きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

消費増税でほくそえんでいるのは誰だ

<北村肇の「多角多面」番外編>
 6月26日、消費税関連8法案が衆院本会議で可決された。見事な筋書きだ。民主、自民、公明の大連立、小沢・鳩山の放逐――。シナリオライターはだれなのか。いま、それだけの「力」のある議員は見あたらない。そして、一つ言えるのは、この事態に快哉を叫んだのは、霞ヶ関官僚、経済界、そして米国ということだ。
 
 流れを追ってみよう。
▼民主党が政権奪取▼鳩山首相、小沢一郎氏とも「政治主導」「米国からの自立」を掲げる▼霞ヶ関官僚、米国は苦々しく思う▼鳩山首相は金銭疑惑で失脚▼小沢氏も検察の狙い撃ちで蟄居を余儀なくされる▼菅直人氏が首相就任▼新首相は原発輸出、TPPに前向き。米国のうけはまずまず▼さらに、消費税増税に触れるなど、財務省の思惑にも乗る▼だが、東日本大震災発生後、菅氏は「脱原発」を表明▼財界、財務省、経産省は菅氏に反旗▼民主、自民の一部ばかりかマスメディアも「菅降ろし」に走る▼「ポスト菅」は予想に反し野田氏に▼財務省の一押しは野田氏▼自民、公明の中でも野田氏の評価は高かった▼野田首相はマニフェストを捨て去り、消費増税に「政治生命」をかける▼「大阪維新の会」躍進で、民主、自民とも警戒感▼「消費増税実現、大飯原発再稼働には大連立が一番の早道」と手打ち▼「大連立」は増税路線、原発温存、日米同盟強化につながるばかりか、「小沢・鳩山」という小骨を抜くこともできる▼一石四鳥を喜ぶ霞ヶ関官僚、財界、米国――。

 こうしてみると、シナリオライターは官僚としか思えない。財務省が中心となり、外務、経産、法務も加わる。相当な知恵者の集団が、国会議員だけではなく、財界やマスメディアをも利用する。背後には米国の意志が存在する――戦後、一貫して続いてきた風景が既視感とともに見えてくる。結局、この国における統治権力の図式は何も変わっていないのだ。民主党政権誕生時から、「脱官僚」を許すまいとあの手この手で動き回った官僚の「勝利」を認めざるをえない。

 しかし、「3.11」後、明らかに社会は変化した。原子力ムラに象徴される「勝ち組グループ」への怒りが静かにたまりつつある。永田町や霞ヶ関がそのことに気づかない、あるいは過小評価しているのなら、必ずしっぺ返しをくうだろう。「6.26」は霞ヶ関官僚と彼らに踊らされる政治家らの「最後の勝利」になるかもしれない。

 フランスから独立したアルジェリアの戦いは、戦闘部隊が事実上、壊滅した後、無数の市民が澎湃として立ち上がったことによって勝利に導かれた。日本の主権者は市民だ。「紫陽花革命」の足音が聞こえる。(2012/6/27)