きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

◆ゆとり教育を受け入れるゆとりがなくなっている◆

〈北村肇の「多角多面」(120〉

 学校週6日制への流れが加速している。ゆとり教育が学力低下の原因だと自民党は主張するが、根拠薄弱だ。詰め込み教育のほうが「考える能力」を損なう点でよほど問題だろう。だが、市民の中で6日制への期待が高まっている理由は、別のところにある。一言で言えば、子どもの面倒をみる余裕がなくなってきているのだ。

『朝日新聞』とベネッセ教育研究開発センターは4年に1回、共同で小中学校保護者意識調査を実施している。その3回目の結果が先月、報じられた。それによると、土曜日に授業をする「学校週6日制」への賛成は80.7%に達した。内訳は「完全6日制」が23.4%、月2~3回授業をする「隔週6日制」は57.3%だった。

 完全週6日制を望む保護者を学歴別にみると、「父母とも非大卒」が24.5%で、「父母とも大卒(短大を含む)」の20.5%を4ポイント上回った。また、経済的に「ゆとりがある」層が20.3%だったのに対し、「ゆとりがない」層は25.5%と5.2ポイント高かった。背景には、「学習塾などに行かせる余裕がない」「共働きで子どもの面倒を見られない」という事情があるとみられる。

 さらに衝撃的なのは、教育格差に関する認識だ。「所得の多い家庭の子どものほうが、よりよい教育を受けられる傾向」を「やむをえない」と答えた人が半数を超える52.8%に達した。前回調査では40.0%だったので、実に12.8ポイントも増えている。「当然だ」の6.3%も合わせれば59.1%だ。これに対し「問題だ」と答えた人は39.1%にとどまった(前回は53.3%)。「やむをえない」と答えた人の割合は、「ゆとりのある」層のほうが高く62.0%。これに対し、「ゆとりのない」層は48.1%だった。ただ、増加率をみると、それぞれ12.8ポイント増、12.6ポイント増とほとんど変わらない。もしこれが「ゆとりのない」層の“あきらめ”の表れなら事態は極めて深刻だ。

 立命館大学の陰山英男教授は「勉強時間を増やすだけでは学力が上がるとは限らない。世界一の学力といわれるフィンランドなど、欧米はどこも週5日制。日本も平日5日間で必要なことを教える枠組みを考えていく必要がある」と唱えている(『東京新聞』1月30日付朝刊)。ゆとり教育の理念が間違っているとはとても思えない。しかし、そうではあっても「子どもはなるべく学校で面倒をみてもらうしかない」のだとしたら、それは社会そのものの問題だ。大人も子どもも、ゆとりがなければ日々、生きることに汲々とならざるをえない。安倍政権の狙いが、そうした事態の解消どころか、ますます市民の「考える力」を奪うことにあるのなら、断固として許すわけにはいかない。(2013/4/5)