「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です

選句結果と選評は『週刊金曜日』２月２４日号に掲載します。
どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。

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【東風（こち）】
東風吹くやこの景全て我のもの
地動説語る九才桜東風
東風吹いて私の翼コバルト製
夕東風に出て行く船の灯りゆく
強東風や遠景隠す砂色に
荒東風に談志の声が聞こえるか
一五階よりはつか潤める東風の街
校庭の旗艶めきて東風の吹く
初東風や波に乗る人長谷の海
入寮の子の背を押すや東風強し
東風吹きて修羅の旅する心地かな
今は昔東京遷都梅の東風
永かりし一日かけて東風の吹く
東風吹けば昔十勝に馬糞風
夕東風や玉の赤子の生まれたり
鰆東風妻の実家の敷居かな
鰆東風おいでおいでと云つてゐる
近道は川に沿ひたる雲雀東風
宙を行く草の記憶や雲雀東風
東風吹いて五十歳でも思春期が
東風吹けば曠野への旅こころざす
翅あらば朝東風に乗り渡りたし
対の物片方欠けて荒東風す
東風吹きてこころの空気入れ替へる
東風吹くやただそれだけで日の暮れぬ
東風吹くや北々西に飛行船
桜東風すこし狡くて愛しめり
待ち人は来たらず駅に東風さむし
旅立ちの日近付けり東風ぞ吹く
家中でデモにでかける桜東風
煙突に玉ノ湯とあり東風強し
針振れり東風の悪戯放射線
強東風に鮒釣る浮のあおられて
四泳法収得したり桜東風
遠吠えも韻踏む如し東風つのる
面影は風に棲むらし桜東風
明星を空に残して東風の吹く
東風すさぶ耳朶（じだ）うつブランデンブルグ
東風荒き屋上にゐて猫ごころ
強東風に鴉の声もとばされて
荒東風や行方不明の猫帰る
東風吹かば後ろの正面えんまさん
東風の香や雪国の荒くれ閉ざすかな
東風吹いて瓦一枚ずつ起こす
東風吹けと海に向かいて立つ竜馬
朝東風に小指ざわざわしたがりて
東風吹いて少年の日に出合いけり
甲板を伝令走る東風強し
強東風や小犬容易く売られけり
夕東風や街で一番古いビル
桜東風水底の貝歌ひ出す
東風吹いて背中の翼むずがゆい
朝東風や自転車影をおいて行く
東風吹くや表面張力あやまたず
東風の誘ひ蝋梅の許佇めり

【その他】
栗きんとん栗だけ食べてもうまくない