きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

兼題「水澄む」__金曜俳句への投句一覧(10月25日号掲載=9月末締切)

「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です。

選句結果と選評は『週刊金曜日』10月25日号に掲載します。

どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。

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【水澄む】
その昔情死のありし水の澄む
ゆかしきは書中の人や水澄めり
沢音の密やかとなり水澄めり
水澄むや一本道を行くは誰
水澄むや心の旅路信州路
水澄むや大河の統べる出羽の国
水澄むや心の中を見透かされ
水澄むや吊り橋渡り終えて見る
水澄みて木の葉積もりし池の中
蕎麦店にこながれの水澄みにけり
谷川の澄み魚跳ねし音を聞く
水澄みて緋鯉の恋と犬の恋
村なくす豪雨の跡や水澄めり
澄む水に吸はるる山の鳥の声
天と地とやや鎮もりて水澄みぬ
水澄みて音なく落つる一葉かな
水澄むや病後といふは易きこと
水澄みて犬の舌先受け入れる
水澄みてマトリョーシカの三番目
水澄んでもう通り抜けできません
水澄みて出ベソになった金太郎
水澄めり叱り来し日々巻き戻す
水澄むや静寂といふ音のあり
澄む水へ手を浸け空の蒼さかな
水澄むや心澄むまで瀧の前
旧道の地蔵こけむし水の澄み
太き木は白で飾られ水澄めり
川底の砂金光るや水澄めり
浮雲を映して池塘水澄めり
おちこちの山を巡りて水澄めり
水澄むや看取りに幾つ悔いの数
水澄みて地塘に映る青き空
水澄むや生きる証の読書好き
水澄めり空容れしごと青く濃く
水澄むや空ゆくものに翳りなく
人多く禁止の札や水澄めり
水澄めり人の集まるリバーサイド
水澄むや砂紋の乱れ透けて見ゆ
水澄みて絵本に返す金の鍵
水澄んでふと間をおきてうなずけり
水澄みて身を沈めたき柿田川
水澄める国に見えても言えぬこと
水澄めば瀬音も近し山の宿
水澄んで雑魚のかたまりとほざかる
愁嘆のあとかたもなく水澄めり
川底の砂まきあげて水澄めり
水澄んで飛沫は木々に張り付けり
句作して水飛んで来る澄んで居る
水澄むやはろばろ届く紙の文
祖谷峡の秘めたる深さ水澄めり
水澄みてしづもる鯉の浮き袋
大木の斜めに刺さる水の澄む
人声の消えてひとりや水澄める
水澄むや笹舟吹いて見送りぬ
顔と手と小さくつけをり水澄みぬ
配布するチラシ澄む水流速で
澄む水の底を小魚にごしをり
水澄みて学童走る陸の上
生き難き世を生き継いで水澄めり
生きるとは生きていること水の澄む
奥深く水澄みてなほ奥深く
水澄むや関の孫六研がれをり
開け座敷木桶の底の水澄めり
水澄みて魚のいない池だとは
水澄んで光ほどけてゆくところ
吾出づれば人無き家や水澄めり
水澄みて先々にをる罔象(みづは)かな
水澄みていよいよ亀の首長し
水澄んで願ひ事まで多くなり
水澄むや湖の上下に浮御堂
水澄めり一事が万事てふ人よ
富士の雨五十年後に水澄むと
源流も河口も美濃の水澄めり
水澄みて魚より速く影動く
呻吟の果の脱稿水澄めり
水澄みて先頭はクマ歩こう会
笹舟の左曲がりに水澄めり
水澄むやゴム手袋の伸び縮み
淵深く速き魚ゐて水澄めり
水澄むや藍より深き不動滝
階をのぼれば阿吽水澄めり
澄む水を懐に抱く深山かな
水澄むや余波のほとりに魚静か
朝靄の切れ目の下の水の澄む
五千石傷つくまでに水澄みて
水澄めば人の声澄む無人駅
水澄みて汝の恋を捨てなさい
水澄めり遠い谺を聞くように
水澄むや飛ぶものの影みなやさし
澄む水のあえかな行方見送りぬ
瑠璃沼の瑠璃を深めて水の澄む
水澄みてあなたの捨てた金の鍵
水澄むや手を取り合ひて乙女像
神木のそばで句作し水澄めり
水澄みて光の国のウルトラマン
水澄みて水を掻きだす音すなり
薄刃研ぐ力ほどほど水澄めり
水澄みて誰か呼ぶ声ありにける
水澄んでこよなき日和やさしくて
水澄みて魚の仮面舞踏会
坂東の果の小流れ水の澄み
没年を恋に与へて水澄めり
川面には魚影も無くて水澄めり
人さらに減らして水のさらに澄む
この庭の人影まれや水の澄み
水澄んで姫路の姉からの電話
石畳流るるパリの水澄めり
水澄むやどの色も皆名を持ちて
水澄んで雲を写して流れゆく
丁寧に川筋見せて水澄みぬ
富士山をまるごと入れて水の澄む
水澄めり頁いくつか角よごれ
急流のたゆたふところ水の澄む