きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

兼題「粽」__金曜俳句への投句一覧(5月30日号掲載=2014年4月末締切)

「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です。

選句結果と選評は『週刊金曜日』5月30日号に掲載します。

どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。

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【粽】
結はれ終え粽暴走車を生めり
粽解くそこはかとなく日の匂ひ
婆さまの結ひ直したり笹粽
笹葦で風味とじこむ旨粽
差し入れの粽を盛りてクラス会
襷掛け粽をつくる手の年季
笹剥けば螺旋の跡の粽かな
頷づきつ指は確かに粽巻く
粽など欲しがらぬ子ら腹すかせ
器用さの笹紋つけし甘粽
粽解き昔ばなしにはながさく
巻き始め探す粽のもどかしく
すんなりと解ける母の粽紐
粽食べ稲荷を食べて初節句
粽結ふ笹の葉ずれの音させて
結び目の固く結はれし粽かな
仏前に粽供えて孫を待ち
送られし冷たき粽里の香
粽の差競ひし兄の先立ちぬ
卒寿の母解くに難しき粽かな
ふくよかな手より出は粽かな
存らふや粽におもふこと少し
粽剝ぎ思いあふるる事の有り
その上の由来は知らず粽食ぶ
粽結ふ女系家族の手の捷さ
日雇ひの少女の結へる粽かな
デパートに粽売場と寿司売場
粽解く無駄な動作と思ひけり
粽結ふ手際も老えり故郷に
資本家の横暴のごと茅巻かな
粽とく一日待って捨てるごみ
粽結ふ宇宙の果ての話して
粽食べお開きとするクラス会
裏山の笹のにほひの粽解く
食べたさを我慢の粽少年期
粽とく日本に平均寿命あり
結局は元の二人の粽かな
粽巻く手順訓へし祖母の声
添加物なき食よしと粽剥く
避難所の懐紙に受くる粽かな
腕白が次々に解く粽かな
風渡る田の明るさや笹粽
ほどかれた粽の紐のだらだらす
粽結ふ材料集めを託さるる
築百年柱の傷や粽剥く
青き香の湯気立ててゐる笹粽
笹よりも少し元気に粽結ふ
TPP小さき粽に込められし
薩摩より届きし粽のかほりまず
娘越へ孫に伝授する粽
外さずにドライブ・インで粽買ふ
独語して粽解く母無心かな
三十年ぶりの祭りに粽盛る
死ぬなよと横たふ犬に粽解く
介護施設の母への土産粽かな
鉞の振り下ろさるる粽かな
昨晩の父帰宅せり粽かな
粽結ふ女おほかたほがらなり
もう買はぬ粽数年前の決意
腕白の笹は食へぬといふ粽
笹粽むかしの味と変りたり
粽食ぶ傘寿の姉と古希の我
病妻へ京の土産に粽かな
粽結ふわたしの中のをさな子と
粽喰み無骨な武者の掌を想い
粽買ふ任務放棄が続きけり
粽巻くびっくり箱を包むやうに
粽食べ背丈を刻む柱なし
旅に居て越後なつかし粽買ふ
長男にして末つ子の粽かな
逆縁のあるやも知れず粽食ぶ
誰もゐない店の真中の粽かな
艶やかに粽蒸し上げ母逝きぬ
口には出せないかたちの粽食う
よき粽はらりと衣とき易く
兄弟の背丈逆転粽食ぶ
仮設の義父(ちち)粽喰らいて立ち上がる
手作りの粽の皮のチェック柄
粽結ふ少し遊びをもたせつつ
笹粽シンプルいちばんむつかしく
読みふける粽包まるローカル紙
粽にも棕櫚の葉裂いた紐を巻き
川の色野の色つつむ粽かな
しかと紐食ひ込んでゐる粽かな
愚図る子に黙って粽解きてやる
傘寿膳静かに粽ほどきをり
造り手の笹目残せし美味粽
粽解く手にも茅野のそよぎあり
粽結ふもどかしき指一瞥し
粽喰ふ父にむかしの山河あり
笹粽粒よく揃ひ越後より
粽手に嗤ひながらの異邦人
兄を見て弟の解く粽かな
祖母想ふことしきりなり粽食ふ
金太郎好みに結ふや笹粽
粽結ふ嚊(かか)の伝ふる味なじむ
未だしも火星に行かず粽食ふ
ゆつくりと粽解く間を愛すかな
老母へと初恋の人粽持ち
粽解く御伽草子を聞くやう