兼題「花疲れ」__金曜俳句への投句一覧(4月25日号掲載=2014年3月末締切)
2014年4月15日4:28PM|カテゴリー:櫂未知子の金曜俳句|admin
「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です。
選句結果と選評は『週刊金曜日』4月25日号に掲載します。
どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。
amazonなどネット書店でも購入できるようになりました。予約もできます。「週刊金曜日」で検索してください。
【花疲れ】
花疲れはたして気でも吸はれしか
花疲駅までの道止まらずに
さすらひの追ふて追はれて花疲れ
花疲れ呑まず食わずで終い風呂
花疲れ浦上天主堂に雨
茣蓙畳む男の影や花疲
歯科医院開業花の疲れかな
花疲れ足も疲れし妻はどこ
ウォーターベッドあるらし花疲れ
花疲れ事故収束の見えずして
花疲れタイ焼き店とカメラマン
花疲ベンチにごみをかたへにし
花疲れ花褒め茶屋の客となる
花疲ればかりといえぬ疲れかな
身にまとふ川のにほひや花疲れ
垣間みる妻の油断や花疲れ
歩くだけ車乗るだけ花疲れ
美しい人美しく花疲れ
汗臭き上着になごむ花疲れ
酔ひながら花に溺れて伏せにけり
花疲れ色香求めて遠出かな
花よりも人に疲れてしまいけり
おつぱいをたつぷり呑んで花疲れ
花疲れ雑踏に身を流しゐて
肩と首傾け続け花疲れ
花疲れ渡しの水緒に暮れかかる
遠巻きの人声かすむ花疲れ
風塵にまみれしあとの花疲れ
花疲れ他人が触るる他人の手
中座して浴場の隅花疲れ
大木を見上ぐ眩しさ花疲れ
花疲れ指十本をたしかめて
シニアパス買ひてるんるん花疲れ
指先の盃重き花疲
花疲れさらに増したる一合酒
交番の赤の灯りや花疲
泌尿器の弱い男や花疲れ
新聞の畳まれしまま花疲れ
前線の便りを聴いて花疲れ
花疲れ回転寿司屋は眩しかり
船送る欄干に倚り花疲れ
しづけさの自分に帰る花疲れ
花疲れ家に帰りて団子かな
花疲れはなびら踏みし靴脱げば
遠い道花束かかえ花疲れ
駅頭の華やぐ香り花疲れ
両頬の色に出でたる花疲
バス待ちの列各々の花疲
BARで飲むチェリーブロッサム花疲れ
花疲れ識らぬころには更に呑み
花疲れとは昂りて眠れぬ夜
花疲れ言ひたきことも言へぬまま
無礼講と部長隣に花疲れ
北上の旅に同行花疲れ
花疲れことに肩甲骨あたり
花疲ブルーシートに主の無き
花疲れ登り倦ねし大手門
コカ・コーラグラスに残る花疲れ
マニキュアの指遠ざけむ花疲れ
松葉杖ふくらんでゆく花疲れ
頬染めし人のやがては花疲れ
よそおいをあらたにせんと花疲れ
花疲れしたる黒髪撫でてをり
癖髪に絡むバレッタ花疲れ
旅の地に心地よきかな花疲れ
シャンペンの泡生る杯や花疲れ
日溜まりの鳩膨らみて花疲れ
花疲帰りの路は燭ひとつ
妻の手をいつの間に借り花疲
切株のなんとせつなく花疲
陀羅尼助買うて戻りし花疲れ
花疲れカーテン引けば曝(さ)れてゐる
花疲れ花にもありし人疲れ
二人行く夜道に花の道続く
花疲れライトアップのおぞましく
花疲れ増すや満杯地下ホーム
白濁の足湯に癒やす花疲れ
話し声まばらになりぬ花疲れ
二の腕の裏つねられぬ花疲
花疲れ畳にのこる紐の数
前髪を直す手つきに花疲
娘らの会話道連れ花疲れ
花疲れテレビドラマの筋追へず
にぎり食ふため息まじる花疲れ
花疲れ運河に浮かぶ雑誌かな
花疲れありて至福ぞ更(また)あるや
しどけなく胸元あけて花疲
花疲れ音するやうな脹脛
花疲れまなうらに寄す人の波
花疲れ徳利ひとつに猪口ふたつ
花疲れ帰りの電車立ちしまま
花疲して一場の夢と消ゆ
句帳には落花一枚花疲れ
福寿草残雪はらふ花疲れ
バスに乗り三都を巡る花疲れ
近づけば近づくほどに花疲れ
母の間の灯しづかに消ゆ花疲れ
花疲してたどりけり坂の道
花疲れ夜明けも夢も半ばかな
花あふれ花過ぎにけり花疲
名所とて飲めや歌えや花疲れ
濡縁の座布団円し花疲れ
花疲郵便どさと届きけり
酔ひ覚めの目に残照や花疲れ
みな少し優しくなつて花疲
とは雖(いえど)欲得なしに花疲れ
上着脱ぎ一片こぼる花疲
心音は耳に届かぬ花疲れ
花疲れ旅の途中の心地して
畳目のつきし右ほほ花疲
花房の肩に重たし花疲れ
背の留め具外すも疎し花疲れ
花疲れただ蜿蜒と長堤
去りがたく手も離せぬに花疲れ
家苞の湯もち重たき花疲れ
娘らの笑い道連れ花疲れ
姫路の姉に逢つてもう花疲れ
サクラチルライキヲキス花疲れ
西行の花歌あまた花疲れ
異国語のカタコトのごと花疲れ
花疲れして最終回の話読む
花疲れ甘味処の静かなり
誘ひくれし友ありがたき花疲れ
花疲れ雅を尽くし島暮るる
花疲してだんだん坂の夕日かな
花疲れ時速を上げて吹き飛ばす
頃をみてゆるりと行くか花疲
淹れし茶の冷めゆくままに花疲れ
明日のこと明日に延ばして花疲れ