兼題「簡単服」__金曜俳句への投句一覧(7月25日号掲載=2014年6月末締切)
2014年7月11日7:31PM|カテゴリー:櫂未知子の金曜俳句|admin
「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です。
選句結果と選評は『週刊金曜日』7月25日号に掲載します。
どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。
amazonなどネット書店でも購入できるようになりました。
予約もできます。「週刊金曜日」で検索してください。
【簡単服】
日日同じやうなる妻の簡単服
引潮や簡単服の身ほとりに
畳み畳みほんの一握簡単服
簡単服作りし母の古りたる
意図のなき簡単服の艶かし
軽々と簡単服は風のなか
まんまるな簡単服の女の子
中だけの簡単服なら要りません
後ろから簡単服を測量す
母の香や簡単服の畳み皺
母もまた簡単服着て力帯び
牛丼と簡単服と私かな
あっぱっぱ婆怒りて路地を行く
私なら簡単服を引き千切る
素っピンの手足伸びやか簡単服
簡単服角を曲がれば幼き日
まつすぐな風が簡単服通る
簡単服の真中くだりぬ昼の酒
簡単服のままで行きたり年金課
あの時の簡単服は雑巾に
簡単服腰に巻いたり結んだり
緑陰に簡単服の昼寝かな
あかるくて簡単服のやうな人
簡単服似合うか聞きし若き母
大陸の簡単服の暮し方
まひるまや簡単服の母をらず
簡単服見せ合う母ら若かりし
海暮れて簡単服の娘等は
簡単服いつぽん筋を通しけり
ありがちな簡単服と私かな
風はらむ簡単服の花模様
幾つかの夏通り抜け簡単服
人形を簡単服に着せ替える
街中で初めて簡単服は生き
簡単服とほくて役場あたりまで
ジャワサラサ簡単服の一張羅
古書展やかんたん服の仕立方
海風に簡単服を膨らます
手放さぬ洗晒の簡単服
簡単服手足全てを解き放ち
昭和過ぐ簡単服を引き摺りて
ゴーギャンの女に習ふ簡単服
客多し簡単服を許されず
古ミシン簡単服の丈詰めし
製作の指揮権簡単服の夢
簡単服うしろから前からどうぞ
ぴかどんをおもへば母の簡単服
背広族簡単服に迎えられ
母の着る簡単服に風通る
涼やかな顔が簡単服の上
簡単に済まぬ簡単服選び
二の腕の白き簡単服を脱ぐ
野人かと見れば簡単服の母
風抜ける簡単服や杣住ひ
恋疲れ簡単服の素足かな
簡単服痕の大きしBCG
ししむらの淋しく垂れてあっぱっぱ
釣銭を黙って寄越す簡単服
どこへでも行ける簡単服だこと
母の忌や簡単服のあの昭和
曲線と成る直線の簡単服
浜降や簡単服の濡れしまま
山おろし簡単服をくぐりぬけ
イブニングドレスと笑ふ簡単服
親戚一同簡単服に喰ふ小言
この町に生きてゆかむと簡単服
母として過ごせし日日の簡単服
簡単服眩しく見えし幼き日
バスで行くディサービスのあっぱっぱたち
路地裏の簡単服の笑い声
卒寿過ぎ簡単服のよく似合ふ
主婦業を簡単服で執務中
解けそうで解けぬ簡単服の紐
怖いものなどないひとの簡単服
簡単服同性の目の厳しさよ
耐へ抜きて簡単服の昭和かな
あっぱっぱもう若くない膝頭
複雑な心隠して簡単服
簡単服女の一生読んでをり
雨脚に負けぬ簡単服のあり
臨月や簡単服の影確か
首筋の先づ老いてかな簡単服
まばゆさを簡単服は包みかね
簡単服心に身にも軽きもの
簡易服祖母に色々あるライン
眠る子に風を送りつ簡単服
簡単服母照れ笑いあっはっはっ
窓開けて簡単服をくつろげる
簡単服ならば抱かれてくれし猫
子を産んで簡単服となしりかな
あっぱっぱ昔はきっといい女
首ほそき簡単服とバスを待つ
物干に簡単服のふくらみぬ
浪速女の素材に凝りしアッパッパ
簡単服といえど天然素材かな
一筋縄では行かぬ簡単服の妻
すぐ乾く簡単服と海に入る