きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

金曜俳句への投句一覧(10月28日号掲載=9月末締切、兼題「新蕎麦〈そば〉」)

「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です

選句結果と選評は『週刊金曜日』10月28日号に掲載します。
どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。

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【新蕎麦】
ふるまひの新蕎麦にきく山の音
箸を割る音高らかに走り蕎麦
新蕎麦を打つ実演が店の売り
新蕎麦に諸手つかふや老庵主
新蕎麦の頃は旧遊に集合す
新蕎麦の品書の墨匂ひけり
福島で笑顔薬味に新蕎麦を食べ
昼食は新蕎麦と決め始業かな
新蕎麦や客の顔みて打ち始め
新蕎麦や一期一会のうすみどり
古民家で新蕎麦祭り村あげて
川音の時に怒りて走りそば
山かひに新蕎麦煮るや昼餉どき
新蕎麦に打ち込めんとす我が想い
新蕎麦の味が勝ってる放射線
はしおきはわさびのかたち走り蕎麦
ほどほどの一日新蕎麦啜りをり
奥山に啼くもののあり走り蕎麦
新蕎麦やおろかなことを言い募り
老舗ほどお蕎麦の盛りのうすきかな
新蕎麦をほぐす匠の掌
新蕎麦や八雲庵まで濠伝ひ
新蕎麦を打つ定年後無我の境
峯々は色重ねたる走り蕎麦
結跏趺坐新そば清くうづたかく
新蕎麦を提げて上野の駅に立ち
新蕎麦旨い放射線など忘れさせ
二代目はぶっきらぼうの走り蕎麦
新蕎麦に口角緩められ唸る
かはたれのホーム灯れる走り蕎麦
新蕎麦や冷やかな時庄屋跡
福島でおなかいっぱい新蕎麦を食べ
原発の永き沈黙走り蕎麦
蕎麦の花さて何色に仕あげよか
新蕎麦や火点しごろの風の色
新蕎麦を振舞ふ男盛りかな
新蕎麦を食べに福島に来る友のいて
軒並に新蕎麦の顔木曽格子
川風や新そばを切る刃の調べ
貼紙や新蕎麦の文字墨光る
新蕎麦や不揃いなれど味自慢
新蕎麦や掃き清めたる水車小屋
新蕎麦や店主の落語聴きながら
新蕎麦は祝くへし酒は燗すへし
深閑とした民家かな新蕎麦や
青年は百姓志願走り蕎麦
沢水は鋭さ増すや走り蕎麦
新蕎麦や汁はいらぬと知ったふり
新蕎麦や空気も旨し冷え冷えと
新蕎麦や井上真央のうどん顔
蕎麦つ喰ひ父に習ひ昼の酒
この店の新蕎麦らしき薄き盛り
新蕎麦や六粒八粒と挽きにけり
降りてきて打ってくれぬか新蕎麦を
モーターで動かす水車走りそば
新蕎麦を追ひ北海道蕎麦産地
新蕎麦や赤子はやくも火を怖れ
新蕎麦のうまい店聞く旅の昼
安曇野の新蕎麦御膳頼みけり
新蕎麦のあを絶望のその深さ
新蕎麦やスッピンが好し色黒し
新蕎麦や主と笊は古びれど
取り敢えず酒の肴に走り蕎麦
新蕎麦や過ぎし日のこと父のこと
そろそろ新蕎麦と言って誘ってみる
新蕎麦じゃねえからよと笑う亭主
古き町新蕎麦の旗ひるがえる
老いてまた新蕎麦食べるこの一年
新蕎麦やがぶりつめ込み味は次
新蕎麦や幟はためく小谷村
新蕎麦や黒光りする梁の家
新蕎麦へ何百キロをひた走る
江戸つ子のいなせの堅さ新蕎麦も
新蕎麦をほんのふたくち山の宿
戸隠へ新蕎麦食いに高速を
猫の目に映りて我や走り蕎麦
新蕎麦のいま喉元を過ぎゆけり
駅前の店みな古りし走りそば
やせ地でも蕎麦は育つや人も又
新蕎麦や音を立てずに異人食い
縁欠けし祖母のこね鉢新そば粉
福島に親友新蕎麦を食べに来る
新蕎麦を打って振る舞う亭主かな
庄屋跡天井高し新蕎麦や