兼題「煤逃」__金曜俳句への投句一覧(12月20日号掲載=11月末締切)
2013年12月17日6:23PM|カテゴリー:櫂未知子の金曜俳句|admin
「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です。
選句結果と選評は『週刊金曜日』12月20日号に掲載します。
どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。
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【煤逃】
煤逃げのやがてさみしくとは言へど
煤逃の時計はいつも右回り
菓子折を手に煤逃の帰り道
煤逃の男はパチンコ玉の滝
ここ確か納戸と思ふ煤籠
煤籠させたつもりの猫がくる
煤逃や買わぬ硯を見てをりぬ
煤逃や先代譲りの将棋盤
煤逃の帰りの手にはショートケーキ
策略家煤逃げしたと気づかれぬ
煤逃や家の中よりまつりごと
煤逃に来て名画座の埃吸ふ
何もかも素直になりぬ煤籠
煤逃になじみの山を登りけり
へそくりも無き煤逃の我が書棚
診察日うまい具合に煤逃げし
煤逃げや居るも逃げるも愚痴の種
煤逃げや波紋重ねる隅田川
煤逃は釣果ありきで認めらる
煤逃を誘ふ電話の声大き
遠くへは行くまいつっかけの煤逃
煤ごもり寝足りないのも我慢する
煤逃の父還らざる五十年
煤逃や甘味処に客ひとり
煤逃の逆へ何かの一団が
煤逃の行き場のいまだ定まらず
煤逃の大罪犯しカフェの客
煤逃や幼児付きで命を受く
煤逃の代償高くつきにけり
煤逃や晴天やけに眩しくて
煤逃をして神将に叱らるる
煤逃の手順の狂ふ雨催ひ
煤逃が上手と言はれ後始末
煤逃げの子等も大きくなりにけり
煤逃といふといへども杉並区
煤逃のやうなる猫と遇ひにけり
禁断の果実を守る煤逃に
煤逃や座敷童のやうに居る
煤逃やサンタクロースは違います
煤逃げの心半分家に置き
煤逃に今年も友を使いけり
煤逃や妻を無口に追ひこみて
煤逃のパレットの絵の具乾く
煤逃の湯気を一気に啜りけり
煤逃と悟られぬやうネクタイす
煤逃げを許さぬ妻の逆箒
煤逃げのやうでもありぬ紙コップ
煤籠完投試合増やしたし
煤逃のあるは幸せひとつふえ
煤逃の顔ぶれ同じ珈琲屋
煤逃のケータイに着く帰宅せよ
煤逃の父に訊きたき写真かな
煤逃に紛れて姿眩ませる
昔日の家族のことなど煤払
煤逃やベレー帽など被りゐて
決然と煤逃げ体制迫られて
煤逃げもせず五十年在る二人
相席は煤逃げらしき老ひとり
煤逃と言うてはるばる巴里にまで
煤逃げて地球の裏にまでもかな
煤逃や我が一部屋を持て余す
煤逃や湯屋番といふ落語あり
煤逃げて恒例となるシネチッタ
奮発をして煤逃げの帰り路
煤逃げてこの世はみ出るつもりかな
煤逃げや遠回りして笹刈りに
煤逃げし親爺バンドの第九かな
どの部屋も専有なりし煤払
煤逃や四五日続け起居楽し
三回目煤逃の技上達す
煤逃げの釣り人囲む二、三人
煤逃げの靴はきついは重たいは
煤逃の半日だけの旅とする
煤逃げの一家言持つ事にする
煤逃のハワイサイパングアムかな
これからは煤逃ばかりどないしよ
すす掃やこの世の不条理何とせむ
煤逃の哲学者立つ美術館
煤逃のひと筋残るうしろ髪
主婦だとて煤逃したきエステ店
煤逃やそれでも日本捨てられず
煤逃の人に持たせるエコバッグ
煤逃げと称して近所の釣具屋へ
煤逃や俳句短歌に川柳詠む
家人皆煤逃と云ふ急仕事
煤逃げの妻戻るつもりなかりけり
煤逃を隣家の犬に咎めらる
共稼ぎ夫の煤逃許すまじ
煤逃としてトリュフォーの二本立て
煤逃やたよりなき吾一番手
煤逃や蕎麦屋でひとり昼の酒
タイミング計る煤逃確信犯
煤逃や付合ひのよく猫の名も
煤逃げし憂国語る二人かな
煤逃や仲間はずれも良き仲間
煤逃の盛り上がっている離れかな
百方に非難の声や煤逃げて
煤逃げの部屋樟脳の香にも慣れ
煤逃の男が集うパチンコ屋
煤逃げや頃合い計る帰り道
煤逃のパーマをかけて戻りけり
煤逃や見知らぬ犬に吠えられて
煤逃げや道々拾ふ塵芥
煤逃や大工道具を持て余す
煤逃げに穴馬のきておちつかず
煤逃を理由にしたき昼の酒
煤逃や割引券で観るゴッホ
自転車を磨き煤逃終りとす
おや君も煤逃げだねと笑ひけり
煤逃げや不要なものを一つ買ふ
煤逃や納屋奥にある竹箒
煤逃や帰ってみれば待っており
煤逃げに思いもかけぬ大フィーバー
煤逃げのちよいとそこまで歩きたい