金曜俳句への投句一覧(11月25日号掲載=10月末締切、兼題「案山子〈かかし〉」)
2011年11月7日7:10PM|カテゴリー:櫂未知子の金曜俳句|admin
「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です
選句結果と選評は『週刊金曜日』11月25日号に掲載します。
どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。
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【案山子(かかし)】
一対の案山子情死のごとく臥す
過疎の村観光案山子で賑わい
空遠く案山子横向く柿かじる
千枚田守るあまたの案山子かな
仕舞われぬ案山子の横で君を待つ
案山子翁しだいに頭垂れにけり
死の町となって案山子も生きられず
稲倒れあらわに立てり案山子かな
妹のジャージ纏ひしかかしかな
満月に願掛けしてる案山子かな
畦道になでしこJAPANの案山子立つ
立ち姿スタイリッシュな老案山子
おさがりに埋もれて我が子案山子の子
今生は案山子なれども雲綺麗
村の葬案山子の横を通りけり
定年は案山子もかたちちがうけど
畦に立つ祖父の案山子に似てきたる
案山子より声掛けられる夕まぐれ
呵々大笑ギブス取れしに捨案山子
案山子立てやつぱり案山子座らせて
朝練の声とりまいて案山子かな
靴擦れも夢の一つよ案山子かな
十人もそろうことない案山子かな
曲屋に案山子の痩せて横たわり
複眼の案山子の守る蝦夷大地
ほの動く案山子に迫る暮色かな
子供たち案山子とにらめっこ笑み
深井戸のやうな目をして夜の案山子
すずめ二羽腕に乗せたる案山子かな
案山子とて案山子らしさを失ふて
遊び心案山子に託し待つ稔
嫁ぎたる娘(こ)の御下がりを着た案山子
ケンケンで隣村まで案山子かな
雲流る案山子仰臥の大往生
案山子立つとうとう一人になりにけり
この町で私案山子のようであり
風ありやと問ふて案山子と見はるかす
風来れば目力を増す案山子かな
農学部演習案山子博士さま
禁断の鴉への恋案山子かな
案山子居ず田には雑草伸びたまま
大阿蘇の裾のゆかしきかがしかな
案山子殿蓑笠なくて野球帽
里の案山子街のカメラを引き寄せり
一人旅案山子に何か言いたくて
鳥追いて人を寄せたる案山子かな
案山子ほどの仕事がしたし風来坊
案山子にも案内を乞ふやみちまどひ
過疎の地に現役で立つ案山子あり
稻波や両手広げて立つ案山子
外人の着物姿の案山子様(よう)
用済みの案山子に止まりカラス鳴く
日を集めひねもす立てり案山子かな
ジーンズの片足結び立つ案山子
万歩計持たせ案山子の歩く夢
雑草の田んぼに案山子用も無く
かゝしとかでくのばうとか呼ばれたき
捨案山子古墳の丘に横たはる
近付けば案山子の丈のありにけり
眼鏡かけ口髭伸ばし案山子かな
死の町の田に人も消え案山子消え
鈍行を見送り昇天する案山子
本当は鴉が好きよ案山子かな
案山子ゐて朝は何処も濡れてゐし
野良仕事しさうに見えぬ案山子かな
おのずから巧拙ありて案山子かな
死の町に案山子ひとつも立っていず
張り合って縄張り守る案山子たち
つけ鼻や案山子の手足迷はせて
にらめっこ案山子に負けて道すがら
月面に近づいてゆく案山子かな
この町に人も案山子も消えており
とき移り案山子おにぎり金テープ
減反地何を思って立つ案山子
雨の香と日照りの香とに破れ案山子
宿題を案山子へ言つて聞かせけり
案山子翁軍手ゆらゆら招くなり