きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

兼題「秋扇」 金曜俳句への投句一覧(9月28日号掲載=8月末締切)

「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です

選句結果と選評は『週刊金曜日』9月28日号に掲載します。

どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。

『週刊金曜日』の購入方法はこちらです

amazonhttp://www.amazon.co.jp/)でも購入できるようになりました。

予約もできます。「週刊金曜日」で検索してください。配送料は無料です。

【秋扇】
秋扇と聞けば色合ひ変はる風
待合室弄びをり秋扇
秋扇を開けば思ひ出すことも
秋扇売れ残りたる分譲地
葉の色は夏終るらし秋扇
涼風に秋扇かざす祭かな
秋団扇付き添う母の手より落つ
口論の席に残るや秋扇
光らせて刃物のごとき秋扇
長寿の母市よりたまはる秋扇
消息もひさしく絶えて秋扇
己が身にのみ風送る秋扇
節電で薄暗き部屋秋扇
手に取れば言葉のいらぬ秋扇
相槌の多き人なり秋扇
秋扇の忙しく動く二階席
終戦後秋扇仰ぎ周旋す
秋扇かざせば暮るる山暮し
熱戦を見下ろしてゐる秋扇
秋扇や長寿言祝ぎ市長来る
秋扇を片手で開き舞ひ始む
病院の待ちくたびれし忘れ扇
まだ恋の色褪せてゐぬ捨扇
臥す妻へ氷枕と秋扇
捨団扇あはれ絆の一文字
盛塩に光の浮かぶ秋扇
秋扇を背中にはさむ踊りの子
道行の段にて止まる秋扇
病床のひらかぬままの秋扇
花嫁に風送る母秋扇
片付かぬ書類の山に秋扇
秋扇会話のいらない時間帯
秋扇や三者面談待つ廊下
眦で見咎むことも秋扇
二の腕の痩せたることも秋扇
置きし本屍のごとし秋扇
手の跡のすり減り黒き秋扇
秋扇言わず語りのひとが居て
秋扇を半分開く奥の席
この国はなかなか覚めぬ秋扇
あ・うんと書いて贈られ秋扇
秋扇待ち人の来る気配あり
一周忌母の箪笥の秋扇
秋扇竹の葉そよぐ絵柄なり
流れくるジャズの調べに秋扇
秋扇持つて出ること忘れけり
残暑のほど良い日まで秋扇
舞扇稽古を終えて秋扇
未だ癒えぬ疲れ残りて秋扇
クレヨンの落書増えし捨団扇
秋扇なんのこつちや丸裸
語るべき言葉を出さず秋扇
秋扇と永久に投函せぬ文と
秋扇や巡る信濃の道祖神
秋扇やほのかに赤き燈あり
ホテルでのランチに忘れ秋扇
秋扇運河の水にジャズ流る
秋扇風をなだめて悼みけり
家系図の異端児指せり秋扇
浮世絵の三分断や秋扇
訴へる机叩くや秋扇
机上には蝉の抜殻秋扇
蝉落ちて孫のプールは秋扇に
秋扇やまた開きたる自動ドア
秋扇瞳の青さ際立てり
秋扇たまはる母は卒寿過ぐ
秋扇海に向きたる風見鶏
頼まれし飯冷ましたる秋扇