兼題「熊」 金曜俳句への投句一覧(1月25日号掲載=昨年12月末締切)
2013年1月8日8:08PM|カテゴリー:櫂未知子の金曜俳句|admin
「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です。
選句結果と選評は『週刊金曜日』1月25日号に掲載します。
どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。
(当季雑詠は募集しておりませんが、ここにまとめて掲載します)
amazonなどネット書店でも購入できるようになりました。
予約もできます。「週刊金曜日」で検索してください。
【熊】
剥製の熊の片耳失せてをり
子持ちなら熊牧場に居るがいい
熊の子の立つて上野の山の上
敷物となりても熊は威を放ち
知床の岩に休みし熊痩せて
熊になる一人になったあの人が
熊の口よりこぼれ落つ鱗かな
神麓は熊の寝息や山眠る
山中に銃声熊の離散する
水を飲む熊の背振ひ夥し
金稼ぐ動物園で熊眠る
熊あまた眠らせ岩木山眠る
羆見し子の驚きに祖父の笑み
熊の来ば集団下校せしと妣
洗濯物抱えて今日も熊になる
城山に熊の足跡よろけたる
熊打ちに行く男等の寡黙かな
熊の子を鬱の友へと贈りたく
掌に糞つけて熊餌を欲りぬ
熊通ふ道らし生木裂かれたる
熊よりも音の少なき集落か
軒下を熊が通つた話など
聞くたびにふくらむ熊を見し話
君は詩を熊は子を生む洞きよら
子を思う番の熊や里に入る
熊皮のところを得たる囲炉裏端
存外の高さに熊の爪の跡
熊撃つてマタギ刀の黒光り
掌にどんぐりの殻熊眠る
熊穴の中を覗いて見たくなり
歌えもせず街の熊さん山不作
熊顔の人にしてみる膝かっくん
峡深くして熊の居ぬ熊の檻
祖母が描く熊には眉毛がありました
じいちゃんが一人住まいの熊になる
射殺さる罪なき熊の里の野辺
道標で爪研ぎをする小熊かな
熊撃ちの村の一隊老ひ進む
尾根越ゆる熊の足跡おほきかり
月の輪を隠し熊の子眠りをり
赤いリボン夢見て眠る穴の熊
玄関に熊の置物また増える
熊ロース焼けば秋田の遠き友
痩熊の剥製となり山の宿
みちのくの山懐に熊眠る
熊狩りの猟師はなべてなんばらし
風に乗り熊の寝息の届きけり
穴籠る熊の寝息や冬來る
シャー芯が途切れ熊の親子出る
北海で飢餓と戦う白き熊
奥山のあの光る場所熊眠る
洗濯物たたむ時には熊になる
玉乗りの褒美は赤いリボン熊
白き箱熊に遊ばせながら寝る
熊撃ちし猟師の息の弾みかな
襲ふ熊撃たれし報や山の宿
雪原や確と羆のにほひたつ
熊惑ふコンクリートと鉄ガラス
熊の子ら散歩に出れば車見る
静かなるやまみち熊の気配あり
南部なる熊の営むレストラン
熊を焼く居酒屋の名の熊五郎
撃たれたる母に寄り添ふ子熊かな
東京に居てこれほどに猛る熊
熊しばく時は左の耳を打つ
そろそろと寝てくれないか熊の夫
寒風に熊の鼻面黒光る
赤いリボン鮭と交換しよう熊
鮭銜え歩いて帰ろ熊ならば
天上に熊送りたる唄かなし
山降りて宝さがせる熊の手を
月の輪を見せつけるごと熊立ちぬ
銀座線パソコン叩く熊に会ふ
熊穴に雪降り積みて★(ブナ)眠る
熊の肉美味し秋田の友を恋ふ
スリッパで熊の頭をたたきけり
着たなりの熊穴に入れ重いなあ
ブランコに残った手袋くまの顔
熊親子里に煩悩放り出す
熊檻の南京錠の小さきこと
熊除の鈴の音信じこの下校
熊が手を広ぐ世界をつかむ如
てけてけと子熊のように歩く君
熊の嬰ガラス細工のごと洞に
日当たりのよろしき畑や熊来たる
★印は木偏に「無」
【湯たんぽ】
真夜中に湯たんぽ沸かす夫かな
湯たんぽの蓋開けてよと妻の声
湯たんぽの残り湯をまく寒い朝
【年忘・忘年会】
慌ただし政権交代年忘れ
忘年会二回に減って高齢化
映画観て夫と二人で年忘れ