「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です

選句結果と選評は『週刊金曜日』６月２２日号に掲載します。

どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。

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【蜜豆】
みつまめのうすらぼんやりみごもれり
駱駝見て蜜豆食べて一日かな
密豆屋男子一匹紛れ込む
蜜豆や交換日記読み返す
缶詰のまま蜜豆を食はすなよ
蜜豆の味生き返り夏近し
蜜豆の蜜いつまでも手のひらに
蜜豆の寒天ひとつ掬い得ず
臍曲げてゐて餡蜜を差し出され
あんみつに蜜たっぷりとかけにけり
蜜豆の豆除けながら喰みてをり
蜜豆を支ふるレンガ寒天よ
蜜豆が食べたいと言う老夫かな
蜜豆と碁石片手に祖父を待つ
餡蜜もこのごろ喰べてる左党
ビー玉のやうな蜜豆ガラス椀
骨壺のやうに蜜豆ひんやりと
まあなんと健やかな蜜豆だこと
喪の明けてまづ蜜豆の店にゆく
万華鏡ながめ蜜豆忘れたる
蜜豆や銀座の田舎娘かな
蜜豆の映す雲行き口の中
餡蜜を前に数値をひとくさり
蜜豆を食ふ羽目となる見合かな
取り寄せの蜜豆掬ふ明るき日
蜜豆や格子の外を雨と人
蜜豆の豆を掬いて二つ三つ
病室の俄蜜豆品評会
蜜豆は寒天の色で決まりけり
善男も蜜豆を食う白昼下
蜜豆の謀議のほどはたか知れる
眼帯をずらし蜜豆掬ひをり
潮風に蜜豆の海静かなり
地球儀や蜜豆食へば海の風
蜜豆や旧姓にまた戻りしと
蜜豆や式のドレスの話など
餡蜜や問はれてゐたり宗旨替へ
あんみつや髪にまつはる女の手
蜜豆や昼の銀座の裏通り
蜜豆にホイップ重ねる24時
蜜豆や宇治の抹茶の色深し
蜜豆の缶カタコトと一人旅
餡蜜や算盤使ふ爺の店
蜜豆や母の横顔憂ひのみ
餡蜜の卓を囲める五厘刈り
悲しきはフルーツ蜜豆母のこと
手付かずの蜜豆残し別れけり
蜜豆の好きな娘はイギリス暮らし
蜜豆の蜜のひかりの沈みゆく
蜜豆や贔屓役者を引き倒す
芝居はね蜜豆食みし小屋の前
蜜豆の連れ舞ひ豆と求肥かな
密豆や寒天先に食べる癖
蜜豆や薩摩切子に色が増す
蜜豆やそろそろ喪服脱ぐ頃に
蜜豆をひと口胸の透くここち
商店街閉店をせず密豆屋
蜜豆やなぜか気の合う軟と硬
蜜豆は色淡き海の気配して
蜜豆を終へてひときはかをるお茶
蜜豆の暗部へ匙を差し込めり
蜜豆の隙間を埋むる黒蜜よ
覚悟して嫁の蜜豆食らひけり
大人買い蜜豆下げる手真っ赤っか
密豆のほのかに涼し若き夏
蜜豆を食せし後に汝を吸ひぬ
餡蜜に男の返事一つのみ
密豆や豆ひとつずつすくう夏
蜜豆に青空添へて海望む
あんみつや嘘見抜かれつ笑ひつつ
あんみつやもとの二人に戻ります
なにはともあれみつまめのさくらんぼ
糖蜜の光流れて蜜豆へ
蜜豆をつかみそこねて大往生
蜜豆のチェリーを残す甘党ら
蜜豆をザクザク食らひ幸せです
蜜豆や母も子もなく出番なく
残る豆匙へ蜜豆フィナーレへ
来し方の蜜豆の味塩気かな
連れ立てば母は蜜豆あんみつ屋
蜜豆や不帰の人へと匙を置く
蜜豆や死んだ親父が隣席に
蜜豆や悪所に通うこと稀に
壁際に蜜まめ喰ふて詮もなし
皇居まで歩きし後はあの餡蜜
餡蜜と蜜豆の差を語り合い
蜜豆の蜜の衣を剥がす舌
宴涯て蜜豆喰らう老童
あんみつに束の間母のよろこびし
蜜豆や都会の暮らし思い切る
あんみつを喰みて男の無口なり
餡蜜や少したのしき妻の留守
横丁のあんみつ処燈の点る
餡蜜に囲まれゐてて紅茶愛で
蜜豆や中也の詩を口遊み
蜜豆を掬ひし時がしあはせよ
蜜豆や寒天は鋭きさいの目に
万歩計褒美は蜜豆コンビニへ
蜜豆の缶に雨滴の二つ三つ