兼題「茶の花」 金曜俳句への投句一覧(12月21日号掲載=11月末締切)
2012年12月4日9:52PM|カテゴリー:櫂未知子の金曜俳句|admin
「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です。
選句結果と選評は『週刊金曜日』12月21日号に掲載します。
どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。
amazonなどネット書店でも購入できるようになりました。
予約もできます。「週刊金曜日」で検索してください。
【茶の花】
茶の花のにほひ夕間暮れのにほひ
茶の花や書き込み若き兄の本
茶の花の一輪残る翳の道
茶の花や作務の終はりの魚鼓響き
茶の花は椿のうから黄濃き蕊
茶の花や背は松の廊下跡
茶の花と隅っこにいる地球人
茶の花の下から上へ咲き登る
茶の花の続く坂道比叡山
茶の蕊の満身に差す光かな
茶の花の天を射りそな蕊なるや
茶の花や五弁の花が抱く黄
何故ぞそっぽ向きたるお茶の花
茶の花や風のあはひの路地の音
茶の花や照葉樹林帯に棲み
サザンカの仲間とありしお茶の花
茶の花も放射線灰浴びた木に
茶の花や引きも切らずの祝唄
茶の花をだましだましに蜜盗人
茶の花や香り豊かな古刹哉
茶の花や炉端でかはす酒の味
茶の花や家並低き陶の町
茶の花の黄色に夕日残りけり
富士拝む人に寄り添ふお茶の花
茶の花は気付けばいつも隠れ咲き
茶の花の白のふくらむ露地の奥
茶の咲いて梁に日の差す刹那
茶の花や夕映へのなかもの思ふ
茶の花や松の廊下の跡を過ぐ
廃村の茶の花残す道しるべ
茶の花や津波まぬかる(免る)里に咲く
茶の花や未だ馴染めぬ國訛り
一湾を縁取ってをりお茶の花
茶の花や寺の階段登り詰め
茶の花や純潔点はゆづれない
茶の花の似合う女子高生がいる
茶の花の限界集落彩れる
単線に明るき山やお茶の花
茶の咲ける小津監督の忌なりけり
茶の花も小さき富士を望みおり
茶の花や茶室の金の名残とも
茶の花や婚の荷少しづつほどく
近づいて茶の花と行く雛壇に
葉に移しかおり生かせる茶の花に
茶の花や一つ手前の停留所
茶の花や見せたきものに誰も来ず
茶の花や駿府城下に楚々と咲き
茶の花は葉に恥ずかしくそっと咲く
ひた向きに咲いた茶の花古寺の庭
山の道茶の花日和真つ白に
にくしみをいつくしみに変え茶の花
茶の花の隣に越して比叡山
茶の花の影も映らぬ新幹線
茶の花の露地に待ちたる雨宿り
暮れなずむ山のこの面やお茶の花
夕景に茶の花いよよ猛るかな
茶の花を星のごとくに見晴るかす
茶の花の解くとみえて零れけり
山終えて茶の花咲くや鄙の里
もういちど茶の花ごとく嫁ぎたり
悪漢も遊女も愛づるお茶の花
茶の花や香のこぼれゐて昼下り
茶の花や伊太利亜人の無言濃し
茶の花や文を書きゐて耳聡し
茶の花や山家二軒の登山口
百年の茶の花日和無人駅
茶の花や膝つけば道みな硬し
茶の花やきれいな時間も霜の前
茶の花は空に拡がる蕊の星
茶の咲くや顔とりどりの羅漢さま
茶の花や悟る悟らず悟りたし
茶の花や古里遠き者ばかり
茶の花や利休しのび男道
茶の花に淡き白さの遠嶺かな
茶の花を垣に結びて鄙の家
茶の花や鯉の水音ひとしきり
茶の花や幼なじみも独り者
穏やかに茶の花眺め野点哉
茶の花がうしろへ走る出張や
茶の花や養生の酒少しあり
茶が咲いて風なき一日賜りぬ
茶の花の位置決めたるや造園師
茶の花の灯るが如し夕寂し
茶の花に高原列車と動く空
茶の花や青を映せる潦
母方の血筋途絶へしお茶の花
戦跡の屍は知らずお茶の花
茶の花や植物園で初対面
快晴の日の茶の花の昏さかな
茶の花や母と摘みにし香りして
茶の花や飛行機雲の尾が撥ねて
茶の花やセーラー服のはにかみて