兼題「墓参」金曜俳句への投句一覧(8月30日号掲載=7月末締切)
2013年8月6日7:35PM|カテゴリー:櫂未知子の金曜俳句|admin
「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です。
選句結果と選評は『週刊金曜日』8月30日号に掲載します。
どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。
amazonなどネット書店でも購入できるようになりました。予約もできます。「週刊金曜日」で検索してください。
【墓参】
年経りてやや華やげる墓参かな
墓参子らは知らない父母祖父母
村の井に貰い水する墓参かな
立ち話の母遅れ来る墓参り
今年よりひとり多くて墓参
入る気のなき墓なれど洗ひけり
団塊の中のひとつの墓洗ふ
一人来て報告一つ墓参かな
墓参り手向の花にアマリリス
風立ちぬ雲天際に墓参かな
御先祖を丸ごと洗ひ墓参かな
良き話悪き話を持ち墓参
毎年の遅参詫びつつ墓洗ふ
墓参り昔の顔に出合いけり
墓まゐり一族にして子がひとり
墓参り前ゆく祖母の影短し
「手桶持つ」と子らの騒動墓参り
墓参どの子がどこの子かわかる
誰か来た気配の煙草墓参かな
墓参り高速道が近くする
墓洗ふ役割母と姉がして
墓参幼馴染の再生産
墓参りして犬のこと猫のこと
まず束子の苔落としての墓参り
墓参り消えた碑銘に墨を入れ
参るひと無くて墓ある両隣
冥界を身近に想う墓参かな
墓洗ふ染みつつ乾く珊瑚砂利
門前の町賑やかに墓参かな
墓参マトリョーシカの横並び
墓参われに風葬似つかはし
葬送の自由と言ひて墓参
卒塔婆の風に音する墓参
墓参去年と同じぼろ蛇口
汐風がシャツ膨らます墓参
文字の朱を落とさぬほどに墓洗ふ
亡き人の好物持って墓参かな
昨日の墓参に我もをりにけり
軍人の肩書き長き墓洗ふ
華麗なる一族なりし墓洗ふ
(海岸に流れ着いた死人に、時の住職が付けた戒名)
墓参する着岸信士の名も見えて
青い目の婿も手合わす墓参かな
墓参り海の向かうに漁り船
卒塔婆に蝉の抜け殻墓参かな
初乗りの拾円足らぬ墓参り
墓洗ふ我は見て居るだけだった
故郷の山に頭を下げ墓参
あたま空っぽにしてから墓参
墓洗ふ母の背丸くなりにけり
妻の戒名まだ暖かし墓参する
煙草の香しばらく手向け墓参かな
墓洗ひゆつくりと煙草を飲みぬ
無沙汰して母の愚痴聞く墓参り
ご面会墓参ついでにくそ坊主
手を合わせ愚痴二つ三つ墓参かな
ウォートカの瓶供へある墓参かな
歴女墓参紫煙の香不遇の士
墓参父は慌てて墓石に
墓参この頃みんなチャッカマン
水桶の係と任ず墓参の子
いつきても手順は同じ墓参り
亡き祖父の声色交へ墓洗ふ
別荘地抜けて墓参の林かな
墓参する叱ってくれる父のもと
雲湧きて揺らぐ富士背に墓参
寂光を受けて日暮れの墓参かな
役割を割り当て仮に墓洗ふ
隣りにも手を合はせてや墓詣
石畳に足を取られて墓参り
墓参三軒分の供華抱いて
生前のごとく無口な墓洗ふ
墓参り隣の新(さら)の塔婆かな
墓参から帰りて洗ふ母の足
水かけて話かけるや墓参かな
夕焼ける無名戦士の墓参
墓参り折合わぬままの父母眠る
新しき家族従え墓参り
仲の良き家族を見せに墓参り
墓参線香二本の重さかな
名増えても石にまだ空き墓参
山門の大杉にまず墓参かな
大いなる胸乳を揺らし墓洗ふ
墓参平均身長が高い
故人への供物さまざま墓参
その理知らずハカマイラーを傍観す
共生と添ひ寝は類語墓詣
墓参する兄二十三少佐なり
生前を知らぬ曾孫が墓洗ふ
線香の束よく燃えて墓参
墓参していつも気になる老麺屋
墓参父の手つきで帽子脱ぐ
太平洋見下ろす丘に墓参
掃苔や二件の墓所を廻らねば
海よりの光と水に墓洗ふ
祖父の背の広さを思ひ墓洗ふ
おもひおもひかたまり歩く墓参り
幼子の何を手合はす墓参り
石段の海へ傾く墓参
墓参する土葬の父の眠る山
墓石(はか)掃けば先祖の御霊蜈蚣(むかで)かな
赤土や島を出る日は墓参り
駅からは更に一里の墓参かな
止めるより続けることぞ墓参り
掃苔に焼香終えて蚊の餌食
墓洗ふ長女代々左利き
荷を解けば母は外で待つ墓参り
嫁となる娘(こ)の挨拶の墓参り
墓参あとはらからと喰む握り寿司
墓参する特攻の兄二十三
墓参り田畑抜けて坂攀じて
ふるさとの水かけてやる墓参かな
墓参僧侶の読経訛りあり
墓参場所元尾西市篭屋町(現在一宮市)
墓参り星野ばかりの道を抜け
ぞろぞろと山道登る墓参かな
角にある立木を探す墓詣
日をずらし独り生家の墓参り
「先祖」なる二文字を拝む墓参かな
行年を西暦に読む墓参かな
伊予よりの線香供へ墓参
墓参りして身の軽くなり野辺の花
伸びし爪微かに擦れ墓洗ふ
墓参さて水ふりかけて終はりけり
墓参する場所の住所も知らざりし
小坊主の車の赤き墓参り
寝坊して墓参に行かぬ年となる
たどり着けばみな押し黙り墓参
墓参する花月梅芳信女とは
墓参場所の正確な住所を知りたかり
この年は憂きこと多し墓参
墓前では殺生なしと知るや蚊め
墓参り墓石に放つ一人言
墓石を倒さぬやうに墓参かな