兼題「箱庭」__金曜俳句への投句一覧(7月25日号掲載=2014年6月末締切)
2014年7月11日7:35PM|カテゴリー:櫂未知子の金曜俳句|admin
「櫂未知子の金曜俳句」投句一覧です。
選句結果と選評は『週刊金曜日』7月25日号に掲載します。
どうぞ、選句をお楽しみ下さり、櫂さんの選と比べてみてください。
amazonなどネット書店でも購入できるようになりました。
予約もできます。「週刊金曜日」で検索してください。
【箱庭】
箱庭の井戸ひそとして残しけり
箱庭を仕上げこの家にひとりかな
我が畑箱庭のごと賑やかに
箱庭の白砂に何を鏤めん
風そよぐ箱庭の池眺めをり
箱庭を膝蓋腱反射で蹴って居る
水中に沈めてやろうか箱庭を
箱庭の弟に靴かくさるる
箱庭の外の世界をたゆたえり
箱庭に午後の雨音降り注ぐ
求人は箱庭に住むおじいさん
箱庭にアニメのフィギュア立たせ置く
箱庭にほんとの月の重かりき
箱庭に竜宮城とウルトラマン
箱庭も都市化や電子部品付く
箱庭に昨夜のキューピーの足跡
上からはつまらぬ箱庭だと思ふ
箱庭にあぐらをかいた寅さんが
箱庭にティラノサウルス置きし子も
箱庭のポパイも来てるティーパーティ
箱庭に私の命を継ぎ足しぬ
箱庭を踏み潰したき衝動かな
懸橋として箱庭を贈らるる
箱庭や秩父の深き谷を背に
鳥の影箱庭覆ひ尽しけり
箱庭を弄る少年庭師の目
箱庭に落ちて雨つぶ江戸の色
箱庭に虫を呼び込む苔を盛る
箱庭の庭には二羽鶏を
逆らわぬことの安住箱庭に
箱庭の借景にする比叡山
箱庭にこの世の夢を築きけり
箱庭に郷里の白砂混ぜにけり
箱庭の一軒茶屋でひと休み
灯籠を置き箱庭の引き締まり
箱庭に一匹の猫よぎりけり
富士置きて箱庭興味薄れをり
箱庭の隅に涙の壺ひとつ
家置きて箱庭に影生れけり
箱庭の空に置かれしほぐれ雲
箱庭の学校尋常小学校
箱庭や冷やしトマトを夕陽とす
箱庭の木陰に憩ふ魑魅かな
箱庭にいつも鬼の子留まれり
憂いあり山頂からの箱庭に
箱庭や京の名庭名旅館
箱庭をととのえまよいからさめぬ
物ばかりある箱庭に大き影
雲海に箱庭めけり竹田城
箱庭に川両岸に置く男女
箱庭の猫の足跡大きめに
箱庭に枯山水の砂紋描き
箱庭に現の雨の氾濫す
箱庭は桃源郷や縄暖簾
ふるさとは箱庭ほどの灯を燈し
夕されば箱庭の主ちと揺れて
箱庭に地震来てゐる夜更かな
箱庭に誰が置き据えし汽車ぽっぽ
箱庭のことりと動く水車かな
箱庭のここは十國そこ箱根
箱庭の高く振り上ぐ釣の竿
箱庭に小石をもちて友の墓
埴輪の眼箱庭を見ているやうな
箱庭は教室の外夢の中
箱庭のまたも大日本帝国
箱庭の真ん中に置く太鼓橋
箱庭に結界のある閑さよ
箱庭の小家に人も犬も無し
箱庭にLEDの陽が光る
宿題の箱庭リニア走らせる
良き疲れ箱庭療法坪畑
箱庭の雀の数のにぎやかに
箱庭の東屋に書く亭の文字
箱庭のどまんなかにはどんと妻
震災の箱庭復興哀し哉
箱庭に琵琶湖疏水を引き入れて
箱庭の殿様つつく雀かな
箱庭を作りし友が今逝けり
箱庭の作り直してやシンプルライフ
箱庭や心の杜にある故郷
箱庭の海穏やかと定めけり
箱庭の距離縮まらぬ男女かな
箱庭を巡る目に生ふ慕郷かな
箱庭の山ふるさとの山に似て
箱庭に過小評価の山河かな
箱庭の関所跡とか石ひとつ
箱庭の海は朗らかすぎし色
箱庭の毛越寺より笙鳴れり
箱庭の家の窓より汝の視線
箱庭に来て燕雀は鴻鵠に
箱庭や一見客に遠き宿
箱庭に鎮守の森や山法師
箱庭に模型列車と田舎駅
箱庭を眺め光の外へ出ん
箱庭に入れてはならぬ放射能
箱庭の草木へ吹けば江戸の風
箱庭に何託しけん辻地蔵
箱庭に雨の漏れたる借家かな
箱庭に無き大滝の響きかな
箱庭に縁側のある家を置き
箱庭に苔むす大岩在りにけり
箱庭に税をばらまく予算案
箱庭に置く原子力発電所
箱庭の鳥居をくぐる日の光
箱庭の遠くて近き赤鳥居
箱庭の隅に一茶の句碑を置き