兼題「八月」 金曜俳句への投句一覧(9月28日号掲載=8月末締切)
2012年9月13日4:35PM|カテゴリー:櫂未知子の金曜俳句|admin
「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です
選句結果と選評は『週刊金曜日』9月28日号に掲載します。
どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。
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【八月】
八月の隅に猫ゐて欠伸かな
八月の屋根裏掃けば砂塵かな
八月の林間を行くレトロバス
八月や山の水引く宿場町
八月や陰暦といふ詩暦
八月や病打ち明けられし文
八月の黄泉平坂七曲
八月の砂塵の野球優勝旗
八月や確かに親の居る田舎
八月やデイサービスの送迎車
八月や一直線の波がしら
八月やロビー陣取る異邦人
八月やソーラン節の通り過ぐ
八月の満ちて零るる敗者愚者
八月に買ふ四色のボールペン
八月の夜の吊り革舞踏会
八月の田の面果てなし筑後川
御嶽(うたき)にも艦砲穴や八月路
八月の腰にベルトを締め直す
飛行機が太陽に飛ぶ八月だ
八月の夜風を鳴らすサクソフォン
八月の真昼に音のなかりけり
八月のメタボさらして寝る畳
より深きまで八月の臍掃除
八月の寮の付いてる女子大学
八月のエアコンの風まだ慣れず
八月の地球に届く宇宙塵
八月や力で行けぬ国がある
八月の旅路は臨機応変に
八月は水に流すとうまくいく
八月のプールにくずれる雲の峰
八月の海は何かを言ひたげに
八月の校庭に子等の声はなく
八月の道は白くて長くって
八月や標高高き小海線
南方の赤き古地図八月や
八月の炎天の影濃かりけり
八月を蹴り上げてゐる赤ん坊
八月の逢魔ヶ時のムンク展
静謐に八月は往く鈴(りん)の音
八月やカント全集借り手無し
八月の空深々と井戸の底
八月の下闇の宿ホームレス
八月やも少し頑張れ阪神も
八月や齢一つを重ねけり
八月や地上数万尺の青
八月や物干しのものみな白く
ことごとく八月の砂濡れた砂
また捨てた国を捨てよう八月に
八月の後部座席の濡れた砂
八月や草刈る音の近づけり
八月やへしこふりかけ福井米
八月を大波小波よく洗ふ
八月や少ししかつて少しほめ
八月や敗者を祀る愚者の杜
八月や官庁街の万国旗
八月の雲の如しや赤子抱く
八月の墓石洗うや蝉時雨
八月や黙して草は木となりぬ
八月は分水嶺の北側に
兄たちの忌日重なる八月や
八月尽名画の中はみな故人
八月や裸婦像のよく磨かれて
八月の石垣大き大阪城
八月の甲斐駒雲を一つ抱く
八月やゲーム機片手宿題す
仏壇の中が狭いぞ八月は
原発も二回目を待つ八月に
見所のある子の背筋八月の日
八月や目を閉じてゐる地蔵尊
八月は琵琶湖に笑窪やって来る
八月尽少し疲れを残しけり
八月のしばし無音となるテレビ
八月や石仏洗ふ若き尼
八月の言葉選びし十五日
八月の足場組む職陰もなし
八月の雲を仰ぎて独り子よ
八月や実家に古ぶ柱傷
八月の海を薄めてをりにけり
八月の猫八月の影の中
八月や机に疵の又増へて
八月の土まみれとふ心地よさ
白黒となる八月の記憶かな
八月や憤怒は北へひろしま忌
八月の荘にゆるやか風過ぐる
八月や艦砲穴の虫の池
八月は酷暑の予感暦繰る
八月の夜に放たれ観覧車
八月や半間間口古書匂ふ
八月の都を黒き公用車
八月の地上百尺鳶職の
八月は岸辺に青く崩れ落つ
八月や黒く微睡む青インク
八月の空に乾かす白きもの
八月や商店なべて陽にそむき
人影のなき八月の広場かな
黙とうの八月の空さわがしく
八月の心霊集合写真かな