兼題「鮟鱇(あんこう)鍋」__金曜俳句への投句一覧(1月31日号掲載=2013年12月末締切)
2014年1月14日5:06PM|カテゴリー:櫂未知子の金曜俳句|admin
「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です。
選句結果と選評は『週刊金曜日』1月31日号に掲載します。
どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。
amazonなどネット書店でも購入できるようになりました。予約もできます。「週刊金曜日」で検索してください。
【鮟鱇鍋】
鮟鱇に栄養論で開く鍋
雪催い鮟鱇鍋に決まりけり
集まれば何はともあれ安鱇鍋
鮟鱇鍋あいつの箸が気にかかる
逢ふためか鮟鱇鍋を喰ふためか
深海は此に続きて鮟鱇鍋
論途切れ鮟鱇鍋の煮ゆるかな
鮟鱇切らるる梅園へ向ふ路地
三人の鮟鱇鍋に固唾呑む
鮟鱇鍋あちこちの間の笑ひ入る
路地裏へ鮟鱇鍋の灯が誘ふ
青空を噛む鮟鱇の牙となる
寒い時は寒いのがいい鮟鱇鍋
銀婚の愚痴を聞いてる鮟鱇鍋
縄のれん鮟鱇鍋の夜の更けて
取り立てて寿ぎもなく安鱇鍋
鮟鱇鍋ライバル意識の見え隠れ
鮟鱇の無骨な顔を見せぬ鍋
鮟鱇の頭想いてつつく鍋
鮟鱇のぐらりと揺らす能登の海
申し訳程度の鮟鱇鍋に耐え
潮騒の間遠に交じる鮟鱇鍋
鮟鱇の処刑の如く捌かれる
鮟鱇鍋我が家は嬶天下なり
突堤の夜を呼び込む鮟鱇鍋
転生の鮟鱇はいや吊し切り
鮟鱇の鍋に浸け入る夕明り
海うねり吊り鮟鱇の面構え
鮟鱇鍋の幟立ちたる地下の街
鮟鱇を捌く舞台の整ひて
鮟鱇の煮られぶつくさ言ひ始む
弔問の面々集ふ鮟鱇鍋
鮟鱇鍋くちびるにキスをしてから
鮟鱇鍋生きているとはこんなこと
鮟鱇のどぶ汁熱き漁港かな
鮟鱇鍋ぶつぶつと愚痴煮えにけり
麗しのマドンナも鮟鱇鍋か
鮟鱇鍋湯気に自と笑ひをり
糶る前の鮟鱇何も語らずに
深海の鮟鱇煮えて鍋の中
セザンヌに描かせてみたき吊り鮟鱇
行きつけの居酒屋おばん鮟鱇鍋
眼裏にあの顔浮かべ鮟鱇鍋
〆切の催促が来し鮟鱇鍋
平社員三人すとんと酔う鮟鱇鍋
フリー切符鮟鱇鍋に辿り着く
鮟鱇に似たる男ら鍋囲む
鮟鱇を捌く手ごころなかりけり
デザートは別腹と云ふ鮟鱇鍋
むくつけき漢の皓歯鮟鱇鍋
隣席とほどよく離れ鮟鱇鍋
どの卓も姿を偲ぶ鮟鱇鍋
寿司で食べ鮟鱇鍋に代用す
クラス会鮟鱇鍋に座の和む
鮟鱇鍋初日舞台をこきおろす
鮟鱇をくるりを回し捌きけり
鮟鱇のどぶ汁ならばコップ酒
一度だけ鮟鱇鍋はそれっきり
肝つ玉でかく鮟鱇煮え上がる
鮟鱇鍋効果音めく浪の音
荒海の飛沫の匂ひ鮟鱇鍋
風音に曇る硝子や鮟鱇鍋
窮屈に鮟鱇鍋の2DK
鮟鱇鍋語らふことの多かりき
悪友ら鮟鱇鍋に舌つづみ
鮟鱇の大往生を見届ける
あんかうの顎の杓れてをりにけり
幕末の暗き刀痕鮟鱇鍋
鮟鱇鍋窓を開くと土手の風
占ひに向かぬ鮟鱇鍋なりき
隅の座は照らされぬ店鮟鱇鍋
深海とはどんなところか鮟鱇鍋
焼き豆腐葱が主役の鮟鱇鍋
鮟鱇鍋常磐線を途中下車
深酒をして鮟鱇の顔になる
荒海のやうな女と鮟鱇鍋
鮟鱇の闇暴かれて鍋となる
鮟鱇鍋果ててにわかに風つのる
一度だけ鮟鱇鍋は卓に来て
楸邨の鮟鱇鍋を食しけり
鮟鱇の鍋荒らあらし海の音
暗黙の了解ありて鮟鱇鍋