きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

金曜俳句への投句一覧(9月23日号掲載=8月末締切、兼題「夜学」)

「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です

選句結果と選評は『週刊金曜日』9月23日号に掲載します。
どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。

『週刊金曜日』の購入方法はこちらです

amazonhttp://www.amazon.co.jp/)でも購入できるようになりました。予約もできます。
「週刊金曜日」で検索してください。配送料は無料です。

【夜学】
因循の振り子時計に夜学棄つ
校長は狸のお腹夜学の子
パン一つ分かちあってる夜学の子
夕食もコッペパンのみ夜学生
一つ消し見つめる夜学の予定表
あの頃は夜間中学巾きかせ
夜学にも体育祭あり靴を買う
開拓の偉人の「遠友夜学校」
白髪も茶髪もゐたる夜学かな
履歴書の一際太き夜学の行
挨拶も多国籍になる夜学生
気を抜けばついいねむりす夜学かな
花柄のブラウスで行く夜学かな
夜学にて学ぶ古典やいとをかし
着席の夜学子少し諦めつ
教授乗せ車で帰る夜学生
夜学とて教師の声の高らかに
夜学の灯守る守衛の閉じる門
校庭の一隅明かし夜学の灯
真つ新の母校にまみゆ夜学道
遅れ来る夜学子の席最前列
鉢巻をする夜学の子ゆり起し
聴講の全員茶髪夜学生
夜学子の机に残る油染
月が友ひとりで通う夜学かな
油膜ある水たまり踏み夜学生
駅で会いコンビニで見し夜学生
七十の手習い始め夜学人
夜学生雨滴細かくゆたかなり
詰襟の後にカラフル夜学生
貧乏と書けて喜ぶ夜学生
硝子戸の密かに揺るる夜学かな
口にペン片膝ポンと夜学女子
夜学からコンビニまでの沈思かな
見ていても頭に入らぬ夜学かな
夜学棄つ月がとつても蒼ひから
夜学の子後の席にかたまりて
教授より威風堂々夜学生
ひげづらのどこか見た顔夜学生
野球帽夜学の棚に忘れられ
雨垂れの音数えいる夜学の子
硝子戸に闇のぶつかる夜学かな
背をかがめ前髪長き夜学生
打向ふ夜学にふかき灯かな
夜学子に日の丸昏く垂れてをり
眠たくて夜学と疲れ夕涼み
夜学果つ束の間ゆらぐ静寂かな
かの国の言葉も交え夜学生
校門の木々の揺れゐて夜学校
髭面も白髪もいる夜学かな
昼よりも教師優しき夜学かな
下駄箱に靴もまばらな夜学校
偏屈も頑固も居りぬ夜学かな
すぐ決まる約束軽き夜学生
おほらかに点呼始むる夜学の師
立ち話し途中で消える夜学の灯
白墨の音のみ高き夜学かな
コンビニの弁当買って夜学かな
夜学の眼自販機の灯に後光見ゆ
夜学果つ黙り通しの一日と
夜学してふと気がつけば妻のお茶
定時制昼間のことは忘れおり
聞き入りし夜学の窓の琥珀色
夜学生鞄に袋菓子もあり
父子して燈火親しむ夜学かな
夜学子の光と闇の行き戻り
不夜城のごとき夜学の中学生
温故知新夜学の帰路にラプソデイ
夜学の子朝日を浴びていさぎよし
居眠りを許されてをり夜学生
夜学には人声静か月の貌
夜学子をほのととらへし街あかり
パソコンを囲む夜学の老人会
夜学終え坂を登りて終電車
彫るがごと刻むがごとく夜学の子
夜学生笑ひしのちの中国語
唱歌にも声くさぐさの夜学かな
夜学生己のことは曖昧で
夜学校新渡戸の遺徳受け継げり
若者と歓び集う夜学かな
一村に一燈ともす夜学かな
夜学子の鞄の中に闇すこし
しはぶきに目を覚まされし夜学の子

【夜業】
もの食らふ後ろめたさよ夜業なほ
一文字の一円足らず夜業かな
睫毛濃く長く夜業の息浅く
また扉開けて閉ぢたる夜業かな
もうつらくなくなつてきて夜業かな