兼題「雪渓」金曜俳句への投句一覧(6月28日号掲載=5月末締切)
2013年6月6日4:28PM|カテゴリー:櫂未知子の金曜俳句|admin
「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です。
選句結果と選評は『週刊金曜日』6月28日号に掲載します。
どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。
amazonなどネット書店でも購入できるようになりました。予約もできます。「週刊金曜日」で検索してください。
【雪渓】
雪渓の八十路の笑顔エベレスト
雪渓や古き下着を捨てられず
雪渓やミニ信州の山の宿
頂に鳥居をさして雪渓かな
雪渓にこの世の色を背負ひ来ぬ
雪渓や今年四十路の添乗員
大雪渓シュプール描く大滑降
雪渓のスプーンカットや霧の湧く
雪渓行時候でアイゼン爪かわり
小夜中の雪渓わたる木霊(すだま)かな
雪渓にクレバスの闇またぎけり
雪渓のところどころに草の色
雪渓もスリムになりし温暖化
うまさうな花の咲きたる雪渓ぞ
見えてから小屋の遠さよ大雪渓
雪渓に釦がひとつ落ちている
旅行では雪渓だけがさり気なく
斑雪渓馬に見ゆるか言合ひて
雪渓のいつしか世界文化遺産
雪渓のストック粛と立ちゐたる
雪渓をヘリ次々と訪れて
雪渓やラジオからくる天気予報
死ぬときは小石のやうに雪渓へ
雪渓に触れ来し風を楽しみぬ
雪渓を終の栖と定めけり
雪渓や暫く逢はぬひとの文
大雪渓種蒔き爺の姿あり
雪渓の尽き花畑広ごりぬ
雪渓や破れし進路調査表
雪渓をはるかに見せて牛遊ぶ
雪渓のただなかにをり風とをり
雪渓や麓の町の背の低き
雪渓にカレーライスを皆で食い
雪渓をリュックサックが渡りゆく
雪渓を思い出プラス基礎とする
恋人に通夜の予定や渓の雪
雪渓に影落とし往くいわつばめ
雪渓にTシャツ目立つ皐月かな
雪渓や天中にある菫色
雪渓の一部となりぬ鼓膜より
雪渓もザラメのごとし卯月かな
雪渓に太き尿のあと残し
雪渓を双眼鏡で見る立場
雪渓を見下ろすまでと励まさる
雪渓のこと回復の友に聞く
雪渓も夏までもたぬ中アかな
雪渓へ★の番影落す
★は「ノスリ」の漢字。「狂」の下に「鳥」。鵟
雪渓へとなりの人も口ぽかん
紺青の空より下る大雪渓
雪渓にアイゼンの効き確かめぬ
雪渓やアイゼンの爪拒みたる
雪渓を枕に小屋の半二階
雪渓みつく東雲の犬の背に
雪渓に立ちて小さき村を見る
軽装を劈き雪渓迫り来る
インダスは天の雪渓より下る
雪渓や息を弾ませ中腰に
雪渓の襤褸の白よ我の白
雪渓を解かすコーヒーちり浮かぶ
見上げたる大雪渓のまだ続く
雪渓やトロッコ列車軽快に
雪渓は遠くから眺めるばかりなり
借り物の靴に戸惑う大雪渓
雪渓のどこかにきつと青き芥子
連休を過ぐれば雪渓汚れ増し
雪渓を登る足どり世の縮図
大空を雪渓青く閉じ込める
露天風呂浸かりて眺む大雪渓
雪渓ちふロッジ雪渓まで遥か
雪渓のオン・ザ・ロックや斗酒
故郷の見慣れし雪渓大雪山
雪渓のちいさき点になりに往く
雪渓にアイゼンの音空近し
雪渓や端の固きを蹴りもして
雪渓に声弾ませる山ガール
雪渓を雲のひと撫でしてゆけり
アイゼンの傷で雪渓汚したる
通過するものに雪渓威容振り撒き
雪渓を白刃として劔岳
雪渓の富士は通過を拒まずに
雪渓に犬形のありペットロス
雪渓のデブリの巨塊動かざる
山の都市雪渓望む喫茶室
山容の尖り和らぐ大雪渓
雪渓に月光満ちて溢れけり
雪渓にポニーテールの靡きけり
雪渓や先頭の声よくとほる
雪渓に若き己を見出せり
蟻のごと人繋がりて大雪渓
雪渓の中で接吻してみたい
霧晴れて雪渓荒き肌となる
陽炎雪渓も人も揺られおり
目交ひに迫る雪渓しか見えぬ
雪渓に遠くバスよりハイヒール
雪渓の奥は激流かも知れず
遠景に雪渓配す美術館
雪渓に優しく強き花揺れる
雪渓に牧童の瞳の青く澄む
父親になりて事知る大雪渓
雪渓は物差しのごと人計る
大地獄小地獄越えて大雪渓
雪渓を渡り廊下のごと進む
雪渓を噛むアイゼンの獣ぶり
雪渓のいつまで続くかくれんぼ
大雪渓スキー滑降は動く点
雪渓や秘湯の谷に見え隠れ
一匹の迷ひ子のごと雪渓に
雪渓の深き底より水の音
雪渓を絶景として湯のなかへ
水場所を訊ねば雪渓指差せり
雪渓や神も仏もなかりけり
雪渓の形で占う好き嫌い
大雪渓名付けて旨し地酒かな
水車小屋雪渓迫る廂まで
一筋が汚れし雪渓皐月かな