兼題「名月もしくは満月」 金曜俳句への投句一覧(11月23日号掲載=10月末締切)
2012年11月8日8:31PM|カテゴリー:櫂未知子の金曜俳句|admin
「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です。
選句結果と選評は『週刊金曜日』11月23日号に掲載します。
どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。
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【名月もしくは満月】
けふの月古き都の路地をゆく
満月にかける梯子や兄妹 「茸狩」
名月やうしろさみしき綺羅の塔
名月に匂い移して影を抱く
満月や臓器二つを失へど
小説の幕を下ろせば望の月
満月を沈め靜もる山上湖
寒き夜の満月とゆく単独行
名月や素面に写る正直さ
満月の森の小道を帰り来た
永遠に即かず離れぬ月仰ぐ
満月に山照らすほど己が見え
名月や風電線に鳴りやまず
月今宵酒だんごなく尾花折る
満月の嬰のえくぼの深きかな
満月や野仏にして奥二重
残された夢の続きのけふの月
名月や突貫でするビル工事
あす下山名月かかる山小屋で
お供えの団子は食べる雨月でも
満月のやうなマカロン食べてをり
名月がほの明るくす小屋の中
見守られて満月の夜は恥かしと
望月に志願するひと手を挙げよ
名月や昭和のビルの枯れかかる
満月の光浴びをる麒麟どち
満月につまづいてゐる観覧車
名月の動き確かに待ちぼうけ
満月や両手の荷物重たくて
満月を軒端に入れて仮住い
名月は私をぬらすごとくする
山肌がはるかに続く満月下
名月に近づく位置の天守閣
名月やお山の木々を輝らし居り
満月や昇りきるまで眺めをり
名月や湯上りあとの紅白粉
ベランダの明月も佳し幾年か
どこでもない育った山にある名月
終電の三の輪に止まる芋名月
満月に遊び足りない影三つ
満月の時間の中に猫眠る
満月の三つある星平和だろ
しばらくは月のひかりにつつまれて
満月や何やら深く思う夜
満月にティンカーベルの影絵かな
名月をツリータワーが真っ二つ
明月や居待でやつとかなふ哉
名月や物音絶ゆる兎小屋
満月をポロンと産んだのどんな鳥
十五夜に盃を重ねて恋語る
空たわむほどの満月釣り上ぐる
女住む近く歩みし月の夜
どの窓を開け放ちても望の月
満月やぼんやりとした不安あり
井月が名月仰ぐ信濃かな
満月の真正面の露天風呂
盃の月を飲み干し月に飛ぶ
名月や月面地図に色仄か
満月や兎の住みし幼き日
下山する夜道に望の月明り
満月がなお冴えわたる涼風や
満月やうさぎの耳に星条旗
名月を馬手に弓手に箱根越ゆ
名月や一人で見るに大き過ぎ
満月を茹でてみんなで食べちゃった
満月に狛犬吠える気配有り
この景色満月にこそ覚えたり
夢見ても満月おいて探しえぬ
満月が卵割ったら出てきたよ
電話越しなる名月の出でにけり
名月や妻が知らない唄うたふ
満月や歩き方似る親子かな
満月は湯舟の面にゆれ崩れ
明月や心のゆとり戻りけり
名月を無住の寺の廂より
名月を揺らして鯉の行方追ふ
満月の使者なる猫の来りけり
満月の伏し目がちなる一団よ
満月を仰ぎ願いし稚な恋
雨止みて名月うつす刈田かな
満月や台風一過で顔を出し
わがこころ月のごとくになれませぬ
ひそやかな匂ひある道望の月
明月やA・ストロング永住す
満月やティラノサウルス羽を梳く
明月にすすきを母と刈りし頃
人声のあふるる部屋に今日の月
眼鏡拭き満月更に丸くなり
満月に蚊のごときもの飛行灯
名月や地球の男見下ろして
満月の呪文が木々に降ってくる
満たされて恐れおののく望の月
名月のあたたかくまた冷ややかに
名月や雲居を照らす家路かな
満月の傾き初めの水の音
橋の名は月見橋なり望の月
あの世から誰も帰らぬ月今宵
明月や忘れし人を思い出す
名月や和菓子が浮かぶ虫の声
満月を散歩するならラクダです
満月の校庭の黄色く縮む
満月や汀の前の潦
名月や時ならぬ客門叩く
満月に照らされ一人舞台かな
やわ肌に名月写す美あるかも
月こよひ光源氏にあらせらる
満月をうっかり踏んづけているラクダ
名月に湯番を頼む秘境宿
黒雲の来て満月を食らひけり
名月や五十五階の露天風呂
名月やしまいわすれし三輪車
満月や人道てふはアスファルト
名月や遺品の帽の初冠り
満月にビーフジャーキー噛み千切る
名月や堅き実を踏む足裏に
満月や人みな解毒神の技
あのときは月の鼠となりにけり
満月の突き刺さってくる呪文かな
名月や団子睨んで座りをり
ぼた山の陰に面出す望の月
ぬうと出て満月重しひんがしの空
満月の光に読みしメモ書きや
名月や書きさしの文そのままに