兼題「樹氷」__金曜俳句への投句一覧(2月28日号掲載=2014年1月末締切)
2014年2月5日2:30PM|カテゴリー:櫂未知子の金曜俳句|admin
「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です。
選句結果と選評は『週刊金曜日』2月28日号に掲載します。
どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。
amazonなどネット書店でも購入できるようになりました。予約もできます。「週刊金曜日」で検索してください。
【樹氷】
一行の足下広き樹氷林
淋しくば樹氷になっちまひいなさい
何の木か樹氷の形それぞれに
樹氷林中にいきものたち騷ぐ
樹氷界これより時の動き出す
山肌は樹氷を持たぬ方が美し
地蔵尊胸まで埋まる樹氷林
無量なる海老の尾まとふ樹氷林
信ずれば樹氷の如く立ち尽くす
高き陽の白くてまろし樹氷林
往き逝きて還らざる霊樹氷原
雪原にぬうと突出る樹氷かな
樹氷みな風に手を伸べ凍てつけり
添ひ遂げむ樹氷は今日も確と立つ
樹氷林等高線の辺りまで
淋しくば樹氷でよいのではないか
氷る樹や間歇泉は噴き止まず
樹氷林北陸紀行で目鼻活き
夕映えの樹氷は待つといふかたち
メタボリック・シンドロームは樹氷にも
星空の樹氷眼をもらひけり
着膨れて樹氷の下の散歩道
白無垢や咲誇りたる樹氷林
バスに居て樹氷の過ぎる速さかな
神々の座を見はるかす樹氷かな
樹氷林寂として空はれわたる
影法師身動ぎもせず樹氷かな
風音の張り付いていく樹氷林
樹氷の日や饂飩に海老二つ
ひと一人閉ぢ込めてゐる樹氷かな
なにもかも厭なら樹氷になっちまへ
それでもまだ正体不明樹氷林
うずくまり立ち上りする樹氷かな
樹氷無き我が居住地を呪ひけり
伸びてゐる樹氷の影の青さかな
樹氷林縹色して暮れゆけり
新しきシュプール四筋樹氷縫う
巨体寄せ合ふやうに立つ樹氷林
樹氷生ゆ木々に怒りはなかりけり
歩き出す構へとなれる樹氷かな
居並ぶも同じものなき樹氷かな
鉄塔のまず夜明けたる樹氷かな
整然と傭の如くに樹氷林
寄る辺なき鳥の来てゐる樹氷かな
星影をほのかに抱く樹氷林
日も影もみな縹渺と樹氷林
ありあけや樹氷をちらとまた眠る
夢の世に夢のつづきを見る樹氷
はばかりの小窓明かるき樹氷かな
樹氷林裏に置かるるブルドーザー
月光に亡者居並ぶ樹氷かな
黄昏に樹氷取り巻く懺悔坂
七十路の夢でもあわぬ樹氷かな
樹氷伸び滑走するを眺めおり
立ちまどい吹雪の音きく樹氷かな
樹氷と小リキュール喉を転げ落つ
舞ひ溶けぬ定め由々しき樹氷なり
凍晴や樹氷のけぶる北下し
白極め樹氷なす山膨らみて
ひたすらにメモの旅行で樹氷無し
樹氷林指し示したる向ふの世
病窓や樹氷育ちてゆく静か
日のかけら四方に舞はせて樹氷散る
樹氷より樹氷を抜けるスキーかな
一柱二柱もう樹氷林
樹氷なす背山に白き谺して
谺もて樹氷の眠り砕かんか
バスタブにバブ落つすねの樹氷かな
酒で侃々諤々で樹氷過ぎ
樹氷林絶ってはならぬ命かな
雑念を樹氷の内に閉じ込めり
ししぬくし樹氷のとめしそらのをと
片頬に夕日纏いて樹氷かな
濡れてゐるものひとつなく樹氷界