
泣き声が先に出にけり海の家
乞食(こつじき)を追ひ返したり海の家
砂払ふ足裏白き海の家
海の家若者の声ひびり(い)たる
海の家くびれにちらと白い肌
海の家髑髏マークの少年と
海の家出逢いし頃の風の音
看板に似合はぬ旨さ海の家
海の家軒下暗し浜碧し
黙祷の如き波来る海の家
本名は誰も知らない海の家
松林水着干したる海の家
青春が飛び出してゆく海の家
しんさいのがれきの山まの海の家
海の家浪人生のいねむりし
みぎはより海の家まで足の裏
海の家スピーカーからの砂が鳴る
イタリアの国旗を掲げ海の家
眠りたるひと残されて海の家
重なりし二つの虹や海の家
人格を脱ぎ捨ててゐる海の家
海の家砂ことごとく濡れてゐて
海の家砂にまみれた裸体群れ
海の家烏賊焼きラムネ掻き氷
海の家いろいろなもの吹かれゐる
海の家また傷つきて戻り来し
みていてもまだ歩きたる海の家
失恋もカラリと干して海の家
目の前を海の家にも向かいだす