兼題「寒造」__金曜俳句への投句一覧(2月28日号掲載=2014年1月末締切)
2014年2月5日2:15PM|カテゴリー:櫂未知子の金曜俳句|admin
「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です。
選句結果と選評は『週刊金曜日』2月28日号に掲載します。
どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。
amazonなどネット書店でも購入できるようになりました。予約もできます。「週刊金曜日」で検索してください。
【寒造】
暗がりにおはす神棚寒造
あかときに下駄音高し寒造
難しき季語寒造日向ぼこ
寒造むかし櫂歌の十石舟
寒造肴は苺大福で
寒造タートルネックのセーターで
寒造り夜は潮騒の中に寝る
御預けの寒造秘匿され半年
妻と子を恋ふ唄うたひ寒造
寒造舌鼓打つ苦き夜
飲まずとも匂いそのまま寒造
杜氏の声梁より高し寒造
寒造塩辛よりも大福と
水を愛で★を愛でて寒造
★=酉ヘンに花、こうじ
それだけで嬉し寒造とあらば
蔵人の湯気立つ腕寒造
夜の闇引っ張り込んで寒造
寒造純米無濾過大吟醸
寒造水とお米と息合わす
寒造りぐっすり眠れ巴里まで
運び手の腰のしなやか寒造
伊勢の酒寒造だと思ひなす
湯豆腐と京菜漬けとで寒造
寒造ステンレス製のとっくり
肩厚き南部杜氏や寒造
寒造スパークリングになっちゃった
湯気まとゐ蔵唄耳に寒造
父の遺影に一杯の寒造
無言にて糀と話す寒造
日の光緑の瓶の寒造
寒造悪友どもとの長談議
若衆と湯気飛び込み来寒造
蔵巡る路地を増やして寒造
寒造子らと飲むのも久しぶり
雪稜に残照映えり寒造
寒造蔵に手合はす杜氏妻
寒造やむにやまれぬ綱渡り
おととしの合格祝ひの寒造
寒造の蔵に真白き花咲けり
寒造り杜氏に魅かるる女友
寒造蔵屋敷ごと光り立つ
漕ぐ舟の櫂歌もよけれ寒造
仕込まるる来世なつかし寒造
寒造杜氏駅まで送りけり
寒造り若き杜氏の喉仏
里風の尖りはじめて寒造
寒造ひさかたぶりの師の便り
真つ白の鉢巻を締め寒造
寒造とっくり襟とは言わないの
蔵人は諸肌脱ぎて寒造
寒造杜氏の話思い飲む
ムニニイモ仕込みて楽し寒造り
どぶろくの味忘れまじ寒造り
友呼んでまずは一献寒造
俺なんて言ってみている寒造
祈りよりはじまる里の寒造
寒造り杜氏の魂のかもす味
神よりの水恃みけり寒造
里山の一川静か寒造
百年の梁の太さや寒造
唄声を太く揃へて寒造
寒造波平さんと飲んでいる
寒造り裏で働く女どち
蒸し米の湯気に腕入れ寒造
寒造峡の蔵たち烟りをり
飲み頃は花咲く頃か寒造
寒造大八車で引かれたい
夕月の色冴へてきて寒造
まあ一杯寒造だと自慢げに
蔵人のお国訛りや寒造
水空気杜氏の腕の寒造
裏窓に朝日貼り付け寒造
耳すます一語一語の寒造
震災地魂込もる寒造
寒造終はり何処かで赤子泣く
寒造日差しこぼれる酒蔵で
元モデル女社長の寒造
杜氏のゴム長靴清し寒造り
ありあけの星を忘るる寒造
ゆったりと一人飲む夜の寒造
仕込み水樽へた走り寒造
寒造水と醪の迷路かな
寒造り杜氏の妻といふ人も
冬惜しみ里山歩き寒造
寒造母胎のにほひ醸されて
甘み増す寒大根や寒造
酌み交わす常温良し寒造
充ち満ちて滴歌ふや寒造
苦々し思い飲み込む寒造
北陸の雲重なりて寒造
言祝ぐといふラベル貼り寒造
寒造かと思ひきや梅酒であり
金槌の打つ音するや寒造
寒造杜氏を駅に迎へけり
酒樽の杉の香清し寒造
杜氏みなIターンなり寒造
峡深く静もる朝や寒造
出羽富士の涌水守るや寒造