兼題「海苔」 金曜俳句への投句一覧(3月22日号掲載=2月末締切)
2013年3月5日8:57PM|カテゴリー:櫂未知子の金曜俳句|admin
「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です。
選句結果と選評は『週刊金曜日』3月22日号に掲載します。
どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。
amazonなどネット書店でも購入できるようになりました。予約もできます。「週刊金曜日」で検索してください。
【海苔】
海苔掻女静かに機を織る様に
板海苔で覆ひたくなる旅の恥
黒き海苔の混沌として桶にかな
種仕掛けなけれど海苔のうらおもて
海苔粗朶に飛行機触るるほどなりき
青海苔やわれらにんげん揺れてをり
江戸前の光貼り付く海苔簀かな
海苔掻女化粧直して接客す
箸止めて表慥かむ今朝の海苔
海苔粗朶に鳥の重さのありにけり
海苔粗朶の田をなすごとく凪の海
海苔青くひととき過ごす四角形
焼き海苔の薄いフィルムがパンの上
訳ありの海苔の青さよ江戸土産
海苔炙る潮の香の満つ厨かな
灯台や海苔粗朶黒く光吸ふ
てのひらや海苔を揉んだる黒の綺羅
板海苔を持てばやっぱり髭ダンス
海苔炙る文弱の腕持て余し
大仰な乾燥剤と供に海苔
海苔粗朶に縫いとめられし海平ら
上品(じょうぼん)の和紙のごとくに海苔を漉く
海苔を掻く浜までの道狭まりて
海苔掻きし媼の腰の括り桶
海苔干せば光の束の集まれり
海苔の香や江戸つ子は炙られてこそ
不眠症なり朝方に炙る海苔
退院し先づは食べたき海苔茶漬
大和海苔風入る余地のなかりけり
朝茶漬け黒々と海苔揉みいれる
荒磯に海苔採る人のたつきかな
金網が照る水前寺海苔保護区
海苔を食み磯の香りに目を閉じつ
老僧の密かに愛でし海苔弁当
岩礁のひとつとなりぬ海苔掻女
平磯や光の中で海苔を採る
有明は遠くになりて海苔の椀
海苔の粗朶の突き刺さり海波静か
焼海苔や裏も表も山本山
海苔青し瀬戸は朝日をうらうらと
韓国の海苔/数字だけ読めて居る
海の青海苔の碧と手の赤さ
水前寺海苔や湧水豊かな地
恩讐の彼方は遠し海苔焙る
焼き海苔が長方形でざらざらで
浅草海苔十帖三つ旅土産
幼子や満面の笑み手巻きずし
乏しきと嘆きて岩に海苔を掻く
海苔粗朶に影を落すや戦闘機
南海のトラフの端で海苔を掻く
海苔粗朶の天に弧を描く大鳶
海苔を掻く町にゴスペル響きをり
居酒屋はセカンドハウス海苔香る
揉み海苔の初めは固き音を立て
見はるかす海苔の海とは碧の海
房総のひかりに背く海苔掻女
アクア道下に海苔採る暮らしあり
作業靴らの海苔巻きも大きけり
浜風に海苔干されたる景確か
海苔便り画面の指を意識する
海苔ひびの沖より雨の降り始む
独酌の愚痴テーブルの海苔が聴く
ひと息に一番海苔の網たぐる
日本製韓国海苔を裂いてをる
有明の海苔を焙りて朝餉かな
逆光に海苔採る背中とがりをり
海苔なくておにぎりいつも庭の葉で
海苔粗朶の間を舟のするすると
お日柄もよく朝市に海苔干さる
海苔の艶人生にある懐古癖
海苔巻を巻く老母の手確かなり
海苔の香や都会の鄙の佃島
海苔弁当スターウォーズは後半へ
海苔掻女岩に踏むばり海を見ず
ずれの無く沖へ向けられ海苔簀
磯の香に老ひてさかむ(盛む)や海苔を掻く
板海苔や指折り待つた給料日
板海苔の薄き処に陽は差して
絵を飾るやうに光に海苔晒す
海苔拉麺ふたつ麦酒も取り敢えず
オリーブと黒ペッパーの海苔たまふ
風神雷神浅草海苔を炙りけり
海苔みどり生命誕生の神秘
囲われた手の中に有り海苔弁当
海苔巻きを盛って祝うやバースディ
切り餅にあてがふ海苔の面積比
海苔育つ内海に今微光射す
味海苔を残して仕舞ふ遅き朝
海苔を掻く群れ岩を踏む波を踏む