兼題「十月」__金曜俳句への投句一覧(11月22日号掲載=10月末締切)
2013年11月13日10:01PM|カテゴリー:櫂未知子の金曜俳句|admin
「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です。
選句結果と選評は『週刊金曜日』11月22日号に掲載します。
どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。
amazonなどネット書店でも購入できるようになりました。予約もできます。「週刊金曜日」で検索してください。
【十月】
抱かれたい十月の月に抱かれたい
十月や古びて美しき民主主義
十月の山しみじみと人を恋ふ
十月の天へ走者まつさかさま
十月の山の真中にひとのこゑ
十月のコスモスの香に包まれん
やっくんとお菓子の思ひ出十月は
十月といふスイッチを入れる朝
花舗濡れて十月の朝はじまりぬ
十月や生きる証の名誉職
十月の旅は小さきカバン持つ
十月や熱き血潮の沈みたる
木の葉散るごと十月の一日果つ
十月はおからドーナツだけの事
十月の空へ子供の鬨の声
十月は山狂おしき炎かな
十月も晦のあめ白湯沸きぬ
吹く風の爽やかなるや神無月
十月や平たく開く料理本
鍬研いで十月の田に打ち込めり
試験終え十月肩ににぽつんと在り
十月や記録書き替え空青し
十月や次は湖まで止まらない
十月の独りの山に陽の匂ひ
10月や爽快という青い空
十月や山の匂ひの懐かしき
吹く風の10月という珍しさ
十月は菊の中より武者出でり
十月の下北沢のもんじやかな
十月や尽きぬ話に酒替へて
吾輩のコーヒー十月を溶かし
暑からず寒からずして十月の恋
きらきらと十月何もなくて良し
十月のオレンジ色が指先に
十月や運動会に文化祭
十月の冷えあり執りしたなごころ
十月の国語辞典は大胆だ
十月のココアの味は浮かれ気味
十月や素早く読んで本綺麗
十月のまこといつわり裏表
十月の鉢植え多き我家かな
玻璃戸打つ十月の雨容赦なく
十月や西日に未だ力あり
十月を過ぎりゃ近ずく除夜の月
十月の朝餉は湯気に覆はるる
十月のつうと与ひょう夫婦哉
十月の手鏡の空塔たかく
十月や鳥なき空に鳥の声
十月や病む腕撫でて湯浴みかな
十月といふ街の灯のともりけり
十月の風のやさしき日本海
十月の独りの旅の昼の酒
口惜しや十月の空さやか友ゆけり
十月の空青くして月白し
十月の化石を含む地層かな
万年筆インクが固い十月だ
十月やおせち忘年会便り
十月や夜明け待つ花匂ひをり
人となる十月十日を拱いて
かにかくに十月の朝思ふこと
青信号気持ちよさげに十月は
十月のそれにしたつてどうなんだ
十月は誰がよぶ声ぞ野末より
十月は資格試験の雨あられ
十月の山に対座し親子哉
十月の秒針刻む阿弥陀仏
大風や十月になほ吹き止まず
十月の夕べの空の青き月
なにもかもいや十月の水たまり
十月に出逢ひし人を愛すべし
十月の風にはためく体操着
十月やこんな暑くて良いのかい
十月や沖縄行きのクラス会
十月の智恵子の空を捜してる
休日や十月の海休まざる
十月の風も味方に子の駆くる
十月やころも重ねる風の音
十月や夏秋冬が街歩く
十月のシャッター街や深日射
十月のさやかな空気福島よ
十月の神はいずこに糸瓜水
十月の光は優し北の国
十月やそろそろ人が恋しくて
十月の舟に野のはな川漁師
十月やピラカンサスの実のたわわ
10月の畳の中に風を入れ
十月や歩こう会の通知来る
十月は人恋しかな酒もまた
十月の雪虫我を離さじと
十月の今夜はちあきなおみかな
十月や魚影ただしき魚たち
十月の街路樹はたと色づきぬ
十月やオヤジバンドを解散す
十月や寝そびれて引く重き辞書
十月の悔いなおはれず五十年
十月の天から降るや百舌鳥の声
十月の風に踊るはカレンダー
十月の水まろまろと水の際
十月の体内時計すぐお昼
十月を棒しなはせて跳び越ゆる
10月の日本一のふじあさた
十月の手紙に畳む夜の匂ひ
十月や一枚羽織る野島崎
十月の草のぬくさや片想い
十月の空へまつすぐ竹とんぼ
居残りの教室冷ゆるもう十月
十月や十二支の木目細やかに
十月の風を見てゐる伊良湖岬
十月や留守神の社に参詣す
十月の爪鮮やかにもの剥し
十月や薪割り終えし蕎麦屋かな
十月の飲み忘れたるジャスミンティー
十月の耳に残った関西弁
十月や日記の天金薄れたり
十月や外出好きの万歩計
十月や少女の脇を戦車過ぐ
十月のパラグライダー着地せず
十月や猫の毛並に艶戻り
十月の風にバイクの人となる
長いかな十月十日の宮ずまい
十月の月なき夜々のけものみち
クッキーの思ひ出十月暮れて行く
十月の空いつぱいに万国旗